
カンブリア宮殿を観てnesosanは考えた 〜始球式で分かった、「君が観ているのは誰かね?」
始球式で分かった、私が社長タイプで会長になれない理由
カンブリア宮殿で紹介された、ウミオス安田社長の始球式。
元高校球児の社長が、満員の横浜スタジアムでマウンドに向かう。
その様子を見ながら池見会長が言います。
「僕だったらマウンドに立ったら観客にあいさつする」

すると社長。
「忘れた〜」

この瞬間、私は思いました。
あ、完全に私だ。
もし私がマウンドに立ったらどうなるか。
まず、
「届くかな?」
です。
次に、
「ワンバウンドしたらはずかしいな」
です。
さらに、
「転ばないかな」(もっとはずかしい…)
です。
その時点で脳内メモリは100%使用中です。
観客へのあいさつ?
そんな高度な機能は搭載されていません。
Windows95くらいです。
起動するだけで精一杯です。
私は研修講師なので人前で話す仕事です。
年間100回近く登壇します。
ところが未だに、
「Zoomつながるかな」
「プロジェクター映るかな」
「事務局の名前、誰だったかな」
で頭がいっぱいになります。
そして研修が終わると、
「あ、最後の案内し忘れた」
「あ、担当の方にお礼を言い忘れた」
「あ、振り返りのメモとるの忘れた」
が発生します。
まるで安田社長の
「忘れた〜」
です。
非常によく分かります。
むしろ共感しかありません。
しかし、この場面で私が面白いと思ったのは社長ではなく会長でした。
普通の人は始球式を見ると、
「緊張しただろうな」
と思います。
少し経営者になると、
「いいPRになったな」
と思います。
ところが会長は違いました。
見ていたのは投球ではなく、
観客だったのです。
考えてみると不思議です。
マウンドに立つ人は自分が主役です。
当然、自分のことで頭がいっぱいになります。
ところが会長は、
「自分がどう見られるか」
ではなく、
「観客に何を返すか」
を考えている。
視線の向きが違うのです。
マーケティングでも同じです。
売れない企画の多くは、
「何を売りたいか」
から始まります。
売れる企画は、
「お客さまは何を期待しているか」
から始まります。
主語が違う。
会長の言葉には、その主語の違いが表れていました。
私はよく、
「お客さまはドリルが欲しいのではない。穴が欲しいのだ」
という有名な言葉にツッコミを入れます。
「その穴はなんのために欲しいのか?」
「そこまで考えてますか?」と。
しかし今回の話を見ていて、
ふつうの人が考える、その先がある気がしました。
会長は、
「自分が投げる」
ではなく、
「観客が何を感じるか」
を見ている。
つまり、
穴ですらない。
穴を見つめる人を見ている。
そんな感じです。
もはや視点の深さがおかしい。
経営者として長く成功する人は、
視野が広い人だと思っていました。
でも違うのかもしれません。
視野が広いだけではない。
自分から意識が離れている。
だから周りが見える。
私はまだまだです。
大規模セミナーで200人の前に立つと、
「噛まないかな」
「時間大丈夫かな」
「スライド飛ばしてないかな」
で頭がいっぱいです。
その時に、
「参加者の皆さんは今どんな気持ちだろう」
まで意識が向いているかと言われると、
正直怪しい。
だからこのシーンを見て、
安田社長には親近感を覚えました。
そして会長には、
少し憧れました。
社長の
「忘れた〜」
には人間味がある。
だから愛される。
一方で
会長の
「まず観客にあいさつする」
には哲学がある。
だから人がついてくる。
私だったらどうなるか。
たぶんマウンドに立って、
観客にあいさつするのを忘れ、
ボールを投げ、
帰り際に思い出します。
そして控室で、
「しまった〜」
と言います。
その横で会長はたぶん、
笑いながらこう言うのでしょう。
「次は最初に観客を見るんだよ」
経営とは何か。
マーケティングとは何か。
そんな大げさな話ではありません。
でも、この数秒のやり取りには、
「自分を見る人」と「相手を見る人」の違いが凝縮されていた
ように思います。
だから私は安田社長に共感しながら、
同時に会長に学びたいと思いました。
そして今度、人前に立つときは少しだけ思い出そうと思います。
緊張している自分より先に、目の前にいる相手を見る。
言うのは簡単です。
実践は難しいです。
なにしろ私は、
研修開始5分前になると毎回、
心の中で「あれ忘れた〜」を連発しているタイプですから。
この考え方は
『実践!STPマーケティングの教科書』で紹介しています。
ちなみに、
1250円、537頁。
1頁あたり約2.3円です。
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