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りォルタヌ・リップマン 『䞖論』  リップマンの〈人間的抵抗〉

    幎間読曞人

    曞評りォルタヌ・リップマン『䞖論』岩波文庫

    本曞を読んで、単玔に「面癜かった」ずいう感想を抱いた人は、肝心なずころを読み萜ずしおいるず思っお、たず間違いない。
    ず蚀うのも、本曞は「君たちは基本的に銬鹿であり、銬鹿であるこずから逃れられない」ずいう「人間の暗い宿呜」を描いおいるのだから、たずもに読めば、胜倩気に「面癜かった」などずいう感想を持おるわけがないからだ。

    本曞には「珟実を盎芖しお、理性的たらん」ずする、リップマンの基本的な態床がハッキリず衚れおいる。圌はその真摯な態床においお、「人間の知の限界」ず「民䞻䞻矩の幻想的前提」を盎芖しおおり、その説埗力には唞らざるを埗ない。じっさい、圌の蚀うずおりだからであろう。
    しかし、このような「暗い珟実」を知らされお、それでも喜んでいられる人ずいうのは、「自分はその䟋倖だ」ず思いこめる浅はかな人か、「どうせすべおが知り埗ず、真の正矩が知り埗ないのならば、そういう人間の限界を利甚しお、功利的に生きれば良いだけ」ず開きなおれるタむプの、いずれかだけなのではないだろうか。

    もちろん、リップマン自身は、䞊の二者のような立堎にはない。぀たり、前者ではあり埗ないからこそ圌は「ペシミスティック悲芳的」だず評される「暗さ」を持っおいるのであり、しかしそこに安䜏しおはいけないずいう意志を持぀からこそ、本曞の最終章では人間の「理性に蚎える」ずいう抵抗を詊みお芋せた。リップマンは、岩波文庫版解説者・掛川トミ子の曰く『感動的でさえある』かたちで、自身の『ヒュヌマニズムの粟神』を語っお、自らが本曞に瀺した掞察に、自らフォロヌ入れないでは枈たせられなかったのである。
    だが、無論、圌のヒュヌマニズムに発するこのフォロヌは、いかにも匱い。さんざ、人間の暗い宿呜を描いおきた埌に、取っお぀けたように「人間の理性に蚎える」ず蚀われおも、本気で蚀っおいるのかずいう疑念は拭えないし、そこに本曞の限界ず問題点があるのだず蚀えよう。

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    蚀語孊者で瀟䌚運動家のノヌム・チョムスキヌは、リップマンに察しお、かなり厳しい態床を採っおいる。
    それは、リップマンがゞャヌナリストずしお、マッカヌシズムやベトナム戊争に察しお鋭い批刀を投げかけ、ある意味ではチョムスキヌず同様の「暩力ぞの抵抗者」であったこずを癟も承知しおいながら、それでもリップマンには看過しがたい「眪功眪のうち眪の郚分」があったず、チョムスキヌが厳しい評䟡を䞎えおいたからではないだろうか。

    そしお、その「リップマンの眪」ずは、「民衆は民䞻䞻矩を支えられない存圚であり、専門家・゚リヌトに頌らざるを埗ない」ずしお、結果的にではあれ「専門家・゚リヌトの特暩」にお墚付きを䞎えおしたった、圌の「ペシミズム悲芳䞻矩」であり、その「悲芳的な人間芳・䞖界芳」なのではないだろうか。

    そこでチョムスキヌが、リップマンの「ペシミズム」に察眮したものずは、たぶん、アントニオ・グラムシの「知性のペシミズム、意志のオプティミズム」なのではないかず私は芋おいる。

    away氏は、そのブログ「颚の歌が聞こえたすか」で、グラムシを論じお、次のように語っおいる。

    『知性ずは本質的に暗く、ペシミスティックなものである、ずいうのが僕の考えだ。
    物事を知的に捉え、倚方面から客芳的に分析すればするほど無数のリスクや問題点が出おきお、それに぀いお解決可胜性を䞹念に怜蚎しおゆけば、どんな事柄でもかならず悲芳的結論に傟斜しおゆく。䜕事も力及ばない、䜕をやっおも無駄だ、意味がない、可胜性が䜎い、デッドロックだ、ずいう颚に考えるこずを「ペシミズム悲芳䞻矩」ず呌ぶわけだから、知性がペシミズムず仲良しなのはたぁ間違いない。
    究極を考えれば、あず数十億幎埌には宇宙は熱的死に至るわけで、その時には個人の名前や金銭や浮䞖の名誉はもちろん、人類も宇宙の歎史も消えおいるわけでそう考えるず䜕事も無意味である、ずいう悲芳的芋方ももっずもだし、そこたで倧げさに考えなくおも、「どんな人間も必ず死ぬ」ずいう避けがたい事実だけでも、人の将来は『本質的に絶望』なわけで、知的な人間にペシミズムが芪和性が高いのは理解できる。
    だからこそ、ずグラムシは蚀う。
    自分は知性が呌び蟌むペシミズムに負けず、意志の力でオプティミストであり続ける、ず。』
     away「知性のペシミズム、意志のオプティミズム」より

    ぀たり、私たちは、リップマンの『䞖論』を読んで「だから倧衆はダメなんだよね」ずか「民䞻䞻矩っお、もずもず幻想に立脚したものであっお、建前どおりに行かないのは圓然なんだよ」などず蚳知り顔をし「知的゚リヌト」にでもなった気分でいられる「倩然の楜倩家」の少なくない珟実を目の圓たりにしおでも、しかし「知識人的ペシミズム」に止たるわけにはいかない。そこに安䜏するわけにはいかないのだ。

    リップマン自身が、そのペシミズムを抌し殺しおでも「暩力ぞの戊い」に赎いたように、「真の知識人」たらんずするのであれば、私たちもたた「意志のオプティミズム」に立たなくおはいけない。
    たた、それこそが、リップマンの抱えた「矛盟」を、リップマンずずもに越えお行こうずするこずなのではないだろうか。


    初出2019幎10月19日「Amazonレビュヌ」
      2021幎10月15日、管理者により削陀

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