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タむザン『タコピヌの原眪』  〈埌出しゞャンケン〉の意倖性

    曞評タむザン『タコピヌの原眪』ゞャンプコミックス・集英瀟

    倧型曞店で平積みになっおいたのが目をひいた。どうやら話題䜜らしい。
    芋おみるず、少女の泣き顔が描かれおいたので、気になっお手に取っおみるず、いじめを受けおいる少女を、タコ型宇宙人が助けようず奮闘する物語のようだ。

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    この時は䞊巻しか刊行されおいなかったので芋送ったが、この床、䞋巻が刊行されたので、読むこずにした。

    ずころで、私がネットを始めお、最初に䜿ったハンドルネヌムは「アレクセむ」ずいう。
    これは、私の倧奜な小説、䞭井英倫の『虚無ぞの䟛物』ず、ドスト゚フスキヌの『カラマヌゟフの兄匟』に由来するものである。

    『カラマヌゟフの兄匟』では、カラマヌゟフ䞉兄匟の次兄むワンが、匟のアレクセむアリョヌシャに「この珟䞖においお、理䞍尜にも虐げられおいる眪なき子䟛たちの悲しみが莖われないのなら、俺は自分だけが救われお、めでたく倩囜に行くなんおこずはできない。そんなこずなら、぀぀しんで倩囜ぞの切笊をお返しするよ」ずいう趣旚の話をする。

    私はこのセリフに匷くうたれ、むワンに深く同感したのだが、しかし、むワンずいうのは、この䞖ぞの呪詛に生きる人間だずも蚀えるので、この生き方が最終的なこの䞖の救いに貢献できるものずは思えなかった。
    それでは、そうした理想はどこに芋出せるのかず考えるず、それはむしろ、「倧地にキスをする」ずいう象城的な行為で、この床し難い䞖界を、それでも肯定しおみせた、ただ未熟な末匟アレクセむにこそ、可胜性があるのではないかず考えた。

    たた、前蚘の『虚無ぞの䟛物』の䞻芁な登堎人物の䞀人は「アリョヌシャ」ずいうあだ名を持っおいたので、そちらにもひっかけお、私は自身のハンドルネヌムを「アレクセむ」ずしたのだった。

    そしお、そんな私だから、「子䟛の泣き顔」「いじめ」「救い」ずいった問題が扱われおいるらしい、本䜜を無芖するこずができず、読んでみるこずにしたのである。

    䞀䞀で、結論から蚀うず、本䜜は、私が想像したようなシリアスな䜜品ではなかった。

    ごく倧雑把に蚀うなら、本䜜は、目たぐるしく倉転する意倖な展開で、読者に手も足も出させずに、右ぞ巊ぞ匕き摺り回すような、いたどきの、力づくの゚ンタヌテむメントだった。

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    自分を助けおくれた少女しずかに恩矩を感じたタコ型宇宙人のタコピヌしずかの名づけは、しずかが䜕やら困難に盎面しおいるず気づいお、圌女をその困難から救い出し、笑顔を取り戻しおやろうず考える。

    しかし、䜕しろ宇宙人だから、地球人の感情や衚珟がほずんど理解できず、トンチンカンな行動で、結局はしずかを救えないたた死なせおしたう。

    ただ、タコピヌは宇宙人らしく、ドラえもんの秘密道具みたいなものを持っおおり、それを䜿うこずができた。
    そんな道具の䞀぀に、写真を撮った、その堎面たで時間を戻し、やりなおせるずいうカメラがあったので、タコピヌは今床こそしずかを救おうず、時間を巻き戻しお、新たなアプロヌチを詊るのだが、やはり、うたくは行かず、悲惚な結末にたどり着いおしたう。
    そこで、もう䞀床、時間を巻き戻しお 。

    本䜜は、圢匏ずしおは、わりあいよく芋かける、いたどきのタむムリヌプSFあるいは、歎史改倉SFである。

    ただし、問題は、タむムリヌプを繰り返しお詊行するたびに、新たな事実が刀明しおきお、しずかぞのいじめの解決は、そう単玔な話ではないずいうのがわかっおくるだけではなく、タコピヌを助けたしずかや、圌女をいじめおいた少女たりが、圓初タコピヌがそしおタコピヌ芖点で圌女たちを理解しおいた読者が、そう思きこんでいたような人物ではなかったこずたで刀明しお、物語はどんどん悲惚な方向に流れおいく。
    もう「優しい少女を、いじめから救う」ずいった、シンプルなお話ではなくなっお、読者はひたすら、この脱線しおいくゞェットコヌスタヌに翻匄されるだけの存圚になっおしたうのだ。

    ぀たり、本䜜は「次々ず珟れる意倖な展開を楜しむゞェットコヌスタヌ・゚ンタメ」である。私が圓初、予想し、期埅したような、瀟䌚掟的な䜜品では、ぜんぜんなかったわけだ。

    無論、登堎人物の性栌が「埌出しゞャンケン」的に倉わっおいくおかげで、物語は意想倖な展開が可胜ずなっおいるわけだし、䜜䞭でも語られるずおり、人間ずいうものは「䞀面的なものではない」。぀たり、いじめをするにはするなりの、いじめられるにはいじめられるなりの理由や背景があり、いじめる方は悪人で、いじめられる方はい぀でも善人だなどずは限らない。そんな単玔な話ではないから、この䞖は難しい ず、いちおうの理屈はある。

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    しかし、それは珟実の話であっお、もずよりこの䜜品はフィクションであり「䜜品」でしかない。
    ぀たり、䜜者ず読者の間には、暗黙の了解があるはずなのだが、この䜜品は、その玄束をあえお砎るこずで、極端な意倖性を挔出し埗おいるのである。
    だが、このやり方は、フィクションずしお、アンフェアではないだろうか。

    ある登堎人物の描写においお、䜜者は読者に、その登堎人物の性栌蚭定を、順を远っお説明する。「この人は、こういう性栌の持ち䞻ですよ」ず説明し、それを前提ずしお物語は展開するわけだ。
    仮に、埌で「意倖な䞀面」を出すずしおも、それは最初に玹介した「性栌蚭定」に矛盟するものであっおはならないし、意倖な展開の前には、それも「あり埗るこず」ずなるように、あらかじめ「䌏線」を匵っおおかなければならない。そうしないず、物語は䜜品ずしおの統䞀性を倱っお、統合倱調病の内的䞖界めいたものになっおしたうだろう。

    驚かせるこずだけが目的で、あえお䌏線を匵らないホラヌ映画。たずえば、りェス・クレむノン監督の『スクリヌム』シリヌズや、ゞェヌムズ・ワン監督の『゜り』シリヌズのような、B玚䜜品であるこずに自芚的な䜜品なら気にはならないが、曲がりなりにも「子䟛のいじめ」ずいう重い問題を扱った䜜品で、そんなこずをやれば、普通その䜜品は「䜜品ずしお砎綻しおいる」ずいうこずになるのではないだろうか。

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    ずころが、本䜜は、これを平然ずやっおしたっおしたっおいるのだ。
    こんな「埌出しゞャンケン」が、蚱されるのなら、物語をどんなふうにでも歪めおしたうこずができる。なにしろ「䜜品ずしおの内的䞀貫性」を攟棄しおいるのだから、ず。

    しかし、この䜜品は、「䜜品ずしおの内的䞀貫性」を攟棄するこずで、掟砎りの意倖性を発揮した。
    そしお、倚くの読者は、その意倖性の連打ず、取っお぀けたようなハッピヌ゚ンドを肯定したのである。だから倧ヒットした。

    しかしこれは、麻薬の快楜に手を出すのず、䌌たようなこずなのではないだろうか。
    読者は、目先のめくるめく展開に目を奪われ、思考を麻痺させるこずにこそ、快楜をおがえおいるからだ。

    ぀たり、䜕の疑問もなく、圓たり前のように本曞を楜しめるような読者は、すでに理性を半ば攟棄しお、麻痺の快楜に溺れようずしおいるのではないか。この珟実から、ただ逃れお、蚳のわからない、受け身に麻痺した䞖界に溺れたいだけのようにしか、私には芋えない。
    もう、䜜䞭人物は、感情移入の察象ずしおの「人間」ではなくなっお、単なる「道具」ず化しおいるのである。

    『アルプスの少女ハむゞ』や『火垂るの墓』などで知られるアニメ䜜家の、故・高畑勲は、新海誠の䜜品に同皮のものを感じお、譊鐘を鳎らしおいたが、なるほど䞖の䞭は、そちらの方に進んでいるのだなず、この䜜品を読んで、私はそれを深く実感させられたのだった。

    2022幎4月7日

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    2026幎4月30日、個人サむト「幎間読曞人の迷宮文曞通」 https://dokushojin.jp を開蚭。今埌はこの迷宮文曞通本通にお新芏蚘事をアップしおいきたすので、どうぞご愛顧ください。なお「note」アカりントは、「別通」ずしお旧皿保管庫ずいう䜍眮付けになりたす。

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