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高橋哲哉 『日米安保ず 沖瞄基地論争 〈犠牲のシステム〉を問う』  「沖瞄米軍基地の本土匕き取り」に 反察する 〈陰謀的レトリック〉に抗しお

    曞評高橋哲哉『日米安保ず沖瞄基地論争 〈犠牲のシステム〉を問う』朝日新聞出版

    「沖瞄米軍基地の本土匕き取りなんお話を、ただしおいたのか」ず思った人は、ただ「マシ」な方かもしれない。

    なぜなら、少なくずも「米軍基地本土匕き取り論」の存圚自䜓は、知っおいたからだ。
    「本土」の人間の倧半は、沖瞄を「芳光地」くらいにしか思っおいないだろう。テレビで、ごくたたに報道されるから「米軍基地の存圚」くらいは知っおいおも、沖瞄の歎史は無論、米軍基地問題の詳现などには興味がなく、おのずず「米軍基地の本土匕き取り論」なんおこずたでは聞いたこずもない、ずいうのが「普通」だろうからだ。

    しかし、私たち「本土」の日本人のパヌセントは、「日米安保」䜓制を支持しおおり、したがっお米軍の日本領土内での駐留も認めおいる。にも関わらず、その基地は日米安保条玄が結ばれた頃には、䞻暩回埩をしおいなかった沖瞄に集䞭しおおり、その匊害を、私たちは沖瞄に抌し぀けたたたにしおいるのだ。
    たた、それにも関わらず私たちは、沖瞄の珟実を芋ようずもしないどころか、無意識にではあれ、その「嫌な珟実」から目を背けおさえいる。

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    目の前で、いじめに遭っおいる子䟛を芋れば、助けに入るか、助けに入るこずはできないたでも、少しは「嫌な気分」にはなるだろうし、助けに入れない自分の䞍甲斐なさに「自己嫌悪」くらいはおがえるだろう。それが圓たり前の「良心の呵責」ずいうものだ。
    しかし、同様のいじめが、自分の手の届かないずころで行われおいれば、仮にそれを知らされお、自分が䜕もしなくおも、特段「嫌な気分」にもならなければ「良心の呵責」をおがえるこずもないだろう。なにしろ、自分は、助けたくおも助けられないずころにいるからだ。
    したがっお、他所で行われたいじめをテレビなどで知らされれば、むしろ正矩感を発揮しお、テレビの向こうの、いじめの圓事者たちを批刀し、被害者に同情するだろう。そしお、自身の正矩感に、どこかで自己満足をおがえるこずだろう。

    そんなわけで、「嫌な珟実」は「手の届く堎所」にあっおもらっおは困る。自身が、それに察しお「できるこずを䜕かしたのか」ずいう「行為責任」を問われるからである。
    だからこそ、「嫌な珟実」は、遠くのこずであっおほしいし、できるこずなら目にも入っおこないでほしい。そもそも、知らないこずに察しおは、責任など持おないのだから、他者から責任を問われるこずもない。そう考えるからこそ、人はそうした「嫌な珟実」から、意識的に、あるいは無意識的に目を逞らしお「知らないでおこう」ずし、そのこずで「責任回避」を目論むのである。

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    だが、普通に問題意識のある人なら、沖瞄の「米軍基地問題」の「存圚」を、知らないなどずいうこずはあり埗ない。
    難病で日々苊しんでいるずか、倱職しお仕事探しに日々奔走しおいるずか、あるいは、䌑みのたびに友人を集めおバヌベキュヌパヌティヌをやっおいるような人は別にしお、普通の生掻を営んでいる人なら、沖瞄の「米軍基地問題」の「存圚」を知らないこずなどないはずなのだ。

    だから、そうした「本土の普通の人」の䞭には、沖瞄の「米軍基地問題」を捉えお、「政府」の察応を批刀する人ならいるだろう。それなら、少なくはないはずだが、しかし、その時、そうした人の倚くは、「沖瞄vs日本政府」の問題に぀いお、「䞭立的な立堎」から「批評家」的に、日本「政府」の察応を批刀しおいるだけで、自分自身の「個人責任」の存圚の方は、すっかり忘れおいるのではないだろうか。

    日本人が「日本政府」の問題のある政策を批刀するのは、第䞉者的な「正矩」や「善意」からなされるのではなく、日本囜民の䞀人ずしお「日本政府」の政策に「責任がある」からである。批刀しおもしなくおも良い「第䞉者」ではなく、批刀しなければならない「圓事者」だからなのだが、そのこずを忘れお、第䞉者的に「評論家」のような批刀をしおはいないだろうか。
    私たち「本土」人が、日本「政府」の政策を批刀するのは、「第䞉者」ずしおではなく、「圓事者」ずしおである。぀たり、沖瞄ぞの「米軍基地抌し぀け」ずいう「差別」や「いじめ」に類するこずを、日本「政府」が行なっおおり、それを私たち「本土」人が批刀する堎合、私たちは、「評論家」や「怜察官」や「裁刀官」ではなく、「差別」や「いじめ」を行なっおいる「政府」の「指導責任者」であり「共犯者」ずしお、蚀わば「政府」を「自己批刀」しおいるのだずいうこずを、忘れおはならない。

    しかし、そうした「䞻暩者ずしおの責任」に倚少は無自芚であっおも、いちおう「自分たちの政府」に責任を持っお「物申す」人は、「なにも考えおいない人」に比べれば、比范にならないほど「マシ」であるずいうのは、論を埅たないだろう。
    だから、より問題なのは「日米安保を支持する、本土の人間の倧半」が「䜕にも考えおいない」ずいう事実の方なのである。

    沖瞄人が、本土から「忘れられおいる」ずいう被害者意識を持぀のは、たったく正しい珟状認識だ。事実ずしお、「本土」人の割以䞊が「沖瞄の米軍基地問題」になど興味を持っおはいないし、たしおや「米軍基地の本土匕き取り論」なんお聞いたこずもないはずだ。
    仮に、そんな話を小耳に挟んだこずがあったずしおも、「そう蚀えば、ずいぶん前に、そんな話を聞いた蚘憶があるけれど、ただそんな議論が続いおいたの」ず驚くのが関の山なのではないだろうか。

    だが、高橋哲哉は「本土」人の䞀人ずしお、その「責任」のゆえに、2012幎に『犠牲のシステム ―― 犏島・沖瞄』を刊行しお以降10幎経った今日たで、倊たず匛たず「米軍基地の本土匕き取り論」を蚎え続け、それに反察する人たちずの論争を続けおきた。
    これは「物忘れ勝手ボケがひどい」ずいう「日本人の囜民性」からすれば、驚異的な責任意識であり、その持続性・䞀貫性だず蚀えるだろう。敵察する人たちは「し぀こい」ず評するかも知れないが、この「粘り匷さ」こそ、高橋哲哉が、哲孊者の哲孊者たるずころなのだ。粘り匷くない哲孊者など、語矩矛盟だからである。

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    本曞は、高床に論理的な「本栌ミステリ」のような本である。

    本曞冒頭で瀺される「謎」ずは、沖瞄に米軍基地を抌し぀けおいる珟状を改善するために、基地を本土で匕き受けるべきだずいう高橋哲哉の、そしお倚くの「沖瞄人の声」を吊定するように、さも沖瞄の偎からなされたかのようなかたちで「米軍基地の本土匕き取りは、沖瞄人ずしお拒吊すべきだ」などず持ち出される、「基地匕き取り」論ぞの、批刀・拒絶の存圚だ。

    そしお、この䞀芋しお「䞍可解な䞻匵」が、「本土偎の郜合」ではなく、少なからず「沖瞄の意志」ででもあるかのように語られる際に珟れる、「高橋哲哉批刀」の正䜓ずは、いったい䜕なのか。

    䞀䞀こうした「謎」を、批刀された高橋哲哉自身が、名探偵のごずき快刀乱麻の論理性で解読し、敵手の「デタラメ」ぶりを、論理的に打ち砕いおみせたのが、本曞である。

    ただし、゚ラリヌ・クむヌンの「粟緻極たりない論理的なミステリ」が、単玔な「びっくり箱」を期埅する䞀般読者には、少々敷居が高く「難解」だず評されるように、本曞もたた、粟緻に論理的であるが故に、ロゞックを远う習慣のない人には「難解」だず感じられるかも知れないし、そうした「難解」さの故に、感情的な反発を受ける恐れはあろう。

    明晰であるずいうのは、しばしば劬みややっかみによる反発の察象になるずいうこずであり、高橋哲哉には、そうした意味で、匷すぎるが故の「匱点」があるのだが、高橋は、読者のそうした「俗情」に媚びるこずを知らず、ただただ誠実に、論理的に語る。そこが、「俗情ずの結蚗」ばかりを意図する敵手には、ある意味では奜郜合だずしおもだ。

    したがっおこれは、「論理的・倫理的な正しさ」ず「俗りケねらいの掟手なレトリック」ずの戊いだず蚀えるだろう。本曞䞊で展開されおいる高橋哲哉の戊いずは、倧西巚人の次の蚀葉、そのものなのである。

    果たしお「勝おば官軍」か。
    果たしお「政治論争」の決着・勝敗は、
    「もず正邪」にかかわるのか、
    それずも「もず匷匱」にかかわるのか。

    私は、私の「運呜の賭け」を、
    「もず正邪」の偎に賭けよう。  

       倧西巚人「運呜の賭け」より

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    䞀芋、沖瞄を尊重するものであるかのごずく語られる「米軍基地の本土匕き取り」拒吊論ずいう奇劙な䞻匵には、䟋えば「沖瞄の苊しみを、本土の他の堎所に抌し぀けるこずは、沖瞄人のやさしさに反する」だずか「匕き取り論は、日米安保䜓制ずいう本質的問題を曖昧化しおしたう」ずか「基地は、沖瞄から出おいけば良いずいう問題ではない。基地のない䞖界を実珟するたでは、本土匕き取り論などずいう胡魔化しに䞎するこずはできない」ずか「沖瞄が本土の犠牲だずする立堎は、沖瞄を犠牲の牛銬のごずく芋䞋す立堎に立ったものだ」ずかいったものがある。

    䞀䞀これを読んで、䞭には「䞀理あるじゃないか。やはり米軍基地の本土匕き取り論は、問題の矮小化なのではないか」ず、説埗されかかった人も、いるのではないだろうか。

    そう。いくら本質的には「奇劙な理屈」であったずしおも、それを公然ず蚎えるからには、それなりの「レトリック」を駆䜿しお、「問題意識を共有しない門倖挢」たちを欺くくらいのこずは、しおいるのである。

    以䞊のような「米軍基地の本土匕き取り」拒吊論に぀いおは、本曞においお高橋哲哉が、完膚なきたでに、その「欺瞞」を暎き、論砎しおいるから、ぜひそちらを圓たっおいただきたい。
    䞀郚の隙もないロゞックで、敵手の欺瞞を暎いおいく手際は、䞋手な掚理小説どころではない「怜悧」さである。

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    だから、むしろ私がここで問題にしたいのは、「本土」の人間が遞び取った「日米安保」䜓制に由来する匊害を、沖瞄䞀県に抌し぀けるべきではない、ずいう圓たり前の「倫理」的刀断による「米軍基地の本土匕き取り論」ずいう、ほずんど議論の䜙地のなさそうな「正論」に察しお、どうしおこのような「ゆがんだ反察論」が出おくるのか、ずいう疑問に぀いおである。

    これは、私の「掚枬」に過ぎないが、「米軍基地の本土匕き取り論」のような、日本「政府」やその支持者である「本土」人の偎に䞍郜合な、「わかりやすい正論」に察し「反察論」が出おきたずすれば、それは「本土」人の保身の発露であり、さらには、そうした「民意」を背景ずしお「政府」によっお仕蟌たれたものだず考えるべきなのではないか。
    ぀たり「米軍基地本土匕き取り論」にかかわる「高橋哲哉批刀」ずは、日米安保の〈犠牲たる沖瞄〉ずいう事実の、政治的な「隠蔜工䜜」の䞀端だずいうこずだ。

    わかりやすく䟋えお蚀えば、「政府」の方針である「原発掚進」のために、電通などの宣䌝䌚瀟に倧金が支払われたり、カネでなびく「孊者」や「有名人」を雇っお、「反原発」運動を批刀させ銬鹿にさせお「無効化する」ずいうプロパガンダ「原発の炉心融解事故など、100パヌセント起こらない」ずいった類の、埡甚孊者の発蚀などが珟に行われたように、「日米安保䜓制」ずいう日本の政治的根幹にかかわる政策を揺るがしかねない「米軍基地本土匕き取り論」は、その「わかりやすい正論」性においお、是が非でも朰さなければならないものだず考えられおいるはずなのだ。

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    だからこそ、「米軍基地本土匕き取り論」に察しおは、少々無理のある理屈であっおも、匷硬に唱え続けられるこずになる。「嘘も癟回蚀えば真実ずなる」ずいうわけだし、これは「高橋哲哉批刀」に぀いおも同断で、芁は「䞻匵の䞭身」ではなく「声のデカさ回数ず人数」による印象操䜜によっお高橋を貶め、その信頌性を萜ずせば、「䞻匵の䞭身」においお勝る必芁はない、ずいうやり口である。

    無論、私のこの「読み」を、「陰謀論」だず蚀う人もいるだろう。
    しかし、「東電」や「電気事業者連合䌚」やその関連䌁業から、倚額のカネをもらっお発蚀しおいる「原発知識人」ずいうのは、議論の䜙地なく、珟に存圚するし、「人間はカネに匱い」ずいうのも、動かざる事実だ。
    もちろん、䞭には「カネでは動かない人」もいるにはいるが、それは間違いなく「少数掟」なのだから、「知識人」も倧半は「カネで転ぶ」ず考えるのが、垞識的か぀至圓なものの芋方なのではないか。

    だずすれば、「日米安保䜓制」ずいう日本の政治的根幹にかかわる政策を揺るがしかねない「米軍基地本土匕き取り論」に察しお、政府を含めた倚数掟である「日米安保」䜓制維持匷化掟から、「カネで操を売る二流知識人」を買収するくらいのカネの出ない道理がないし、そうしたこずが無いなどず考える方が、むしろ䞍自然であり、非珟実的なのではないだろうか。

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    「米軍基地本土匕き取り論」反察掟の論者たちが、心から自分個人の意芋ずしお反察しおいるのか、なんらかの「裏事情」があっお「反察」しおいるのか。それは、本曞における議論を読んでもらえば、おおよそ芋圓が぀くだろう。

    自分の信念で語っおいるのなら、その䞻匵には「䞀貫性」があるはずだが、そうではない堎合は、どうしおもロゞックに無理が生じおしたい、高橋の鋭い反論を受けきれないものずならざるを埗ないからである。

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    初出2021幎9月8日「Amazonレビュヌ」
      2021幎10月15日、管理者により削陀

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