メインコンテンツへスキップ
見出し画像

青木栄一『文部科学省 揺らぐ日本の教育と学術』 : 人間的な、あまりにも人間的な

    年間読書人

    書評:青木栄一『文部科学省 揺らぐ日本の教育と学術』(中公新書)

    他のレビュアーも書いているとおり、本書は、誠実かつ冷静に「文部科学省」について紹介し、論じた好著である。

    画像1

    さて、そんな本書を読んで、私は深く嘆息せざるを得なかった。
    というのも、そこに描かれている「文部科学省」の「正体」は、「権力の手先」や「抑圧的な権力機関」といった紋切り型の「わかりやすい悪玉」ではなく、結局は「既得権益を守りたい」「よそから口出しされてくない」「しんどい仕事は、立場の弱い者に押しつけて済ませる」といった、私たちの誰もが持っている特性そのものだったからである。
    一部の特別に立派な人をのぞけば、本書の読者やレビュアーを含めて、ほとんど全ての人が、結局は彼らと同じ「弱い人間」なのではないだろうか。一一そう思えて、ため息をついたのだ。

    だが、彼らだって、昔からそうだったわけではないし、「昔の人は偉かった」というわけでもないだろう。
    ならばなぜ、私たちは、こんなにも「保身的で、狡っからい」人間になってしまったのだろうか。日本の役所や会社やいろんな組織は、どうしてこんなに堕落してしまったのだろう。

    その大きな原因は、やはり「長らく続く不況」であり「成長の望めない未来」への不安、ではないだろうか。
    要するに「貧すれば鈍する」だ。

    未来に希望を持てなくなったからこそ、当然のごとく、私たちは「保身的」になり始めた。もう、他人のことになどかまってはいられない、思いやってなどいられない、そんな格好をつけている余裕はないと、そんなふうに、いつの間にか開き直ってしまったのではないだろうか。

     『弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく
      その音が響きわたれば ブルースは加速していく』
     (THE BLUE HEARTS「TRAIN-TRAIN」より、作詞:真島昌利)

    だが、仮にそれが事実だとしても、私たちはそこで諦めてしまうわけにはいかない。

     『ここは天国じゃないんだ かと言って地獄でもない
      いい奴ばかりじゃないけど 悪い奴ばかりでもない』(同上)

    今は「既得権益を守りたい」「よそから口出しされてくない」「しんどい仕事は、立場の弱い者に押しつけて済ませる」といった体たらくになってしまっている「文部科学省」の人たちに対して、それでも著者が期待と希望を捨てないように、私たちもまた、人間に絶望して済ませるわけにはいかない。なぜなら、人間に絶望するということは、自分自身に絶望するということでもあるからだ。

    「希望はある」一一そう信じて、打開策を模索するしかないだろう。そこにだけ、希望はあるはずだからだ。

    初出:2021年4月13日「Amazonレビュー」
       (同年10月15日、管理者により削除)
    再録:2021年4月26日「アレクセイの花園」
      (2022年8月1日、閉鎖により閲覧不能)

     ○ ○ ○















     
     
     
    2026年4月30日、個人サイト「年間読書人の迷宮文書館」 https://dokushojin.jp を開設。今後はこの迷宮文書館(本館)にて新規記事をアップしていきますので、どうぞご愛顧ください。なお「note」アカウントは、「別館」として旧稿保管庫という位置付けになります。

    あなたへのおすすめ