
風俗で壊れた“普通”は、完全には戻らない【デリヘル】
風俗を始めて、しばらく経った頃。
自分の中の“普通”が、
少しずつズレてきていることに気づいた。
最初は、いちいち驚いていたはずだった。
聞いたことのない性癖とか、
思わず言葉に詰まるような願望とか。
目の前でそれを口にされるたびに、
一瞬だけ、空気の温度が変わる。
その感じに、少し戸惑っていた。
でも、それが何回か続くと、
だんだん驚かなくなる。
「ああ、こういう人もいるよね」って、
自然に処理するようになっていく。
顔舐めとか、唾液とか。
最初はちゃんと“非日常”だったものが、
いつの間にか、ただの選択肢みたいに並んでいる。
肌に触れる距離で、
当たり前みたいにそれを求められて、
それに応じている自分がいる。
良い悪いじゃなくて、
ただ、そこにあるものとして扱っている。
その感覚が、少しずつ自分の中に馴染んでいった。
「普通ってなんだっけ」
そう思うことが、少しずつ増えていった。
友達と話しているときに、
ふと迷う瞬間がある。
どこまで話していいのか、わからない。
自分の中ではもう
“よくある話”になっていることが、
外ではそうじゃないと気づくタイミング。
風俗での経験って、
価値観が壊れるというより、
広がりすぎる感覚に近かった。
夜職の中で出会う人たちは、
わりと正直だった。
距離が近いぶん、
言葉も、触れ方も、隠さない。
短い時間の中で、
その人の奥にある欲とか、
普段は見せない部分に触れることが多かった。
ある日、久しぶりに
昼の友達と会った。
カフェで、
いつものように恋愛の話をしていて。
そのとき、ふと、
「あ、私ちょっと遠くまで来てたかも」
って思った。
どっちが正しいとかじゃなくて、
ただ、基準が違っていた。
そこから、少しずつ戻していった。
一回ほどいて、
自分なりに組み直すみたいに。
でも——
たぶんそのときも、
ちゃんと戻れてはいなかった。
ここから先は、
あまり綺麗には言えない話かもしれない。