
[小説/不倫]『不良品』第2話 会話
あまり眠れなかった。
特に寒くもなかったが、ずっと布団にくるまっていたかった。
体が動き始めた頃には、気づけば太陽は沈みかけていた。
徐にスマホを見ていると、連絡が来ていることに気づいた。
僕に連絡をくれるのはいつも颯太だけだ。
「陽葵が零の連絡先知りたいんだけど、大丈夫?」
え。
僕はしばらく固まった。
少し混乱しつつも「なんで?」とだけは送信できた。
いくら友人の奥さんであっても、既婚者の異性と個人的に連絡を取り合うのは、かなり気が引ける。
すると、すぐに颯太から返信があった。
「陽葵も一人で創作活動してて、仲間とか相談相手がほしいんだってさ!」
「それはお前は大丈夫なのか」
「うん!全然!零に友達が増えると思うと、むしろ嬉しいよ(笑)」
複雑な気持ちを抱えたまま画面を見つめていると、「ひまり」と書かれたアカウントから通知が来た。
「こんにちは!陽葵です!よろしくお願いします〜」
27年の人生の中で、今が1番困惑しているかもしれない。
どうすれば。
とりあえず、何か返さないと。
「はい」
この二文字で精一杯だった。
異性とやり取りをするのは久しぶりで、手が少し震えた。
僕はこの困惑と緊張から逃避するように、作業に没頭していった。
深夜2時。
やっと作業が終わり、パソコンでSNSを何気なく見ていると、スマホが鳴って思わずびっくりしてしまった。
「夜分遅くに失礼します!私普段小説書いてて今新作執筆中なんですけど、大人しい子の考え方とかが上手く掴めてなくて…。色々教えてもらえませんか?急にごめんなさい!」
そういえば、僕に連絡をくれる人が一人増えたんだった。
創作活動って小説のことだったのか。
深夜に突然連絡が来たことよりも、そっちに驚いてしまった。
「僕でよければ」
「ありがとうございます!まず、作品についてなんですけど…」
するとすぐに、彼女が書いている小説の概要や登場人物などについて書かれたファイルが送られてきた。
「見にくかったら言ってくださいね(>_<)」
と言われたが、文章はとても分かりやすくまとめられていた。
内容としては、引っ込み思案で暗い男の子がとある女の子と出会って恋に落ち、生きる希望を見出していく、といったものだった。
僕にもそんな出会いがあるのだろうか。
いや、僕みたいな不良品を好む人など、まずいないだろう。
「僕は主人公よりずっと根暗ですし、参考になるか分かりませんが」
「え!そうですかね?大丈夫です、とにかく今は情報がほしいので!早速質問させてください!まず…」
この人も、颯太と似たタイプなんだろうか。
よく言えば行動力があって、悪く言えばノリと勢いで生きてる感じの。
僕も少しは見習わないといけないかもしれない。
深夜ということもあって、会話のテンポはなんだか早かった。
僕がどんな風に答えてもしっかり相槌を打って話を聞いてくれて、
それがなんだか心地よかった。
まるで自分が被っている皮を一枚一枚引き剥がされているような気がして、少しむず痒かったけれど。
でも、悪い気はしなかった。
なぜだろう。