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Photo bysinoayakouri

テレビのリモコンは、認知機能の小さなテストかもしれない

    「テレビがつかない」に、少しイライラしてしまう時

    家族と話していると、意外とよく出てくるのがテレビのリモコンの話です。

    「またテレビが映らないって呼ばれるんです」
    「音量を上げたいだけなのに、違うボタンを押してしまう」
    「地上波からYouTubeに切り替わって戻れなくなる」
    「何回教えても、同じところでつまずくんです」

    家族としては、正直少しイライラしてしまうこともあると思います。

    「なんでこれが分からないんだろう」
    「昨日も説明したのに」
    「電源を押すだけなのに」

    でも、リモコンって、実は思っているよりずっと難しい道具です。

    リモコンは、ボタンが多すぎる

    今のリモコンをよく見ると、かなり複雑です。

    電源。音量。チャンネル。入力切替。番組表。録画。戻る。決定。ホーム。Netflix。YouTube。地デジ。BS。CS。

    ボタンがたくさんあるだけでなく、押した後に画面がどう変わるかも分かりにくい。
    テレビを見たいだけなのに、いつの間にか配信画面になっている。
    戻ろうとして違うボタンを押す。
    焦って何度も押す。
    さらに画面が変わって、余計に分からなくなる。

    これは本人の問題だけではなく、道具の側にもかなり問題があると思います。

    認知機能が少し落ちてくると、「どのボタンを押すか」「押した結果を理解する」「間違えた時に戻る」「今どの画面にいるかを判断する」という一連の流れが難しくなります。

    つまりリモコン操作は、記憶、注意、判断、視覚、手先の動き、そして失敗した時に落ち着いて戻る力まで使う、小さな生活動作なんです。

    「できない」ではなく「分かりにくい」のかもしれない

    僕は、リモコンが使えなくなった時に、すぐに「認知症が進んだ」と決めつけるのは少し違うと思っています。

    もちろん、変化のサインになることはあります。
    でも同時に、今のリモコンやテレビの仕組みが、高齢の方にとって分かりにくすぎる面もあります。

    文字が小さい。
    ボタンが多い。
    似たようなボタンが並んでいる。
    画面の切り替わりが早い。
    押していいボタンと押さない方がいいボタンの区別がつきにくい。

    それなのに、家族はつい「これくらい分かるでしょ」と思ってしまう。

    でも本人からすると、テレビを見たいだけなのに、目の前には小さなボタンがたくさん並んでいて、間違えたら戻れない。
    これはけっこう怖いことだと思います。

    生活の中にあらわれる小さなサイン

    テレビのリモコンが使いにくくなることは、暮らしの変化に気づくきっかけにもなります。

    以前より操作に時間がかかる。
    同じボタンを何度も押す。
    入力切替で迷う。
    録画や配信サービスが使えなくなる。
    「壊れた」と言うことが増える。
    テレビを見ること自体が減る。

    こうした変化があれば、本人を責める前に、少し立ち止まって見てもいいかもしれません。

    ただの機械トラブルではなく、認知機能の変化、視力や聴力の変化、不安、道具の使いにくさが重なっている可能性があります。

    家族ができる工夫は、意外とシンプル

    大切なのは、本人に何度も説明することだけではありません。
    「説明すればできるはず」と考えると、家族も本人も疲れてしまいます。

    できる工夫は、もっと環境側にあります。

    使わないボタンを隠す。
    電源、音量、チャンネルだけの簡単なリモコンに変える。
    よく使うボタンにシールを貼る。
    テレビの近くに簡単なメモを置く。
    入力切替が必要ない設定にする。
    配信サービスを増やしすぎない。
    家族がいない時でも困りにくい形にする。

    「本人に覚えてもらう」より、
    覚えなくても使いやすい形にする。

    これが、認知症予防や介護の現場ではとても大切だと思います。

    リモコンは、本人を試すものではない

    タイトルでは「認知機能の小さなテスト」と書きました。
    でも本当は、本人を試すためのテストではありません。

    リモコンは、その人の暮らしにどんな困りごとが出ているかを教えてくれる、小さなサインだと思っています。

    テレビが見られることって、意外と大事です。
    ニュースを見る。
    好きな番組を見る。
    相撲を見る。
    歌番組を見る。
    天気予報を見る。
    一人の時間を少し安心して過ごす。

    それはただの娯楽ではなく、その人の生活リズムや安心にもつながっています。

    だから、リモコンが使えないからテレビをあきらめるのではなく、どうすれば見続けられるかを考えたい。

    できないことを責めるより、使いやすい形に変える。
    それだけで、生活は少し守れるかもしれません。

    最後に

    テレビのリモコンは、小さな道具です。
    でも、そこには認知機能、身体機能、道具の分かりやすさ、家族の関わり方が詰まっています。

    「また分からないの?」と言いたくなる場面ほど、もしかすると本人も困っているのかもしれません。

    リモコンが使えない人なのではなく、リモコンが使いにくいのかもしれない。
    そう考えるだけで、少し見え方が変わります。

    皆さんの家のリモコンは、本人にとって使いやすい形になっていますか?


    参考資料

    ・日本神経心理学会「アルツハイマー病患者における日常物品の使用能力とテレビリモコン課題の有用性」
    アルツハイマー病の方の日常物品の使用能力や、テレビリモコン操作が認知症の重症度などと関連する可能性について参考にしました。

    ・Alzheimer’s Society「How technology can help」
    認知症のある方にとって、ワンボタンラジオや簡略化されたリモコンのような小さな工夫が生活の助けになるという視点を参考にしました。

    ・Alzheimer’s Society「What is assistive technology?」
    支援技術は、認知症のある方が日常生活の中でできることを維持・改善する助けになるという考え方を参考にしました。

    ・NICE「Dementia: assessment, management and support for people living with dementia and their carers」
    認知症支援では、本人の強みを活かし、日常生活の機能を維持するために環境や支援方法を工夫するという視点を参考にしました。

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