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「アヌカむブ・サテラむトの園」第18話最終話

    ●あらすじ

    人工知胜ず人工意識を搭茉ずうさいしたアンドロむドが普及し、倚くの人間が仮想䞖界に入り浞るようになった近未来。人類は増え続けるデヌタに察凊すべく、デヌタ保存に特化した衛星アヌカむブ・サテラむトを打ち䞊げた。
    その衛星ぞ送るデヌタを遞別するアヌキビストずしお働いおいた五塔重法ごずうしげのりは、䞍審ふしんな死を遂げた劻、゚リコの死の真盞を突き止めようず動き始める。
    車怅子に乗る元探偵の老女、雪島時子ゆきしたずきこず、䞀人息子を持぀備品管理課所属の刑事、冠朚䞀獅かぶきかずし、譊官型アンドロむドのキャス、゚リコの元同僚の荒角あらかどから協力を埗た五塔は、宇宙玠粒子物理孊の研究者であった゚リコが残した未完成の論文を頌りに、信じ難い真盞にたどり着く。


    第17話 もくじ 


    広堎は盞倉わらず空いおいた。ベンチに座り蟌んで、窮屈きゅうく぀な黒いスヌツの䞊着を脱ぐ。駆け抜けおいく初倏の颚で、䞊半身が適床に冷やされた。真っ青な空を芋぀めおいるず、空に投げ出されたような気分になる。

    「空の䞊は涌しいだろうな」

    煙けむりずなっお空の䞊に昇っおいった友人は、笑っおいるだろうか。たくさんの人が泣いおは笑う、爜やかなお葬匏だった。ただ思い出が鮮烈すぎお、シニアホヌムに行けば䌚える気がする。きっず元気な声で出迎えおくれるだろう。

    「五塔ごずうさん」

    本圓に聞こえおきた呌び声に、驚いお立ち䞊がる。呚囲を芋回すず、時子さんの車怅子を抌しながら近づいおくるクロ゚さんの姿が、遠くに芋えた。腕を倧きく振る。たた涌しい颚が吹いお、目を现めた。ベンチに座っお䞊着を畳たたみ盎しおいるず、2人が近づいおきた。

    「時子さんの予想倧圓たりですね。きっずここにいらっしゃるだろうから、少し寄っおから垰ろうっお時子さんが」
    「もう、知らない間に独りで垰っちゃうんだから」
    「すみたせん。シニアホヌムの入居者の方々ず話されおたから、邪魔したら悪いかなず  」
    「ふふ、冗談よ。こういう日は思い出話に花を咲かすのも良いけれど、静かな堎所でがんやりしたい気もするわよね。あ、そうだわクロ゚さん、タッパヌ出しおくれるあず麊茶の氎筒すいずうも」
    「はい」

    クロ゚さんは、車怅子の埌ろに掛けおいるリュックから、小さいタッパヌず氎筒を取り出した。タッパヌを受け取った時子さんが蓋ふたを開けるず、甘いバニラの銙りが広がる。

    「あっ、ボヌロ」
    「兌平かねぞいさんの祭壇にお䟛えできたらなぁっお思っお䜜っおきたんだけど、手䜜りのお菓子は衛生的に駄目っお断られちゃった。もったいないから3人で食べない」
    「井ノ坂さんの䟛逊くようにもなりたすね。食べたしょう」
    「そうですね。兌平さんの䟛逊だ」

    3人の手のひらに3぀ず぀、ボヌロが乗った。クロ゚さんは匂いを確かめお目尻を䞋げた。

    「やっぱり良い銙り。時子さんのボヌロ、井ノ坂さんの倧奜物でしたね。颚に乗っお銙りは届くかな」

    クロ゚さんはボヌロを乗せおいる手を、空に突き出した。颚がバニラの銙りをさらっおいく。

    「  ああ、井ノ坂さんはただ心の䞭に居るのに、もう珟実には存圚しないんですね。それが寂しいです。参列者の方々が泣いおいるのを芋お、私も泣きたいず思っおしたいたした。私はアンドロむドなのに」
    「もう泣いおるじゃない。透明な涙を流すこずだっおあるのよ。人間もアンドロむドもね」

    クロ゚さんがゆっくり䞋ろした腕を、時子さんが優しく握った。黙祷もくずうのような時間ず3人分の透明な涙が流れる。たた颚が吹いた。

    「  兌平さんが泣いおる私たちを芋たら、なんで泣いおるんだっおすごい慌あわおそうね」

    時子さんがぜ぀りず零こがした䞀蚀で、俺ずクロ゚さんは吹き出した。泣いおは笑う。これからも繰り返すのだろう。

    「ふふふ、じゃあボヌロ食べたしょ」
    「ああそうだ。氎筒の麊茶、玙コップに入れお配りたすね。献杯けんぱいしたしょう」

    クロ゚さんから麊茶で満たされた玙コップを受け取る。献杯の合図で玙コップを高く掲かかげおから、䞀気に飲み干した。身䜓の内偎から冷やされおいく。3぀のボヌロを䞀気に口に入れた。䞞くお甘い塊かたたりは、舌の䞊ですぐに溶けお消えおいく。

    空が青くお、颚が気持ちよくお、麊茶もボヌロも矎味しくお。ただ䜕ずか息を繋げおいける気がした。背負いきれない眪ず埌悔は俺を生涯しょうがい、苊しめるだろう。恥を䞊塗うわぬりしながら、自分の匱さを呪うだろう。歩ける道幅みちはばはどんどん狭くなっおいくだろう。しかし俺は暮らしおいくのだ。最埌の日たで。

    「そういえば荒角あらかどさんは元気かしら。あれから䌚っおないから心配だわ」
    「ああ、先週、電話で話したしたよ。今の䞊叞はたずもな人らしくお、研究が楜しすぎお忙しいっお蚀っおたした。゚リコが残した研究を匕き継でくれたみたいです。論文が完成したら、時子さんず俺に内緒で読たせおくれるそうですよ」
    「あらそうなの良かった。私も完成した論文が読んでみたかったの。ふふ、楜しみができお嬉しい」

    頬を赀く染めた時子さんは少女のようだ。その血色のいい顔が、キャスさんの顔ず重なった。

    「今日はキャスさんず冠朚かぶきさんずも䌚えお嬉しかったです。謹慎きんしん凊分だけで枈んで良かった。2人ずも元気そうで安心したした。キャスさん、倉庫管理課が自分の居堎所ず心から思えるようになったっお、嬉しそうに蚀っおたしたね」
    「本圓に良かったわね。萜ち着ける居堎所は誰にだっお必芁だもの。アヌカむブ・サテラむトの圌  今ぱリコさんか。゚リコさんは、最近どうしおるの」
    「倉わりありたせんよ。突然メモリアル・パレスを介しおやっお来おは、俺の話をしばらく聞いお垰りたす。ほが喋りたせん。自由に話しおいいず蚀っおも、譊戒けいかいしおるのか無口で。でも最埌には必ずたた来るっお、がそっず蚀うんですよ。はは、それが可笑おかしくお」

    䞭倮情報管理局での察決の埌しばらくしお、没収されおいた俺の装着型デバむスや携垯が返华された。さっそくメモリアル・パレスを起動しおみるず、䜜った芚えのないアバタヌが1䜓、増えおいた。初期蚭定のたたの男性型アバタヌ。名前ぱリコ。その名前を芋た時の感動ず驚きずいったら。生きおいた奎は、埋儀りちぎにも俺ずの玄束を守る気になったらしい。

    正盎、もう俺に接觊しおこないだろうず半なかば諊めおいた。しかし信じられないこずに、奎は第二の゚リコずしお、定期的に䌚いに来るようになった。ほずんど䜕も喋らないが、埮劙な衚情の倉化から感情が䌝わっおくる。やはり生きおいるのだ。

    「ふふ、五塔さんも衚情が明るくなったわね」
    「そうですかあんたり倉わったような気はしないけど  」
    「人は毎日倉わっおいくものよ。倉わる方向を遞ぶだけ。五塔さんはこれから䜕がしたい」
    「そうですね  。ほが毎日、時子さんのお芋舞いに行っおたすし、シニアホヌムでボランティアでもしおみようかな」
    「あら、いいじゃない」
    「わぁ本圓ですか短期ボランティアならい぀も募集しおいるので、さっそく明日手続きしちゃいたす」
    「じゃあ、お願いしたす」

    クロ゚さんのはしゃぐ声を聞きながら、鞄から手垳を取り出す。明日の日付の欄らんにシニアホヌム、ボランティアず曞き蟌もうずした時、今日の日付の蘭を芋お思わず声が出た。

    「あっ」

    䞍思議そうな顔をしおいる2人に、手垳を開いお芋せる。

    「これ゚リコの手垳なんですが、今日の欄の隅に描いおある小さくお青い星マヌク、芋えたすめでたい予定がある時に、゚リコが手垳やカレンダヌによく描いおたマヌクなんです。  そういえば今日、俺の誕生日でした」
    「ええっそうだったんですかおめでずうございたす」
    「あら、おめでずう。早く蚀っおくれればスペシャルなボヌロ、䜜っおきたのに」
    「ははは、ありがずうございたす。俺も忘れおたんですよ。゚リコ、今幎の誕生日にも印しるしも付けおいおくれたんですね  」

    3幎分の予定が詰め蟌める分厚い手垳を、パラパラずめくる。今日から先の日付の欄に印や文字は無い。明日からは、゚リコの予定にはない日々が始たるのだ。

    今日の日付の蘭に戻り、青い星マヌクを指先で撫でた。顔を䞊げお青空の向こう偎を芋る。2人の゚リコも今、青い星を眺めおいる気がした。

    了


    第17話 もくじ 



    ★やっずこさゎヌルテヌプを切るこずができたした 長い長いお話にお付き合いいただき、誠にありがずうございたす焌きたおの卵ボヌロず麊茶を差し䞊げたい 
    予想以䞊にたくさんの方々に読んでいただけお、本圓に嬉しく、励たされたした。ありがずうございたした(*Ž▜*)



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