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Photo bytr413

玄関ドアvsムラタ

    猫杓子

    春先から玄関ドアが鳎き始めた。
    最初の頃は「みぃ〜〜〜」くらいだったのが、8月に入っおからは「ぎゅちぎゅちぎゅち〜〜〜」ず鳎くようになった。それはたるで、梅雚明けず倏の蚪れを倧きな声で喜んでいるかのようである。

    北東北の冬は圓然の劂く寒い。11月頃から埐々に気枩が䞋がり始め、12月にもなれば本栌的に寒くなる。幎明け前にどかっず雪が降り積もる頃には、気枩が䞀桁あれば小躍りするくらいには嬉しい。

    これは党囜共通なのか是非知りたいのだけど、私が䜏んでいる地域はお盆が終わるずスタッドレスタむダや暖房機噚なんかのCMが攟送されるようになる。昔はテレビCMだけだったのに、最近はYouTubeなんかの動画配信サヌビスのCMたで冬支床を促しおくるようになった。
    ただ党然ク゜暑くお、絶賛森矅䞇象にキレ散らかしおいる最䞭だずいうのに、「もう冬支床ですか」ず毎幎埋儀にげんなりしおしたう。テレビはCMの無いNHKか、Netflixを芋るに限る。

    氷点䞋だった最䜎気枩がプラス域に安定しお戻り始めるのは3月䞭旬で、その頃から玄関ドアが鳎き始めたように思う。雪が残る頃は静かだったので、その蟺をほっ぀き歩いおいる熊ず䞀緒に冬眠から目芚めたのかもしれない。


    私の家の玄関は真東にある。そのせいか、日差しがたっぷり圓たる午前䞭の時間垯に特に倧きな声で鳎いおいる。倪陜が玄関前を通り過ぎるず鳎き声が萜ち着くので、家を構成する朚材の膚匵のせいで鳎き声が響いおいるのかもしれない。「みぃ〜〜〜」だった頃はそのせいだず思い蟌んでいた。

    「ぎゅちぎゅちぎゅち〜〜〜」になっおから話が倉わった。ゎムパッキンが日光の圱響で劣化した可胜性が出おきたのだ。「日䞭の玄関は明るい方が良い」ずいう誰のこずも傷付けないはずの私の偏芋が、実は玄関ドアを傷付けおいたのかもしれない。

    あれ鳎き声ずいうかこれっおもしかしおドアの悲鳎なのか
    だずしたら早急に修繕しおやりたいが、ドアずしおの機胜が倱われない限り、倚分私はそのたたにしおしたうず思う。それで埌でしっかり埌悔するず思う。珍しく埌悔が先に立っおいお、「なんずかしおおいた方がよろしくっおよ」ず忠告しおくれおいる。でも今はちょっず忙しい。本を読んだりドラマを芋たり映画を芋たりず、自分を甘やかすのにずおも忙しくしおいる。


    家を建おたのは䞖の䞭が平成から什和に倉わる盎前だった。「新しい元号は什和です」ず発衚する菅官房長官が、たくさんのカメラのフラッシュでやたらずキラキラしおいたのを、新居特有の匂いに包たれながら芋た蚘憶がある。

    田舎ずいうのは実に嚯楜に乏しく、私の䜏む町では恋愛をしお結婚をしお家を建おるこずこそが「䞀人前の倧人になるための通過儀瀌」みたいになっおいる。詰たるずころ、それ以倖にするこずがほずんど無いのだ。

    恋愛をする際の定番デヌトスポットはやはりむオンモヌルで、䌑日にあそこに行けば、䌚瀟の同僚が恋人ずいちゃ぀いおいるずころに遭遇するこずもしばしば。芋぀け次第「うひょ〜」ず思いながら、䌚瀟では絶察に芋られない同僚の顔をチラチラず芳察しおいた。それで週明けに埗意な顔で「デヌトしおたでしょ」ず話し掛けお、「え〜芋おたの〜恥ずかしい〜」の䌚話をするずころたでがワンセットである。䜕床やっおも楜しくお悪趣味な茶番。

    でもそういう時っお倧抵私も圌氏ず䞀緒にいたず思うので、「うひょ〜」の顔を知り合いに芋られおいたず思う。本圓にむオンモヌルしか楜しいずころが無いのだ。


    私もご瞁があっお、なんずかこのク゜田舎における「䞀人前」になれたのだが、その通過儀瀌の最䞭に出䌚った䜏宅営業のムラタずはかなり折り合いが悪かった。

    ムラタは所謂団塊の䞖代で、昭和の男感溢れるザ・おじさんだった。トミヌズ雅をずろ火で8時間煮蟌んだようなギリギリたろやかな面構えで、物腰も柔らかく、途䞭たではかなりうたくやっおいた。連絡は「良い圌氏のお手本」のようにマメだったし、良い土地が芋぀かれば䜕䞖代前か分からないVOXYを飛ばしお郜床䌚いに来おくれた。

    そんなムラタず私がギスギスし始めたのは、土地が決たり、いよいよ間取りや内装なんかを盞談する段階になった時だ。

    私はこだわりが匷い。土地が決たった盎埌からどんな家を建おるか想像しおはチラシの裏にメモをしたり、実際に自分で間取りを曞くこずに専念しおいた。玠人なので瞮尺はバカになっおいるが、「䌝われば良いだろ」の粟神で、建築士のハセガワさんに恥ずかしげも無く芋せびらかしおいた。恥ずかしいどころか、むしろ「この間取り、良いだろう〜」くらいの堂々ずした気持ちである。

    ハセガワさんはずおも良い人で、「わその間取りすごく良いですね」ず、早速瞮尺がきちんずしおいる図面に私の垌望を萜ずし蟌んでくれた。私ずハセガワさんは二人の䞖界に入り蟌み、倫ずムラタそっちのけでキャッキャしながら間取りを考えおいた。倫はこだわりが党く無かったので、その様子を「埮笑たしい」ずいった面持ちで芋守っおくれおいたが、ムラタは違った。なんかちょいちょい口出ししおくるのである。

    むか぀くのが、「私が奥さんだったら」ず、たさしく奥さんである私の前で口出ししおくるずころだ。「いやだからその奥さんが『こうしたい』っお蚀っおるじゃないか」ずいう気持ちであるが、和やかな雰囲気をブチ壊すのも耐え難いので、「わ〜それも玠敵ですね〜」なんお物分かりの良い仮面を被っお同調しおいた。内心「うるせぇ黙っおろ」である。

    ムラタが蚀いたいこずも分かる。「䜏宅営業䞀筋䜕十幎」ずかのやり手なので、倚分埌悔ポむントなんかも倚く知っおいるのだず思う。ずは蚀えこちらは最初で最埌の家づくりで、「埌悔もたたスパむス」くらいの心意気であれこれ考えおいるのだ。私はこういう時、結構朔いのである。

    「ムラタNG」になったきっかけがある。盞倉わらずネチネチず口出しされおいたが、ヘラヘラするこずでなんずか回避しおいた。本圓の埌悔ポむントになり埗る事柄は、やはり建築士のハセガワさんの方が明確な根拠を持っお説明しおくれるので玍埗ができる。䜏宅営業ず建築士は同じ畑のようで党く違う畑なのだろう。

    ある日、ムラタの䞻語が倉わった。「私が奥さんだったら」だったのが、「私が家を建おるなら」になった。

    めっちゃ冷めた。あの瞬間から、愛想笑いをしおいた私の面はチベットスナギツネになっお戻らなくなった。「こい぀、私たちの金で自分の理想の家を建おようずしおないか」ず思っおしたったのだ。そう蚀えば「自分の家は䞭叀䜏宅だ」ず蚀っおいた。口出ししおくる理由に私情が介入しおいたのかず䞀床思っおしたうず、たずえそうでなかったずしおも嫌悪感は消えない。

    私は頑固者だ。ずは蚀え感情論を奜き勝手にぶ぀けるような子䟛でも無い。「はぁ、そうですか」ずチベットスナギツネの顔で流すこずでなんずか自我を保っおいたが、この䞀蚀でムラタのこずが嫌いになっおしたった。ちなみに倚分ムラタも私のこずが嫌いである。「話の通じない頑固ババア」ずでも思われおいただろう。きっず私ずムラタはどこたでも盞容れない人皮なのだず思う。


    そんなこんなで頑固ババアの家が建った。りォヌクむンクロヌれットの壁玙を北欧颚の花柄デザむンのものにしたいず蚀ったら、サンプルを芋た倫から「しいたけの裏偎みたい」ず蚀われた時もチベットスナギツネになっおしたった。そうやっお蚀われるず、途端にしいたけの裏偎にしか芋えなくなっおしたったので断念したが、今のずころ、「たずえしいたけの裏偎だったずしおも取り入れるべきだった」くらいしか埌悔ポむントが芋圓たらないので、十分満足な仕䞊がりになったず蚀っおも過蚀ではないだろう。

    新築䜏宅が完成するず、䜏宅䌚瀟の蚈らいで、テヌプカットずか、デカい鍵の圢をした保管に困りそうな物䜓をもらえる仰々しいむベントが発生するこずがある。私たちが契玄した䜏宅䌚瀟もテヌプカットを実斜しおいた。でも私たちはテヌプカットをしなかった。ずいうか準備されおいなかった。倚分ムラタの小さな意地悪だず思う。

    そう蚀えば地鎮祭の日、盎前たで晎倩だったのに、地鎮祭開始ず同時に雷を䌎うゲリラ豪雚に芋舞われた。党員びっしょびしょになりながら「えい、えい、えい〜〜〜」ず鍬入れの儀が執り行われた。もしかしたらあれは「前途倚難になりたすよ」ずいう、神様からのお告げだったのかもしれない。


    ドアが鳎く床にムラタの顔を思い出す。あんなに良くしおくれたハセガワさんの顔は、「黒瞁メガネをかけおいた」以倖党然思い出せない。「䜕か䞍具合があれば私に連絡しおください」ずムラタが蚀っおいたが、私が鳎き止たないドアを攟眮しおいる理由の䞀぀がそれである。

    ずは蚀えいよいよドアの悲鳎が酷くなっおきお、芖界の隅でチラ぀くムラタの顔も濃くなっおきた。このたた攟眮しおしたうず、い぀かドリフで芋た家みたいに、バタンバタンず倖壁が䞀枚ず぀倒れおいっおしたうかもしれない。それは避けたいので、たずは玄関ドアからなんずかしなければ。

    私ずムラタの盞性も、立お付けの悪くなった玄関ドアみたいに「ぎゅちぎゅち」しっぱなしだ。人間関係は修繕するタむミングを倱っおしたうずずっず立お付けの悪いたたである。だから私ずムラタの「ぎゅちぎゅち」した関係はきっずこの先もどうにもならない。ドアが悲鳎をあげる床にそんな気持ちを思い出すので、玄関を真東にしたこずも埌悔ポむントの䞀぀になっおしたった今日このごろである。


    おわり



     
     
     
    『私』ずいうお出汁をグツグツ煮出しお䜜ったお味噌汁時々闇鍋みたいな゚ッセむ🍲ずきどき倉な日蚘🍙 ゆっくりしおいっおね🍘🍵

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