
スミレちゃんの物語 第1話:お母さんとお父さんの出会い
お姫様は
王子様と出会って
幸せに暮らしましたとさ。
めでたし
めでたし。
スミレちゃんの
お気に入りの絵本です。
いつも
読む度に
「自分にも素敵な王子様が現れないかな」と
想像しています。
絵本の中のお姫様のように
素敵な王子様が迎えに来ないか
家の外をちらちら覗いては
待っているのです。
「どうしたの?
スミレちゃん。
お外を見て
誰かを待っているの?」
お母さんが聞きます。
「王子様が迎えに来ないか
待っているの」
「王子様?」
「お姫様は
王子様が迎えに来て
結婚して幸せに暮らすんだって。
私にも
王子様が来ないかなって思って」
お母さんはそれを聞いて笑いました。
「スミレちゃんはまだ子どもでしょう?
結婚はまだ早いんじゃないかなぁ」
「じゃあ
私が大人になったら
いつか王子様が現れる?」
「そうかもしれないね。
でも
王子様じゃないとダメなの?」
「うん。
女の子が幸せになるには
王子様じゃないとイヤ」
スミレちゃんは頷きました。
お母さんは
少し困った顔をしました。
「スミレちゃんにとっての
王子様って何?」
「えっとね。
格好良くて
お金もいっぱい持っていて
優しくて
面白くて
楽しいところにたくさん連れて行ってくれる人かな」
ふと
スミレちゃんは思いました。
「ねぇ、お母さん。
お母さんはどうして
お父さんと結婚したの?」
「え?」
「お父さんは
どこかの国の王子様だったの?」
スミレちゃんがお母さんに尋ねます。
「そうねぇ。
お父さんはどこかの国の王子様ではないわね。
でも
お母さんは幸せだよ」
「どうして?」
「毎日こうして
笑って暮らせているから。
スミレちゃんもそうでしょう?
お父さんがいてくれて
毎日楽しいでしょう?
それは
お母さんも同じ」
スミレちゃんは頷きました。
そうなんだ。
お父さんは王子様じゃない。
それなのに
どうしてお母さんもスミレちゃんも
幸せなのでしょう?
スミレちゃんは
また疑問に思いました。
「ねぇ、お母さん。
お父さんは王子様じゃないのに
どうしてお母さんも私も幸せなの?」
スミレちゃんの質問に
お母さんはさらに困った顔をして笑いました。
「そうねぇ。
じゃあ、ちょっと昔のお話をしてあげるね。
お母さんがお父さんと出会ったときのお話」
「聞かせて!」
スミレちゃんはワクワクしました。
お母さんとお父さんの出会いは
どんなにドラマチックなのだろうと期待しました。
「お母さんがまだ
忙しくお仕事をしていた頃に
お父さんと出会ったの。
その時のお母さんは
仕事のことで頭がいっぱいで
心が疲れちゃったのよね。
それでね
このままお婆さんになっても
こうしてお仕事を続けて終わるのかなって思うと
悲しくなっちゃって。
思い切って
お婿さんを探そうと決めたの」
「お婿さん?」
「結婚相手のことだよ。
お見合いって言うのがあってね
そこで色んな男の人と出会って
この人と結婚したいかどうかを決めるの」
「そうなんだ!
それで、お母さんは
色んな王子様とお見合いをしたの?」
「そうだねぇ。
色んな王子様がいたわね。
色んな王子様とお話をして
お食事もしたけれど
お父さんが一番だと思ったのよね」
「何で?」
「どの王子様とお話しして
一緒に過ごすよりも
お父さんが一番
安心するからかしらね」
スミレちゃんは
首をかしげました。
「安心するって何?」
「確かにね。
王子様達はお金も持っていたし
格好良かったし
悪くはなかったのよ。
お父さんは
そこまでお金もなくて
格好良いわけではなかったし
お話も面白くはなかったの。
でもね
一緒にいるとすごく
楽しいの。
それでね
落ち着くのよね」
「そうなの?」
「そう!
この先も
一緒に生きて欲しいし
お母さんの傍にいて欲しいって思えたの」
スミレちゃんは
お母さんのお話を聞いて
不思議に思いました。
お父さんは王子様ではありません。
でも
確かに
お母さんの言ったとおり
一緒にいると楽しいし
傍にいて欲しいと思えるのです。
王子様のように
何かを持っているわけではないし
特別面白いことを言うわけではないのに
なぜなのでしょう?
スミレちゃんは再び首をかしげます。
それを見てお母さんはまた
微笑みました。
「スミレちゃんにはまだ
難しいかしらね。
何もなくても
特別なことをしなくても
一緒にいるだけで幸せと思える人。
お父さんは
そう言う人なんだよ。
毎日こうして
お話をして
ご飯を食べて
一緒に遊んで
そういう
いつもの生活を
楽しく過ごしてくれる人。
そう言う人がいつか
スミレちゃんにも現れるよ」
特別な何かを持っていなくても
何かをしてくれなくても
いつもの生活を
楽しく過ごしてくれる人。
小さなスミレちゃんには
よく分かりませんが
何となくそれが
お父さんのような人なのかなと思いました。
「じゃあ
お父さんみたいな人が
私にとってのそういう人?」
「そうかもしれないわね」
「王子様じゃなくても
私は幸せになれるかな?」
「そうよ!
一緒にいて
今のスミレちゃんとお母さんみたいな
幸せな気持ちになれる人を探してみてね」
「うん、見つける!
ちょっとよく分からなかったけど
お父さんみたいな人見つける!
それでね
お母さんみたいに幸せになる!」
それを聞いたお母さんは
少し照れくさそうに笑いました。
ちょうどその時
お父さんが仕事から帰ってきました。
「お父さん、お帰りなさい!」
スミレちゃんは
お父さんに駆け寄ると
抱っこしてもらいました。
お父さんの抱っこは
気持ちいいね。
お父さんの大きくて温かい手が
スミレちゃんの頭を撫でます。
スミレちゃんは今日も
お母さんとお父さんと
幸せに暮らしています。
特別な何かが
あるわけではありません。
いつもの生活を
いつも通りに送っているだけです。
その
いつも通りの生活を
こうして楽しく送れている。
それが出来る家族で
本当に良かったと
スミレちゃんは感じているのでした。
ーーーーーおわり
あとがき)
私は現在妊娠9ヶ月です。
もうすぐ産まれてくる娘のために
再び物語を書き下ろしました。
今後も
「スミレちゃんの物語」というシリーズで
我が子のために
物語を書いていこうと思います。
お読み下さりありがとうございます。