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ドラマチックな寒い部屋

    その女の頭はまるく輝いている。
    薄い焦茶色の軽い砂、乾いた砂のような髪の毛。
    身の毛もよだつような静電気を帯びていて
    誰も握手などしたがらない。

    女の頭をシンメトリーに割ると、
    2つの部屋があった。
    ひとつは、慈悲深い女神のような真珠色をした何もない部屋。鍵はあいている。

    もうひとつは、深緑のベロアのカーテン、
    赤い受話器、黒革の硬いくつろげないソファー、
    あらゆる渦に巻き込まれそうな大きなベッド。部屋のランプは3つあり、
    どれも下を向いて小さなオレンジの光を床に落としている。
    鍵穴は2つ。施錠されている。

    しきりにドアをノックする者がいる。

    ドアをノックするたびに、ふたつの部屋は寒くなる。青い雪がちらちらと部屋にはりついてゆく。

    ドアをあけないのかい?
    しらないわ
    ドアをノックしているよ?
    きこえないわ

    ふるえる女。
    まつ毛がスローモーションのように、凍ってゆく。

    何もない部屋の方では風でバタバタと扉が開き、いくつかの音楽が訪問した。
    ギャザーのように身を寄せる音。
    持って来た蝋燭を灯し、風と食事を分かち合う。
    いや、食事がそこに「有る」ようなふうにだ。
    そのうちに部屋が暖まり、女はゆっくりと眠くなった。
    猫のように体をまるめてウトウトする。

    おまえのくちびるは、あることないことを
    吹聴していて、まるでサスペンスだ。
    かわいそうなサスペンス。
    痩せ細ったサスペンス。
    ここは慈悲深い部屋だから、どのサスペンスも
    丸く納めてやろう。ただし代償も大きいぞ。

    凶暴なアナウンスを聞かないふりした音楽は笑いだし、そのギャザーを部屋一面に広げて、
    一枚の感情的な絵画のように振る舞った。
    あることをなかったことのようにするのは、慈悲深い部屋ならではの、ただの演出である。

    目が覚めた女は、意識をもうひとつの部屋に移動しようと、2つの鍵を手にとった。
    「電話をかけたいの。」
    誰に?
    「昔の煙のような思い出に。」
    触れない煙を一生懸命に抱き寄せるように
    女は泣き言をいう。
    こぼれ出た白い息は、幻想的な踊りを踊りながら、宙へ昇っていった。

    居心地の悪いソファーで受話器をにぎりしめ
    女は凶暴になり、思いついたセンスのない言葉たちを暴発してゆく。

    受話器の向こうの郷愁はまたたくまに
    焼け野原になってゆき、受話器の穴穴から焦げ臭い匂いが女のいる部屋に充満しはじめた。
    女は面倒くさそうにため息をつき、姿勢をただそうとするが、愚鈍なからだが女をベッドへ誘導する。

    腰からバタンとベッドに倒れると、台風の目のような大きな大きな渦巻きが女をかき乱し、こなごなにし、右へ左へと吹き飛ばす。
    消えゆく中、女は幸せそうに笑った。

    涙がひとすじ流れたが、
    気のせいだろうと星は言う。

    女が消えると、部屋には寒さがもっと沢山、波のように押し寄せた。
    いずれまた女が鍵を開けるであろうこの部屋へ。

    「電話をかけたのがまずかったのでしょう」
    通りがかりの人々が口を揃えてそう言いながら、女の2つに割れた頭を白く細い糸で縫って行った。
    それから、せめて寒くないようにと、薄いブランケットを隙間から放り投げた。

    この女は、わたしであり、あなただ。
    希望であり、絶望であり、慰めだ。
    みっともない片割れを秘密にしながら
    人生を行く。
    まるで終わらない作業のように。

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