1/80 16.5mm JR東海383系特急型電車 クロ383-1 急行『シュプールつがいけ』
製作工程のご紹介
今回はお客様のご依頼を受け、弊社のデジタルクラフトチャレンジキットを用いて、幻の383系急行シュプールつがいけ号を再現しました。
本記事では、「塗装~仕上げ」の工程に焦点を当て、製作の様子の一部をご紹介したいと思います。
また、弊社でご提供している製作代行オプションの作業内容は、概ね本記事の工程に準ずるものとなっております。


1996年の運用開始から30年が経過した383系ですが、運用開始当初はいわゆる「スキー臨」への投入も想定されていました。
ロールアウト時、各編成のヘッドマークや方向幕には、青空の下、ゲレンデの白銀の中を颯爽とスキーヤーが駆け抜ける「シュプール」号用の幕が仕込まれていました。

しかし、その後のスキーブームの縮小や高速道路網の整備などによって、スキー臨需要そのものが低下、結局のところ一度も営業運転には投入されることはなく、ついには「幻」の存在となってしまいました。
他方、現在でも一部の編成には「シュプール」の幕が残されており、時折折り返しの幕回しなどで目撃され、話題になることがあります。
01_パーツの下処理
さて、まず製作を開始するにあたり、3Dプリントパーツの下処理を行います。

パーツを洗浄後、サポート痕や目立つ積層痕をヤスリで整えます。
最初に行う工程ですが、その後の仕上がりを左右する最も重要な工程でもあり、入念に行います。

レジンの色は黒色を採用しています。白~グレー系のレジン比べて積層痕が見やすく、処理すべきポイントが判別しやすいためです。
また、光の透過率が低いため、室内照明を点灯させた際の「透け」も最小限に抑えられます。



02_下地塗装
各パーツの下処理が完了したら、
PPプライマー→サーフェイサーの順番で下地塗装を行います。
塗料は、タミヤのナイロン・PPプライマーとファインサーフェイサーを使用します。

タミヤのナイロン・PPプライマーはレジン素材への食いつきもよく、また素材へのダメージが少ないため、レジン素材を塗装する際にはおすすめのプライマーです。

クモハ車の試作車両も同時に進めました。
細かい積層痕はサーフェイサーでほぼ覆うことが出来ますが、僅かに陥没している箇所や欠落している箇所が浮き彫りになることがあります。
その場合はポリパテなどで処理して、再度サーフェイサーで覆い、修正します。
この際、サーフェーサーの層を厚くしすぎると、細かいディテールが埋没してしまいますので、塗膜の厚さに注意しながら塗装します。
03_ボディ内装塗装~マスキング処理
ボディの外側を塗装する前に、内装の塗装を行います。
運転室空間と客室空間で内装色が異なるため、2層に分けて塗装を行います。

運転席内装にはMrカラーC366インターミディエートブルー、客室内装にはMrカラーC97灰色9号を使用しています。
塗装後、MrカラーGGXクリア半光沢を薄く塗り、紫外線防止処理を施しつつ、樹脂パネルのにぶい光沢感を再現しました。

内装塗装が十分に乾燥したら、ボディや細かい部品にマスキング処理を施し、外装塗装の準備を行います。

先んじて塗装を進めていた熱交換器(クーラー)などの小物部品もマスキング処理を行います。熱交換器の塗分けはやや複雑ですが、カット済のマスキングシートがキットに付属しており、これを使用するとすんなり完了します。

04_塗装
塗装は一発勝負ですので、緊張の連続です。
塗装の順番として、383系の場合は
⑴先頭部ホワイト
⑵先頭部ダークブラウン帯
⑶シルバー下地ブラック
⑶ステンレスシルバー
となります。

特に先頭車のホワイト部は名実ともに模型の「顔」になりますので、ウェット塗りで光沢感を意識しながら慎重に塗装します。

各層の乾燥~マスキングの工程を挟みながら進める都合上、ボディ塗装の全工程を完了するには1~2週間程度を要します。塗膜が十分に硬化する前にマスキングを行うと、塗膜が剥がれたり、荒れたりすることがありますので、焦りは禁物です。

外装色にはMrカラーGGX LG1ホワイト、GGX LG2ブラック、ガイアカラーGP10プレミアムチタンシルバーを使用しています。
ダークブラウン帯はGGXブラック/ホワイト/GX109クリアブラウンの調色で再現しました。

05_デカール施工~仕上げ
塗装まで完了したところで、キット付属のデカールを施工します。

今回はシュプールつがいけ号ですので、方向幕とヘッドマークはシュプールつかいけを選択します。

その他、セントラルライナーやホームライナーなどの方向幕も用意しています。

デカールを施工する際は、まず先頭部の帯を位置決めするところから始めます。
デカールは完全に定着する前であれば位置を微調整できますが、定着後はかなり強固に張り付くため、無理に剥がそうとすると塗膜まで一緒にもっていかれます。
なので、事実上デカール施工も一発勝負です。失敗したらほぼ塗装からやり直しになりますので、非常に神経を使う作業となります。

先頭車の微妙な曲面と、窓枠とのクリアランスを一定に保ちながら、サイドラインと並行になるよう貼り進めていきます。
同時に、側面のブラウン/オレンジ帯や、乗降扉の帯デカールも施工します。こちらも極力一直線になるよう、車両と並行方向に僅かにテンションを掛けながら貼り進めていきます。

デカールの施工が完了したら、最後にクリア塗装を施して完了です。外装のクリアにはMrカラーGGX LG112光沢クリアを使用しています。
また、フロントガラスもこの工程で取り付けます。
フロントガラスはクリアレジン製ですので、積層痕の研磨後、クリア塗装、黒色の裏打ち塗装を施して、透明感を出しつつ、実車の雰囲気に近づけています。


窓枠にはワイパーを取り付け、若干ガラス側にテンションがかかるように折り癖をつけておきます。こうすることで、窓ガラスからの浮き上がりを最小限に抑えられます。
この後、メタルプライマー処理を施し、黒で塗装しました。

06_完成
今作のテーマは「きれいな383系」です。
登場から30年が経過した383系は、現役とはいえ流石にダメージが目立ちつつあります。いよいよ新型385系への置き換えが近づきつつあり、車齢が残り僅かとなった今、もう一度デビュー当初の新車の姿を模型で残したいというお客様のご要望に基づき、光沢塗装やクリア層の美しさにフォーカスして製作を進めました。


また部品構成は1994年の量産先行車ロールアウト当時のものとし、スカート等は切り欠きのないフラットな形状を採用、保安装置の表記もATS-STのみのシンプルな構成となっています。




2026/4/13製作開始 2026/6/5完成
こちらの車両は東海地方在住のお客様よりご依頼いただきました。
この度は弊社製品をご注文いただき、誠にありがとうございました。
07_余談
私事ながら、本年度4月から地元の県立高校から非常勤講師のお仕事をいただき、時間講師として1年ぶりに教職へ復帰しました。
高校生に社会科を教えながら、日本平精密模型の事業を進めています。
先日、私の勤務先で学校祭が行われ、先生方のご厚意で弊社のブースを出展する機会をいただきました。

保護者や周辺住民の方々を対象とした行事のため、弊社での事前告知は行いませんでしたが、ご来場いただいた方々や、日頃面識のある生徒のみなさんも興味深そうに眺めていってくれました。
こちらの製品はお客様より許諾をいただき、弊社ブースにて展示をさせていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

今後も機会を見つけ、イベントへの出展にも取り組んでいこうと思います。他方、製作した模型の多くがお客様のもとへ旅立っていくため、手元に展示用の車両が残らないことが悩みでもあります。贅沢な悩みではありますが…。
今後も、展示用と試験用にも車両開発~製作を続けていこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
