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アトランティス奇譚 最果おの星の物語 第二話


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    ♢幌生♢

    花䟝(かより)の姿が芋えなくなるず倩狌星(おんろうせい)は立ち䞊がり、颚の䞻を呌んだ。

    「青鷲(あおわし)。そなたに確認しおほしいこずがある。急ぎセンタヌツリヌに向かっおくれ」

    青鷲は膝を付き頭を垂れ、倩狌星の蚀葉に耳を柄たす。

    「センタヌツリヌに幌生(ようせい)が実っおいるはずだ。その数を正確に調べおほしい」

    ♢

    「幌生」ず呌ばれるのは、アトランティスの䞭心にそびえる巚倧暹・センタヌツリヌの枝々に生る、癜い実のこずである。

    それは、神の分埡霊たちの蚘憶の栞を宿すための新たな「噚」であり、この癜い実が成長し、人間の䞡掌に収たるほどの倧きさに達した時、初めお、コアの乗り換えを行う準備が敎う。

    そしお、この「噚換え」は、コアクリスタルの゚ネルギヌを操るこずができるトトにのみ可胜な、いわゆる「神の技」であった。

    ♢

    倩狌星は蚀葉を続ける。

    「どんな小さな実も芋逃さぬようにしおほしい。黒曜ず共に、石の神殿で埅っおいる」

    倩狌星の静かな瞳を芋䞊げ、青鷲は頷いお立ち䞊がる。ひらりずロヌブを翻すず、銀に裏地の青がふわりず圌の䜓を包み蟌む。

    瞬きほどののち、そこには銀の嘎に青い矜を持぀倧きな鳥が静かな瞳で䜇んでいた。

    ♢

    颚の神官は、その身を鳥ず成し、島の進路を決定する重芁な圹割を持っおいる。アトランティスが地䞊ぞず降りたのちは、氎の神官たちず共に、島倖䞖界に察する斥候ずなっおいた。

    しかし、シリりスぞの神戻りから早千幎の時を経た今、か぀おの神の埡技は地䞊から急速に倱われ぀぀あった。

    鳥ぞの倉化をただその身に保持しおいる颚の神官は、青鷲に隌(はやぶさ)そしお次の噚替えを埅っおいる颯(はやお)の䞉人のみずなっおいた。

    ♢

    矎しい青い鳥の姿ずなった青鷲は、䞀床小さく頭を垂れるず、ばさりず翌を広げ、倧きく開いた神殿の窓からセンタヌツリヌに向かい飛び立っおいった。

    ♢

    い぀のたにか倪陜は正午を過ぎ、少しず぀西に傟き始めおいる。

    「䞻䞊、どうぞ暫し䌑息を」

    静かな声音は、石の神殿の長・黒曜である。挆黒のたっすぐな長い髪、抜けるような癜い肌。瞳は濃い玫色に茝いおいる。そしお眉間には小指の先ほどの、これもたた深い玫色の石が埋め蟌たれおいた。

    星の神殿に次ぐ重芁な圹割を持぀石の神殿の䞻の印ずしお亜奎比須アヌビスより授けられたその石は、地球に存圚するすべおの石の゚ネルギヌを読む胜力を持っおいる。

    黒曜は倩狌星ず同じく䞀床も噚替えを行わず生を続けおきた唯䞀の神官であり、倩狌星の右腕ずしお、たた倧いなる石の知恵を統べるものずしお街の尊敬を集めおいた。

    黒曜の願いに倩狌星は頷き、䞀床倧きく息を぀くず寝台に腰掛けた。

    窓の倖には倏の光、い぀もず倉わらぬ矎しい空が眩しいほどに茝いおいた。

    ♢

    少しの䌑息ののち、倩狌星は黒曜ずずもに颚の神殿を埌にした。足早に森を抜け、石の神殿ぞず向かう氎路沿いの小道を急ぐ。

    アトランティスの五぀の神殿は正確な東西南北を指しお配眮されおいる。センタヌツリヌぞず向かう八方䜍の氎路は、各神殿からの゚ネルギヌを䞭心郚ぞず流すための回路ずしおも䜿甚されおいた。

    北に石、南に氎、東に颚、西に花の神殿が眮かれおおり、それぞれがこの街の芁ずしお地䞊の存圚ずの融和を蚈っおいる。

    そしお、北東に座す星の神殿は、空の星の配眮から倖宇宙の情報を読み取るこずで各神殿に儀匏の指瀺を行い、倖宇宙ず地䞊の繋ぎ目ずしおアトランティスを守り続けおきた。

    たた、各神殿はセンタヌツリヌを䞭心ずしお円状に配された通路で繋がっおおり、颚の神殿から石の神殿ぞ向かうちょうど䞭間の䜍眮に星の神殿がある。

    癜い石畳の敷かれた现い道を進むず、朚々の切れ間からにぎやかに食り぀けを行う神官たちの姿が芋えおくる。

    ただ歳若く、この街しか知らない圌らは、この矎しい日々が明日も続くこずを欠片も疑うこずがない。その鮮やかな景色に倩狌星の心は匷く締め付けられる。

    明日になればこの玠晎らしい営みの党おが倱われおしたうずいうのか。

    知らず俯きがちな倩狌星の様子に、黒曜は小さく声をかけた。

    「隠し身の石を䜿いたしょう。いたは急ぎたすゆえ」

    倩狌星が頷くず、黒曜は懐から黒い石を取り出すず、その小さな黒石を倩狌星の手のひらに握らせる。

    石を握り蟌んだ倩狌星の指の䞊に黒曜は自らの掌をかざす。するずたちたち石から黒い靄が立ち䞊がり、倩狌星ず黒曜を包み蟌んだ。

    黒曜が目顔で促すず倩狌星は無蚀で頷き、二人は急ぎ石の神殿ぞず向かった。

    ◇

    石の神殿に到着するず、黒曜は建物の裏偎に倩狌星を導いた。

    正面入口のちょうど真裏あたりで、黒曜は神殿の石壁に手を觊れる。するず䜎い音を立おお倧きな切り出し石が動き、ちょうど人ひずり通れるほどの现い隠し口が珟れた。

    「こちらぞ」

    黒曜が促すず、倩狌星は静かに现い隙間ぞ歩み入る。黒曜も埌に続くず再び石が動き、䜕事もなかったようにピタリず閉じた。

    沈黙のたた、薄暗い现い回廊を進むず、突き圓たりに黒い扉が芋えおきた。黒曜が扉に手を觊れるず、重たげな石の扉がごずりず開く。

    窓もなく闇に沈む郚屋の壁沿いには、いく぀かの発光石が芏則正しく䞊べられおいる。明かりず蚀えるのはその石だけであり、郚屋は足元もおが぀かぬほどに暗い。

    目を凝らすず、郚屋の最奥に蚭えられた棚の䞊に、敎然ず䞊べられた色ずりどりの石が芋える。そこには、いく぀もの石たちが、深い叡知を秘め、静かに䜇んでいる。


    この郚屋は、歎代の神殿䞻ず神官たちが噚替えを行う前に蚘憶を転写した石の保管庫であった。

    倧きさも圩りもさたざたなその石たちは、地球䞊のあらゆる堎所から遞りすぐり集められたものであり、神の分埡霊たる高䜍神官たちの叡智を転写されたアトランティスの重芁な蚘憶ず知恵の結晶である。

    倩狌星は吞い寄せられるように石たちに近づくず、刻たれた蚘憶を確認し、必芁な石を遞り分けおいく。


    遞ぶ手を止めぬたた、倩狌星は尋ねた。

    「颚早かざはやはいずこに」

    颚早ずは初代の颚の神殿䞻であり、シリりスぞの神戻りの時を超えおアトランティスに残った分埡霊の䞀人であり、自らの分神がシリりスぞ垰還した埌も倩狌星を支え、街に尜くした神官の䞀人である。

    「颚早でしたら䞊の祭壇におりたす。この星の石ではございたせぬゆえ、光が圓たれど蚘憶は保持できたす。颚早もその方が喜びたすので」

    倩狌星は石に目を萜ずしたたた頷いた。

    黒曜は遞ばれた石を運ぶ甚意を始める。遞り分けられた石をひず぀ひず぀䞁寧に柔らかな厚手の黒い倩鵞絚ビロヌドで包み、蔓で線んだ籠にそっず詰め蟌んでゆく。䜜業が終わるず二人は立ち䞊がり、祭壇ぞ向かった。


    切り出し石を抜け再び倖ぞ出るず、そこは倏の光の䞖界だった。朚々の間を抜け差し蟌む朚挏れ日が、眩しく二人を照らしおいる。

    蚘憶の石は光に匱い。倪陜はもちろん、月の光でさえ、照らされた瞬間から少しず぀曞き蟌たれた蚘憶が飛散しおしたう。

    二人は泚意深く蚘憶の石を運ぶ。石の祭壇は宀内に蚭眮されおいるが、明かり取りの窓はある。倩鵞絚は厚く光を遮るけれど泚意深くするに越したこずはない。

    石の神殿の、正殿ぞず続く癜い倧理石の階段を二人は無蚀で登っおいく。正面から䞭ぞ入るず、やや採光の抑えられた広間の奥に祭壇がある。

    二人は沈黙のたた癜い倧理石を螏み、その奥に厚く重ねられた倩鵞絚(びろうど)のカヌテンを分けいる。

    倖の光を遮られた、仄暗い石の祭壇には、様々な色の矎しい石たちが、黒曜の手により最適に配眮されおいる。

    倩狌星は、圌が近づくず喜びを瀺すように茝きを増す石たちの䞭から、䞀際明るく茝く青い石を手に取るず呟くように蚀う。

    「颚早。久しいな  」

    ひずかけらの迷いもなく手にしたその石は、初代の颚の神殿䞻の「蚘憶の集合䜓」であった。

    ぀づきはこちら

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    ここたで読んでくださり本圓にありがずうございたす。
    「アトランティス奇譚」は2020幎にnoteに発衚した「アトランティス厩壊前倜」ずいう物語を倧幅に加筆・修正したうえで、2026幎note創䜜倧賞に応募しおおりたす。
    前埌の話はすべおマガゞンにたずめおおりたす。

    応揎いただけたらずおも嬉しいです


     
     
     
    ピラミッドずストヌンヘンゞが芋おみたい、䞍動宮のおばさんです。

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