
伊坂幸太郎「逆ソクラテス」は五月晴れで万華鏡。オーディブル レビュー
こんにちは。回文厨の鍋音エバン(NAVEOTOEVAN)です。
かいぶん【回文・廻文】
上から読んでも下から読んでも、同じ言葉になる文句。例「たけやぶやけた」
そんな私が今日紹介する一冊はこちら。
ステラクソ。
ステラは星だから〜星のうんち。
あら、ちょっと文学的で哲学的?
「キレいかキタナいか。それが問題だ」
という話ではない(当たり前)。ないけど。
でも。星は綺麗でウンチは汚い。本当に?
敵は、先入観。世界をひっくり返せ!
伊坂幸太郎史上、最高の読後感。
デビュー20年目の真っ向勝負!
逆転劇なるか!? カンニングから始まったその作戦は、クラスメイトを巻き込み、思いもよらぬ結末を迎える――「逆ソクラテス」
ほか「スロウではない」「アンスポーツマンライク」「非オプティマス」「逆ワシントン」――書き下ろしを含む、無上の短編全5編を収録。
(2020年第33回柴田錬三郎賞を受賞・2021年本屋大賞ノミネート)
ほら、やっぱり世界をひっくり返すからステラク…それでは始めよう。(2230字)
オーディブル レビュー
アッパレ!五月晴れの子どもたち
(2025/04/04 読了)
伊坂氏の本は数冊しか読んだことがないが、時々クスッとさせられる表現が印象的で、よく言えば軽妙、悪く言えばちょっと軽薄だと思っていた。そんな昨日までの自分を土に埋めたい。
ジャンルは児童文学でもいけそうな本書。
平易な文でサクサク読めるし、ニヤっとできるところは相変わらずゴロゴロあるし、読後感はサラッと爽やか。だが、それは氷山の一角。隠れているというよりわざと隠されている部分がたっぷりある。
いや、「氷山」というよりは「五月晴れ」か。最近は5月の爽やかな晴天をも差すようになったこの言葉。本作も確かにカラッと乾いた空気感をまとっている。
しかし本来「五月晴れ」とは旧暦5月(今の6月)の梅雨の晴れ間のこと。前後に重くうっとおしい雨があっての得難く眩しい、そして短い「晴れ間」だ。
各編それぞれの子どもたちの活躍は、まさにそんな瞬間を切り取っている。その後にやってくる人生の「盛夏」を匂わせつつ、でも決して爽やかで心地いいだけじゃない。前後に多かれ少なかれネガティブなものを抱えている。その隙間。重いだけでも軽いだけでもない。だからこそ得難く眩しい。
かといって「子ども時代」だけが尊い、昔は良かった、と言うようなピーターパン至上主義や懐古趣味な話では決してない。「逆」だ。周りにいる大人たち(先生やお母さんなど)がこれまた気張らず伸び伸び生きていて、大人になるのも捨てたもんじゃないな、と思わせてくれる。そう、視線はあくまでも未来を向いているのだ。
この本の正しい在り方は一家に一冊。
特に小学生のお子さんがいるなら即買おう。
そして家族全員が10代、20代、30代、40代……と節目ごとに読む。
オーディブルならドライブ中に皆で聴く。
すると人それぞれ、また年それぞれで見えてくるものが違うだろう。隠れていたものが見えてくる。見えていたものが隠れてしまう。同じ材料なのにその時どきで現れ方が違う万華鏡のように。見える形は微妙に違っても見ているものはおんなじだ。家族みんなで楽しめる。自分のなかでもループして楽しめる。
なんてコスパのいい一冊だろう。
もちろんおひとり様だって大丈夫。あなたの中には10歳のあなた、20歳のあなた……の記憶も間違いなく残っているのだから。
それにしても。
「僕は、そうは、思わない」
なんというキラーワードだろうか。
今の自分、今の世の中に突き刺さる。
軽そうに見えて実はクソ重いボールで襲いかかってくる。
打席で呆然と立ち尽くすだけの自分。
マウンドでニヤリとする伊坂氏が見える。
ここまで完敗だとこちらも笑うしかない。
仲間が見える。敵も味方も。
笑い声が響く。五月晴れのグラウンドに。
※オーディブル・アプリに書き込んだレビューに今回大幅改変・加筆
note追記
今回も似た作品を昭和の世界からご紹介。
ワルのぽけっと(灰谷健次郎著)
題名にもあるように「ワル」や「弱者」など、いわゆる出来杉くんじゃない子どもたちがこちらも大活躍する短編集だ。
ここに収録されている「プゥ1等あげます」は、先生と子どもたちとの「逆ソクラテス」な問答もあり、ユーモラスで温かい、まさに昭和の「逆ソクラテス」である(他の作品も同じテイスト)。是非読み比べていただきたい。
ちなみにこのプゥというのはオナラのこと。
どうして子どもってお尻とかオナラとかウンチとか好きなんでしょうねえ?
え?お前がはじめにステラクソとか言い出したんだろって?
そーでした、そーでした。
じゃあ、最後「お尻の逆」で締めましょか。
お・し・りだからり・し・お?
ケ・ツでツ・ケ?
あーーー違う違う。今回は字じゃないの。
ビジュアルが逆なやつ。
平成生まれさんたちは知らないかなーー?
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オシリがアタマなニコチャン大王。
はい。お尻お後がよろしいようで。
本日の作品情報:逆ソクラテス
(集英社文庫) 文庫 – 2023/6/20
伊坂 幸太郎 (著)
松本 健太 (ナレーション)
6 時間 59 分
お読みくださりありがとうございました。
Hasta pronto! またお会いできますように
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