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日本の排出権取引制度 GX-ETSが、始まる。

     2026年度から、日本初のキャップ&トレード型「排出量取引制度(GX-ETS)」が本格稼働します。年間のCO₂直接排出量が平均10万トン以上の企業(単体法人)は参加が義務化され、対象企業は約300~400社、国内排出量の約60%を占める規模に上ります。政府は改正GX推進法(2025年5月成立)に基づき、業種ごとの指針に沿って対象企業に排出枠(許容排出量)を無償割当てし、企業は毎年度、自社の排出実績を報告・第三者検証を受け、同量の排出枠を償却(確保)する義務を負います。未達の場合は市場で不足分の排出枠やクレジットを調達するか、未達理由の説明公表が求められ、制度の実効性を高めるため履行しなかった場合のペナルティ(未償却分相当の費用負担)も検討されています。この制度導入により、企業の温室効果ガス削減の取り組み強化と脱炭素社会実現の加速が期待されています
     今回は、政府のワーキングの検討資料を読み解き、GX-ETSについて、整理をいたします。
     今日も楽しんでいってくださいね。


    新「排出量取引制度」の5つのポイント

    スピード理解:GX-ETSとは?

     GX-ETS超入門は、まずは、こちらのページをご覧ください。
     続いて、取引制度のガイドです。簡単に経済産業省のワーキング資料に基づいて作成した、NotebookLMでまとめた動画も最初に置きます。お急ぎの方はこちらをどうぞ。

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    日本の新炭素市場:排出量取引制度ガイド

    1. 対象はトップ企業のみ。でも日本の排出量の6割をカバーする「選択と集中」

     新しい排出量取引制度の対象者は、限定されています。具体的には、CO2の直接排出量が過去3年度平均で10万トン以上の事業者のみが対象となります。これは、事業者数にすると約300~400社程度、しかし、この事業者で、日本の温室効果ガス総排出量の約60%近くを占めています。この制度設計は、行政コストを抑制しつつ、排出量が特に大きい企業に的を絞ることで、国全体の排出削減を効率的に進めようとする「選択と集中」のアプローチと言えます。ここで注目すべきは、日本がEUや英国の「設備単位」ではなく「事業者単位」での閾値を選択した点です。企業単位で管理を一本化することで、制度運営の円滑化を図る戦略的な意図がうかがえます。

    2. お手本は「優等生」。ユニークな排出枠(キャップ)の決め方「ベンチマーク方式」

     企業に割り当てられる排出枠(キャップ)の量は、その企業の将来の活動を大きく左右します。この排出枠の無償割当方法には、主に2つの方式が用意されています。

    • ベンチマーク方式: エネルギーを多く消費する業種などが対象。同業種内で排出効率が優れた企業のレベルを目標とする方式です。

    • グランドファザリング方式: 過去の排出実績を基準に、そこから一定の削減率を乗じて排出枠を割り当てる方式です。

     特に注目すべきは「ベンチマーク方式」の考え方です。政府の検討資料によれば、2030年度時点の目標水準として「上位15%と50%の中間である上位32.5%とすることが妥当ではないか」という方向性が示されています。この設計が巧みなのは、必ずしも業界トップ(上位15%)という達成困難な目標を全社に課すのではない点です。代わりに、トップ層と業界中央値(上位50%)の中間点を目標とすることで、業界の「中位層」全体に強力な改善圧力をかけることを狙っています。これは、業界全体のレベルアップを5年間で現実的に促すための、極めて戦略的なインセンティブ設計と言えるでしょう。

    3. いきなり厳格ではない。第三者チェックは「段階的」に本格化へ

     排出量の報告には、信頼性を担保するため、「登録確認機関」による第三者の確認(検証)が義務付けられています。しかし、制度開始直後から最も厳格なルールを適用すると混乱を招くため、政府は確認の厳格さ(保証水準)を段階的に引き上げる現実的なアプローチを採用しました。

    • 制度開始後3年間 (2026-2028年度): まずは事業者全体の排出量に対して「限定的保証」を求めます。

    • 2029年度以降: 大規模な事業所を対象に、より厳格な「合理的保証」を段階的に導入していく計画です。

     重要なのは、この2つの「保証」の違いです。

    • 限定的保証は、「重大な誤りがあることを示唆する事項は認められなかった」という消極的形式(Negative Form)で結論が出されます。

    • 合理的保証は、「全ての重要な点において、基準に準拠して作成されていると認める」という積極的形式(Positive Form)で結論が出され、より高い確実性が求められます。

     この段階的な移行は、事業者と確認機関の双方が制度に習熟するための準備期間を設ける、設計であり、報告業務のコストやリスクを理解する上で不可欠な知識です。

    4. 市場の混乱を防ぐ「安全装置」。価格の上下限設定

     排出枠は市場で取引されますが、価格の暴騰・暴落は経済活動に深刻なダメージを与えかねません。このリスクを回避するため、政府は価格の上下限設定という重要な「安全装置」を設けています。

     具体的には、以下の2つの価格安定化措置が講じられます。

    • 上限価格: 排出枠の価格が高騰した場合、事業者は「上限価格 × 不足分」を国に支払うことで、排出枠保有の義務を果たしたとみなされます。

    • 下限価格: 市場価格が設定された下限を下回って低迷した場合、GX推進機構が市場から排出枠を買い入れる(リバースオークション)ことで価格を支えます。

     この仕組みは、単なるセーフティネット以上の意味を持ちます。特に上限価格の存在は、企業のコンプライアンスコストに「最悪のシナリオ」を設定することを意味します。

    5. 「クレジット頼み」はNG。利用上限は排出量の10%まで

     排出削減義務を果たすため、自社での削減努力に加え、植林や省エネプロジェクトなどから生まれる「カーボン・クレジット(J-クレジットやJCMクレジット)」を購入して充当することも認められています。しかし、このクレジット利用には「各年度の実排出量の10%」という明確な上限が設けられる見込みです。なぜ上限を設けるのでしょうか。その背景には、先行する欧州の教訓があります。(EU-ETSにおいては、第1フェーズから第3フェーズまでの間に約15億トンの安価な外部クレジットが使用され、排出枠の余剰発生の一因となりました。)

     利用上限ルールは、政府からの明確なシグナルです。つまり、この制度におけるコンプライアンスの王道は、事業の根幹を変革すること——すなわち、操業効率の改善、プロセスイノベーション、そして新技術への投資であるべきだ、ということです。安易なオフセット購入に依存するのではなく、本質的な脱炭素化を通じて長期的な産業競争力を高めることこそが、この制度の狙いです。


    2.排出枠の割当方法(詳細)

     先にふれた、排出枠の初期配分を決定する「割当方法」について、もう少し詳しく見てまいりましょう。無償割当が基本となる本制度において、割当方法は企業の削減インセンティブと国際競争力に直接関わる最重要事項です。その核心であるベンチマーク方式とグランドファザリング方式のメカニズムと、それぞれの適用対象について分析します。排出枠の割当は、主に以下の二つの方式で行われます。

    • ベンチマーク(BM)方式: 鉄鋼、化学、セメントなど、エネルギー多消費分野で、同業種内での生産効率の比較が可能な事業活動に適用されます。

    • グランドファザリング(GF)方式: 上記以外の事業活動に適用され、過去の排出実績を基準に割当量を決定します。

     これら基本方式による割当に加えて、企業の個別事情を反映させるため、以下の4つの「その他の勘案事項」が割当量の調整に用いられます。
    ・早期の削減努力: 制度開始前に行った排出削減努力を評価し、割当量を加算します。
    ・製造拠点の国外移転(カーボンリーケージ)のリスク: 国際競争に晒される貿易財製造業に対し、排出枠調達コストの収益への影響を考慮して割当量を加算します。
    ・研究開発投資の状況: GX関連の研究開発投資額に応じて割当量を加算し、技術開発を促進します。
    ・活動量の変動等: 事業所の新設・廃止や生産量の大幅な変動があった場合に割当量を調整します。

     ベンチマーク(BM)方式

     ベンチマーク方式は、いわゆるトップランナー方式であり、ベンチマークは「同業種内の上位X%に相当する排出原単位(生産量あたりの排出量)」として設定されます。各企業の割当量は以下の式で計算され、排出効率の高い企業ほど有利になる設計です。
     割当量=基準活動量✕目指すべき排出原単位

     WGでの検討状況では、現在、製造業、発電、運輸の各分野で専門的なワーキンググループ(WG)が設置され、業種ごとの特性を考慮したベンチマーク指標(活動量や算定範囲の定義など)の具体化が進められています。割当水準の考え方としては、ベンチマークの水準は固定ではなく、段階的に引き下げられます。省エネ法におけるトップランナー制度の運用実績では、ある時点での上位15%程度の水準に業種全体が到達するには約10年を要したことが参考にされています。これを踏まえ、5年後の2030年度の目標を、基準年度(2023-2025年度平均)の上位50%(中央値)水準と、トップランナー水準(上位15%)の中間点である上位32.5%水準に設定するという、野心と実現可能性を両立させる現実的な政策判断がなされました。

    グランドファザリング(GF)方式

     グランドファザリング方式は、過去の排出実績(基準排出量)を基に、毎年度一定の削減率を適用して割当量を決定します。計算式は以下の通りです。 割当量=基準排出量✕(1-目指すべき削減率×経過年数)

    排出源別の削減率:削減率は、排出源の特性に応じて二種類設定される案が示されています。これは削減手段の有無や技術的ポテンシャルを考慮した緻密な設計と言えます。

    • エネルギー起源CO2: 年率1.7%削減

    ◦ 算定根拠: GF対象分野の燃料構成において、約4割は既に排出係数の低い都市ガスへ転換済みである実態を踏まえ、残る約6割の燃料が、平均的な排出係数(61.8 t-CO2/TJ)から都市ガス相当の排出係数(51.3 t-CO2/TJ)へ10年かけて転換するポテンシャルを基に算出されています。

    • プロセス由来CO2: 年率0.3%削減

    ◦ 算定根拠: 生産に伴い不可避的に発生するプロセス由来排出は削減手段が限定的です。そのため、ベンチマーク対象業種における収率改善ポテンシャル(5年間で約1.5%の改善)をグランドふぁざリング対象分野にも適用するとの考えに基づき、年率0.3%(=1.5% ÷ 5年)と設定されています。

    業種横断的な割当共通論点として、直接排出比率の補正があります。自家発電設備の有無や購入電力への依存度の違いが、事業者間の直接排出量に大きな差を生じさせることがあります。この不公平を是正するため、一部の業種では、直接排出と間接排出を合算した排出原単位でベンチマークを算定した上で、各社の直接排出比率に応じて割当量を補正するメカニズムが検討されています。

    また、副生燃料の扱いもあります。製鉄所の高炉ガスなど、生産プロセスで副次的に発生する燃料の有効利用を阻害しないための配慮がなされます。副生燃料は通常の燃料と排出係数や燃焼効率が異なるため、その差を考慮して追加的な排出枠を割り当てる方針が示されています。具体的には、GF方式を適用し、かつ削減ポテンシャルが限定的であることから、プロセス由来排出のGF削減率(年率0.3%)を用いて割当量を算出することとされています。


    3.対象企業は、どんな準備を行うべきか?

    GX-ETS本格導入に向けた義務対象企業のすべきこと

     義務対象となる大規模排出企業は2025年内に周到な準備が不可欠です。
    まず、導入の目的を整理しましょう。

    GX-ETSへの円滑な移行とコンプライアンス確保: 2026年度からの排出量取引義務を確実に履行し、排出枠不足による罰則的コストを回避するために、2025年のうちに体制整備と計画策定を行いましょう。十分な準備により、初年度からデータ報告や割当申請をミスなく行い、排出枠の余剰・不足を戦略的に管理することが可能になります。

    競争力維持と長期戦略策定: カーボンプライシング導入により炭素コストが企業収益に影響を与えるため、経営戦略に脱炭素目標を組み込み、2050年カーボンニュートラル実現や2030年前後の削減目標達成に向けた「GX移行計画」を策定することが望まれます。信頼性の高い移行計画を持つ企業は将来の規制強化にも柔軟に対応でき、投資家や市場からの評価向上にもつながります。また、自社の削減ポテンシャルと排出枠コストを見極め、低炭素投資を前倒しすることで、中長期的な競争力強化を図ることが目的です。

    社内体制強化: 経営層から現場までGX-ETSの趣旨と運用を正しく理解し、全社的な合意形成を図ることも重要な目的です。部署横断の連携体制を構築し、排出データ管理から削減施策の実行、排出枠の売買判断まで統合的にマネジメントできるようにします。

    2025年下期(7~12月):制度対応と市場準備の加速

    法令・ガイドラインのフォローと社内手続対応: 2025年中頃から年末にかけて、GX-ETS実施に関する政省令や詳細ガイドラインが順次公表される予定です。まず、実際、2025年7月に経産省から「排出量取引制度の詳細設計に向けた検討方針」(本BLOGも参照元です)が示され、さらに年末までに関連する省令等が公布される予定です。環境管理担当者は政府発表を逐次フォローし、新情報をプロジェクトチームや経営層に速やかに共有することが望まれます。ガイドラインに沿って社内規程や手順書をアップデートし、不明点があれば主管官庁(経産省GX推進室など)や業界団体を通じて照会するのが良いでしょう。例えば、排出量算定方法の統一基準が示された場合は、自社ルールとのギャップを下期早期に是正しておきます。また、必要な行政への登録・申請手続きを洗い出し、社内で担当と締切を確認します。

    想定される手続きには以下があります:

    排出枠割当申請書の提出: 政府が定める様式で、自社の基準排出量や生産実績等を記入した申請書を提出しますcas.go.jp。改正GX推進法の規定では「2025年度中に施行されるルールに沿って割当申請を行う」とされておりcas.go.jp、おそらく提出期限は2026年3月末までになる見込みです(詳細は政省令で確認)。したがって、2025年末までに申請書ドラフトを用意し、必要データが揃い次第2026年初めに正式提出できるよう準備します。申請には第三者検証機関の確認書も添付が求められる可能性が高いため、年明けの検証スケジュールも見越して段取りを組むことが良いと考えられます。

    制度参加者としての登録・口座開設: GX推進機構(政府系の新組織)によるシステム上での排出枠管理口座の開設手続きも必要です。排出枠やクレジットの売買・償却は専用の電子プラットフォームで行われる予定のため、2025年下期に企業ごとのアカウント登録が始まる可能性があります。予め商号・所在地・排出事業所情報など必要事項を整理し、電子署名の準備(法人マイナンバー連携等)が求められる場合に備えます。GX推進機構が提示するマニュアルに従い、担当者が速やかに登録作業を完了できるようにします。なお、GX推進機構は市場運営主体として、口座管理や割当量通知、取引機会の提供等の業務を担います。

    無償割当量の確認・異議申立て: 政府による割当量算定結果が通知された際、自社の事業計画や削減努力が適切に反映されているか確認します。ベンチマーク方式の場合はプロセスごとの活動実績と業種基準値の適用結果を検証し、グランドファザリング方式の場合は自社の過去排出実績が正確に算定されているか確認します。もし算定誤りや特別な事情(例:設備停止による一時的排出減少など)が考慮されていない場合、所定の手続きで異議申立てや再算定の申請を検討します。ただし基本的には初年度は全量無償割当となる方向であり、大幅な不足が生じる可能性は低いと見込まれます。それでも自社の割当量が将来の排出見通しに対して十分かを精査し、不足しそうであれば早めに追加対策やクレジット確保策を講じます。

    GX移行計画の策定と社内承認: 2050年カーボンニュートラル達成と2030年前後の削減目標に向けた移行計画(トランジション・プラン)の取りまとめを下期中に進めます。改正GX推進法では、対象事業者に中長期の排出削減目標と達成施策を記載した移行計画の策定・提出が求められることが明記されています。2027年度には提出を求められる見通しですが、社内的には2025年中に素案を作成し、経営層の承認を得ておくことが望ましいでしょう。

    計画には以下の内容を盛り込みます:

    • 長期ビジョンと数値目標: 2050年ネットゼロ達成に向けた自社の長期ビジョン、および2030年目標値(例:2013年度比▲○%)と中間目標値(2025~2027年頃)を明記。これらは前述のプレッジで決定した値を正式に文書化する形です。

    • 排出削減シナリオ: 今後10~15年の設備投資計画や技術導入計画を踏まえ、どのように排出原単位を改善し、エネルギー転換やプロセス革新で排出削減を実現するかのシナリオを示します。主要プロジェクト(例:老朽ボイラーの高効率化、電化や水素燃料への転換、自家消費太陽光やCCUSの導入など)の効果とタイムラインを記載します。

    • 財務計画と投資戦略: 排出削減に必要な投資額や調達計画、炭素コスト(排出枠購入費用)の見積もりを織り込み、事業への影響を分析します。特にGX経済移行債や補助金の活用、内部カーボンプライシング制度の導入検討など、資金面の戦略も含めます。

    • ガバナンス体制: 脱炭素推進の社内統治体制(例えば取締役会レベルでの監督や、役員報酬への気候KPI組み込みなど)やステークホルダーエンゲージメント方針(サプライヤーや顧客との協働)も記載します。

    • 排出枠取引への対応体制づくり: 2026年度からの市場取引開始に備え、下期中に社内の取引体制と戦略を固めます。具体的な準備事項は次のとおりです:

      • カーボン取引担当者の育成: 上期に任命した排出枠管理担当者に対し、実際の取引実務に必要な知識・スキルを習得させます。例えば、他国のETSの取引事例研究、東証カーボンクレジット市場eneres.jpでの試行的取引の経験共有、社内でのデモ取引演習などを行います。必要に応じてブローカー企業やカーボンクレジットの専門会社と連携し、市場情報の入手経路を確保します。

      • 購入・売却戦略の検討: 自社の排出削減見通しと無償割当量を照らし合わせ、初年度の排出枠余剰・不足予測を立てます。仮に不足が見込まれる場合、どの程度を市場から購入するか、上限価格近辺になった場合の対応(購入コストと他の排出削減オプションの比較)など戦略を策定します。一方、余剰が出そうな場合は売却のタイミングや、繰越(バンキング)による将来活用も含め方針を決めます。価格変動リスクに備え、政府が設定予定の上下限価格にも留意しつつ、社内の意思決定プロセス(どの価格水準で誰が売買判断を下すか)を明確化します。これらをまとめたカーボン取引方針書を策定し、経営陣の承認を得ます。

      • 予算措置と社内ルール整備: 排出枠購入費用やクレジット調達費用に充当する予算を、2026年度事業計画に織り込みます。例えば炭素価格を○○円/トンと仮定した場合の年間コストを試算し、原価計算や販売価格戦略への影響も試算します。必要に応じて製品や部門ごとのカーボンプライス内部精算制度を設け、排出削減インセンティブを社内浸透させます。また、排出枠取引に関する社内規程(例:取引権限、記録管理、リスク管理ルール)を制定し、コンプライアンスと内部統制を確立します。内部監査部門とも連携し、不正取引や情報漏洩を防止するチェック体制も準備します。

    • 適格クレジットの活用検討: 排出量超過時のオフセット手段として、政府が認定する適格カーボンクレジット(現状ではJ-クレジットおよびJCMクレジット)を活用できます。しかし、現時点でこれら国内クレジットの発行量は限られており、対象企業全体の排出量に比して圧倒的に不足しています。また、第2フェーズ以降はクレジット利用量に制限(各年度排出量の10%まで等)が設けられる案も検討されています。そこで2025年内に、利用可能なクレジットの市場動向や価格レンジを調査し、自社の調達方針を検討します。具体的には、J-クレジット創出プロジェクトへの参画可能性を探ったり、自社のサプライチェーン由来のクレジット(サプライヤーの削減寄与分)を確保するスキームなどを検討します。また、海外クレジットの要件も2024年にガイドラインが示されていますが(継続的関与が必要等、ハードル高)、現実的には国内クレジットの活用が中心となるでしょう。社内では「自社努力で削減しきれなかった分のみクレジットで補填する」との原則を共有し、まずは直接排出削減を最優先する姿勢を醸成します。その上で不足分に備えて必要量のクレジットを見積もり、信頼できる取引先(クレジット仲介業者等)を確保しておきます。

     以上、2025年中に実施すべき準備と対応を網羅的に解説しました。早期から計画的に取り組むことで、2026年度からのGX-ETS義務化を単なる規制対応にとどまらず、自社の持続的成長戦略の一環として活かすことができるでしょう。


     お読みいただきありがとうございます。
     見慣れない言葉が多かったかもしれません。詳細は、改めて、音声ガイド(20分)もどうぞ!対話形式で聞くと、わかりやすかったりします。

    #GX -ETS
    #NetZero


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