
病に挑む次世代治療 No.26 CRISPRは“1回の治療”で慢性疾患を変えられるのか?
2026年4月、米Intellia Therapeuticsは、遺伝性血管性浮腫(HAE)を対象としたin vivo CRISPR治療「Lonvo-z(lonvoguran ziclumeran)」の第Ⅲ相HAELO試験で主要評価項目を達成したと発表した。
この結果を受け、同社はFDAへのBLA申請を開始しており、2027年前半の承認取得を目指している。
本成果が注目される理由は、Lonvo-zが患者体内で直接遺伝子編集を行う「in vivo CRISPR治療」として、世界で初めて第Ⅲ相試験に成功した開発品だからである。
対象疾患であるHAEは、カリクレイン-キニン経路の異常により反復性の浮腫発作を引き起こす希少疾患であり、現在は抗体医薬や低分子薬による継続投与が治療の中心となっている。
これに対しLonvo-zは、肝臓でプレカリクレインをコードするKLKB1遺伝子をCRISPR/Cas9で不活化することで、発作の原因そのものを長期的に抑制することを目指している。
第Ⅲ相試験では、5〜28週の評価期間において発作頻度をプラセボ群比で87%低下させ、さらに62%の患者で発作ゼロを達成した。
従来のHAE治療薬が、
・毎日服用
・月1〜2回注射
・年数回投与
といった継続治療を前提としているのに対し、
Lonvo-zは、「1回の投与で長期的な疾患コントロール」という新しい治療概念を提示している。
CRISPR医療はこれまで、
「遺伝子を編集できるか」が課題だった。
しかし今後は、「1回の編集でどこまで疾患を制御できるか」という新しい段階に入りつつある。
Lonvo-zの成功は、遺伝性疾患のみならず慢性疾患に対する遺伝子編集医療の可能性を大きく広げる出来事と言えるだろう。
(参考文献)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I034717483