
結婚式のピアスをつけて、別の男に会う
結婚式の日に身につけたリボンのピアス。
本当なら、幸せの象徴なのだろう。
けれど、私たちにとってあの日の結婚式は、
夢のような時間というより、
ひとつのミッションだった。
数日前、夫のアクシデントで、
式そのものができるかどうかさえ
分からなかった。
準備に追われ、
不安に追われ、
ただ無事に終えるために、
必死だった。
だから、そのピアスを見るたびに思い出すのは、
永遠の愛を誓った瞬間よりも、
なんとか乗り切った安堵感だ。
そして今日も、
耳元に結ばれた小さなリボンをつける。
別の誰かに会うために。
罪悪感がないわけじゃない。
むしろ、その感情は確かにそこにある。
けれど同時に、
胸の奥が熱を帯びるような、
抗えない恍惚感もある。
人は正しさだけでは生きられない。
結婚式の日に結ばれたリボンの下で、
真珠に似せた白い球体が、
今も私の耳元で揺れている。
偽物でもいい。
本物かどうかなんて、
案外、人は見分けられないものだから。
大切なのは、
そこにどんな意味を込めるかだ。
耳元で揺れる白い球体は、
純潔の象徴にも、
裏切りの証にも見える。
見る人によって、
意味は変わる。
そして私自身もまた、
そのどちらなのか分からない。
ただひとつ分かるのは、
揺れているのはピアスだけではない、
ということだ。