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羽虫の大群

    悲しいことがあった。
    というより、少し前に起きたことについて今になって悲しいという感情が前面に出てきた。
    詳細は省くけれど、簡単に言うと、常に味方でいてくれると思っていた人が味方ではなくなってしまった。実は少し前から味方じゃなかったらしい。
    はじめは衝撃が大きくて悲しいが息を潜めていたけれど、ジワジワ、ジワジワと、悲しいが心を侵食している。半紙に一滴こぼした墨汁がジワ〜っと広がっていく感じ。私の心はやわやわの紙でできていたみたい。
    本当に今、真っ黒でどうしよう。時間は戻らないので、現実を受け入れるしかないのだけれどさ。悲しいなぁ。でもこの悲しい感覚を無視しちゃ駄目だ、もがかず受け入れるのだ、と、深呼吸しながら目を閉じる。

    こんなに悲しいけれど、家で塞ぎ込んでいては余計心が真っ黒になってしまうので、気分転換に公園へ出かけた。楽しそうに遊ぶ子ども達、ベンチでパソコン作業している人、散歩するワンコ(最高)。公園は孤独を紛らわせてくれるから良い。
    今日は快晴で、ベンチに座ってボーッとしてるだけで気持ちが良かった。日焼けも気にせず木漏れ日を浴びる。5月の紫外線はヤバいらしいが、そんなことより心に光を取り入れたかった。
    ふと顔を上げると、それはそれはものすごい羽虫の大群がいた。何百、いや何千匹とかいたんじゃないか。とにかく凄まじい数の羽虫がブンブン群れをなして飛んでいた。木漏れ日に照らされた羽虫の大群は、雪が降っているように光って見えてとても綺麗だった。普段は羽虫を見るとイヤッと思うのに。綺麗と思ったのは生まれて初めてかも。

    蚊が2匹飛んできて、もうそんな時期かと思いつつ、そう簡単に血は吸わせんぞと手ではらう。そこで蟻がトレーナーの腕部分にまで登ってきていることに気付いて、みんな生きてんなぁと安心した。
    みんな一生懸命生きてんなぁ。私も目の前のことを受け入れて、今を生きなきゃなぁ。私のやわやわな心には、羽虫の大群を綺麗と思える余裕がまだあるのだ。

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