
【エッセイ】夏は近し、パチらせ乙女
アラサー会社員あるある
『出張とかもうそんなに嬉しくない』
月曜日の日帰りの東京出張なんてなにも嬉しくないのだ
僕のことをあまり知らない人からするとそれが意外なのか妥当なのか知る由もないが、僕は一応普通のサラリーマンをしている
まだまだ若い時は出張があるとその地の同期や友達に連絡して会ったり、ひとりでも有名なお店を探して堪能したり、月曜日や金曜日であれば前泊、後泊をして楽しみまくっていたのだが、それも無くなってきた
この日は東京の事務所にお客さんを招いて案内をするという仕事だった
ちょうど同じ場所では大学生らしき女の子たちがうろうろしていた
インターンか、就活か何かの会だろう
そうか、そんな時期か
僕がお客さんを案内している時もその学生たちが他の社員から事務所の案内を受けて興味津々そうに弊社(弊社って言いたいだけ)の見学をしている
たしかに僕も就活の時こんなのあったな、と思い出して懐かしい気分になった
お客さんの案内も終わり、ちゃーーんと相手の姿が見えなくなるまで頭を下げて見送った
ちょうどその学生たちの会も終わったらしく、学生たちは担当の社員さんたちに列を成してたくさんの質問をしていた
うんうん、あるある
セミナーとかが終わった後に社員さんに話しかけにいっていかにも御社に興味があります入社意思がありますアピールするよね
あわよくば顔を覚えてもらって選考の時に有利になるんじゃないかとか考えてね、わかるわかる
と、油断していたら
「あの、すみません〜の社員様ですか?よろしければ質問させていただきたいです」
!?
なんと僕まで質問された
いいよ!聞く相手絶対違うけど!いいよ!
わざわざ月曜日に東京まで来て、ほぼ完璧に(たぶんね)一仕事終えた僕は心の中ではスーパーサラリーマンの気分だった
でも、そうか
普段はポンコツカス社員の僕でも就活生からすれば輝いて見えるのかもしれない
この会社の社員さん!しかもTシャツにジャケットでスニーカーでなんか今っぽい!めっちゃお客さんに頭下げてたし!めっちゃペコペコしてたし!ちゃんとしてそう!素敵!
そこにシビれる あこがれるゥ!!
って思われてたらいいなぁなんて妄想していた時によく来てくれました!質問なんでもウェルカム!!
さぁて何を聞かれるのかとわくわくしたが最初の質問はこれだった
「入社を決めたポイントは?」
え、それ面接官が就活生に聞くやつじゃね?とも思ったが何かの参考になるのであればとしっかり答えた
僕「やはり、私も皆様と同じように就活で見学に来た際に、皆様の楽しそうに働いている姿が魅力的に見えたからですね。それで、僕もここで働きたいって思いました」
キリッ!!
完璧!ベストアンサー!!
この回答の裏には「俺のことも素敵に見えてるよね!?」っていう啓蒙も含んでいる
ちなみに本当は「いちばん最初に内定を貰えたから」っていうマジカスな理由
本音と建前を使えるあたり俺って大人
ふむふむ、とその子はしっかりメモを取っていた
続いての質問は
「働いている方はどんな方が多いですか?」
「やりがいは?」
「会社の好きなところは?」
など、就活生が社員にする質問でありがちなことだった
わざわざここに書くほど特に面白い回答もしていない
でも精一杯この僕の(会社も)印象と評価が上がるようなことを、社会人生活で身につけた必殺笑顔と共に繰り広げた
むしろその子が弊社の面接を受けた時に「御社のなるきさんっていう方がこんな素敵なことを言っていて…」とか言って人事に対する僕の評価を上げておいてほしい
その子はまたしてもふむふむとメモをとっている
真面目でいい子だな
そう、こうやって就活生が社員に質問するのは「今後の面接で話せるようなことを聞きたいから」なのである
僕の本音どうこうより、いかに選考を有利に進められるような良いことを言うかどうかなのだ
その意図をちゃんと汲み取って、「ぽいこと」を言える僕はすっかり大人だ
また、こんなあるある質問もあった
「社会人になる前に今のうちにやっておいた方がいいことはありますか?」
でた、これだ
9割が「海外に行く」とかクソ回答をするこの質問
そうっちゃそうなのだが、就活生が求めている回答はそれではないのだ
僕はこう答えた
「たくさんの失敗をしてください。学生時代は失敗してもなんとかなります。なので悔いのないようにやりたいことにチャレンジしてください」
キランッ☆
30歳になっても失敗ばかりしている情けない大人からのアドバイスである
その子はこの答えだけはメモを取っていなかった
綺麗事ばかり言いすぎてこいつ胡散臭いな、てバレ始めていたのかもしれない
そして
最後の質問
「目標とかやりたいことを教えてください」
え、おれまた逆に就活生になった?
目標…
まず僕の脳裏に浮かんだことは「はやく答えなければいけない」ということだった
この質問に対して沈黙が長いことはリアルすぎる
ない…のかな…?とか思われたら終わりなのだ
やばいやばいどうしよどうしよ
無いです!(笑)なんてのはスカしすぎだし逃げだしダメだ
でも、無い
本音を言うと、ちゃんと無いのだ
どうするどうする…
ピンッ
これだ!
僕「スペインに行きたいです」
※これを書いている今なら分かります、絶対この回答もダメでした違いました
就活生「スペイン…?お仕事でですか?」
僕「いえ、プライベートで」
知らねええええ!知らんおじさんの知らんプライベートでスペインに行きたいとか、知らねええええ!!
ここで僕は前回の記事に書いた「W杯で準優勝した国に行く」の説明をしてあげた(意味わかんないこと聞かされてまじでごめん就活生)
何言ってんだこいつ?って顔をしながらもその子は優しく笑ってくれた
ちゃんと苦笑いだった
いや、だが
逆にこの回答によって
1.ちゃんと休みとって海外とかも行けるんだ
2.こんなアホでも採用されるんだ
という安心感が生まれたかもしれない
僕「この会社に入ったからこそ、僕はいつかスペインに行けるかもしれません!いいですよね!」
就活生「わたしこの前の年末にスペイン行きました」
あ、もう行ったんだ!!ごめん!!
最後にはその子に「スペインとっても楽しいので、行けるように頑張ってください」と言われた
就活生に気を遣われて応援される社員
あの子のためにもやはり僕はスペインに行かなければならない
絶対今後の面接で使えない回答をしてしまって申し訳ない
就活がんばれ、おれもがんばる
それからまた仕事をして、富山に帰るために東京駅に行った
改札の中に31アイスの自販機があって列ができていた
暑いからみんなアイスを欲すのだろう
ふん、愚かな…
なんて思うわけもなく僕も「わーい食べたい♫」と早歩きで近寄っていって並んだ
370円だ。財布の中の小銭を探すとちょうど100円玉3枚と10円玉7枚があった
ちょっと嬉しいやつ
だがその自販機はIC決算のみしか使えず、小銭を入れるところはガムテープでぎっしぎしに閉じられていた
あ、え?とあたふたしてカードを出そうとするの小銭を落としてチャリンチャリーーンと鳴らしてしまい
後ろに並んでいた人にも拾ってもらって、「よろしければ小銭いただいて代わりに私がカード使いますよ」とまた気を遣わせてしまった
すみません、とお礼を言ってポッピングシャワーを買った

新幹線のホームで、もしゃもしゃとアイスを食べ、ぼーっと疲れた顔をして口の中をパチパチさせるアラサー
こんな大人も悪くないぞと伝えたい
悪くないですねと言ってくれないか
隣のベンチでは知らないおじさんが31アイスのオレンジソルベを食べていた
さらにその隣では就活生らしき女の子がキャラメルリボンを食べていた
トリポルポップが完成して
夏が新幹線に乗って近付いてきた
〜あとがき〜
31アイスではマスクメロンがダントツで好きです
〜あとがきのあとがき〜
31アイスでは必ずカップではなくてワッフルコーンを選びます大人なので課金します