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父娘を救うことはできなかったのか? ― シングルファーザーとして考えた、父子家庭の無理心中事件

    2024年7月。父子家庭の父娘が無理心中をするという悲しい事件が起きた。奈良県下北山村のダム湖で52歳の父親が5歳の長女とともに命を絶ったというものだ。
    このnoteは私の父子家庭の経験をメインにエッセイを書いている。当然、この事件については無視することができず、何度か関連する記事を書いていたら、読売テレビの記者さんの目に留まり、この事件を取り上げた夕方のニュース番組の特集に出させていただいた。その放送はYouTubeにも上がっているのだが、50万回以上再生されている。
    そのコメント欄を見ると、父親がSOSの電話をしたが対応できなかった公共サービスへの批判が多くみられる。私も同じような感想を持っていたが、この事件を大阪市が検証した報告書を見るとだいぶ思っていたものとは違っていた。今回はその報告書の内容をまとめ、今後どのような対応が必要なのかを私なりにまとめてみた。もちろん素人の考えなので間違いもあるかもしれない。それも含め、読者にとって考えるきっかけになれば嬉しい。
     
    まずは詳細を説明したい。
    事件の当日、父から児童虐待ホットラインに電話があった。こども相談センター職員が父に電話をして状況確認していたが、途中で父に切電された。電話をかけ直したが、父は「心中しようと思いレンタカーで移動中」と言い、来所するよう促したが応じなかった。それ以後、電話は通じないため、警察に相談。翌日に警察署から、「山中で父が借りたレンタカーが見つかった」と報告があり、身元不明だがおそらく本児だと思われる死亡している父娘が発見された。
     
    父は生後2か月からひとりで娘を育てているが、当初からこども相談センターの職員は家庭訪問をして状況確認をおこなっている。一時期は乳児院で預かっていたが、父は「早く引き取りたい」と強く希望。その後、保育所を利用するが父の不満が噴出して何度か入所退所を繰り返している。その間もこども相談センター、区役所にて対応を続けていた。
     
    それら詳細については以下のようにまとめてみた。
    ① 主な関係機関と対応頻度の全体像
    ■ こども相談センター(こ相)

    • 家庭訪問:原則 月1回程度(継続指導期間)

    • 面会・面談:必要に応じて随時

    • 会議(援助方針):節目ごと(数か月単位)

    ◆ 例として、生後10か月以降:「月1回家庭訪問」と明記されている。
    ■ 区役所

    • 家庭訪問:不定期(必要時)

    • ケース会議:数か月ごと

    • 保育所・支援機関との連携:随時

    ◆ 頻度感

    • 「個別ケース検討会議」:節目ごと(数か月〜状況変化時)

    • 家庭訪問:こ相と連携しながら適宜実施。

     
    ■ 保育所

    • 日常的に接触:ほぼ毎日(通所時)

    • 問題があれば報告:基本は月次報告+重大時は即時

    ◆ 重要ポイントとしてこちらが挙げられるだろう。傷などの情報について、「原則は月末まとめて報告」。重大事については即時報告が必要となっている。(ただし実際は遅れあり)
    ■ 要保護児童対策地域協議会(要対協)

    • 実務者会議:数か月ごと

    • レベルに応じて定期開催

    ◆実態

    • 「レベルE」などで継続的に会議は開かれているが、

    • 頻度は高くても月1回未満(数か月に1回ペース)

     
    ■ 医療機関

    ・父の通院:月1回程度(精神科)

    • ただし行政との連携:ほぼなかった

     
    ■ 児童虐待ホットライン

    • 対応:24時間365日(即時対応)

    • ただし人員:1〜2名体制で同時対応に限界あり

     
    ② 時期ごとの実態(重要)
    ■ 比較的関与が強い時期

    • 乳児期〜1歳前後

      • 家庭訪問あり

      • 一時保護あり

      • 会議あり

    ◆ 一定の見守り体制あり
     
    ■ 問題が顕在化する時期(2歳以降)

    • 保育所が主な接点

    • 家庭訪問は減少

    • 医療連携なし

    ◆ 報告書の指摘は「見守り機関が保育所のみ」だった。 つまり実質的に“日常の監視は保育所頼み”であったことは忘れてはならない。
     
    ■ 重大直前(5歳時)

    • 表面上は「安定」と評価

    • 会議頻度も低め

    • リスク再評価が不十分

    ◆ その結果、突発的なホットラインからの父娘心中。
    ③ 頻度のまとめ(シンプル整理)
    機関
    頻度
    こ相(家庭訪問):月1回程度
    区役所:不定期(数か月単位)
    要対協会議:数か月に1回
    保育所:毎日(通所時)
    医療機関:月1回(連携なし)
    ホットライン:24時間対応
     
    ④ 本質的な問題(頻度の観点)
    報告書が示しているのは単なる「回数不足」ではなく:
    ● 問題は「頻度 × 質 × 分散」
    「情報が分散(保育所・区役所・こ相)」「統合が弱い」「リスク再評価が遅い」
    ◆その結果として、「関わってはいるが、つながっていない」と結論づけられている。
     
    ⑤ まとめ
    ◆「そこそこ関わっているが、継続的な高頻度の監視体制ではなかった」と言えるだろう。特に後半は、実質的に「保育所頼みの見守り」状態であることが気になった。
     
    <考察>
    では今回の件での理想は何だろうと考えてみる。私の考える「理想」は、この報告書の反省点を踏まえると、単なる回数増加ではなく、“頻度・質・連携”を一体化した支援設計である。実務的に現実性のある「理想モデル」を整理してみた。
     
    ① 結論:理想は「多層・高頻度・統合型」
    ◆ 一言で言うと
    “常に誰かが見ていて、情報が即時共有され、判断が更新され続ける状態”
     
    ② 理想の頻度(具体モデル)
    ■ 家庭訪問(こ相+区役所)

    • 通常ケース:月1回 → 最低ライン

    • リスクあり(本件レベル):
      ◆ 週1回(最低でも隔週)

    理由:

    • 父は精神状態の波が大きい

    • 家庭内の実態は保育所では見えない

     
    ■ 保育所との連携

    • 日常観察:毎日(現状通り)

    • 報告頻度:

      • 理想:異変は即日共有(原則)

      • 最低でも:週次共有

    ◆ 本件の問題
    「月末まとめ報告」→遅すぎる
     
    ■ 要対協(ケース会議)

    • 通常:数か月に1回 → ×遅い

    • 理想(本件レベル):
      ◆ 月1回以上(状況悪化時は随時)

    さらに重要:
    ◆ “会議の頻度より、内容の更新速度”
     
    ■ 医療機関との連携

    • 理想:
      ◆ 月1回以上の情報共有(主治医と)

    理由:

    • 本件は明らかに「精神疾患×育児」のケース

    • にもかかわらず
      ◆ “医療と行政が分断されていた”

     
    ■ 緊急対応(ホットライン系)

    • 理想は通話時点で即「危機モード」に移行だろう。

    具体的には「心中」「死にたい」発言 → 「即警察+位置特定+同行要請」
    (実際にそれができるかどうかはわからないが、、、)
     
    ③ 理想の“見守り構造”
    本当に重要なのは頻度よりこれだろう。
    ■ ① 見守りの多重化(Single point failureをなくす)
    本件の問題は「保育所しか見てない状態」が常態化していることである。
    理想:「家庭訪問(行政)」「保育所」「医療」「福祉サービス(ヘルパー等)」の継続した連携。
    最低3系統でクロスチェックなどができれば理想なのだろう。
     
    ■ ② 情報の即時統合
    理想は、「すべての情報がリアルタイム or 即日で共有されること」
    <例>[傷 → 当日共有][父の怒鳴り → 即共有][通院変更 → 即共有]
    (システム的には作ることができるだろうが、日常の業務にするのは難しいであろうことはわかる)
    ■ ③ アセスメントの再評価頻度
    現状:「安定してるから大丈夫」バイアス
    理想: 小さな変化でも即評価更新
     
    ④ 理想の運用ルール(実務的に重要)
    ■ トリガー設定(これが核心)
    以下が出たら即レベル引き上げ:

    • 「死にたい」「心中」

    • 保育所トラブル増加

    • 医療機関変更

    • 子どもの傷・異常

    • 登所不安定

    ◆ “感覚ではなくルールで動く”
     
    ■ ケース責任の明確化
    理想は 1人の統括責任者が全情報を把握することだろう。本件の問題は「機関ごとに分断」「誰も“全体”を見ていない」
     
    ⑤ 現実とのギャップ(重要)
    このように理想を語ることは簡単だが、実際には人員と予算がないと厳しい。ただし本件レベルならば、 本来は“ハイリスク扱い”でここまでやるべき案件と言えるのかもしれない。ただ、赤の他人が責めるべき内容ではないだろう。
     
    ⑥ まとめ
    ◆ 週単位で家庭を直接確認
    ◆ 日単位で情報を共有
    ◆ 常にリスク評価を更新する体制
    そして何よりも、 「大丈夫そう」という感覚を信用しない仕組みをつくることが大切だと言えるだろう。
     

    こういった形でまとめてみた。
    父子家庭のエッセイを書いているが、その中ではあまり理想を掲げることは好きではない。ただ、こういった制度の見直しを考えるならば、理想を語ることも必要だろうと、色々と偉そうに書かせていただいた。私がnoteを書いているのは、第一に現役世代で踏ん張っている父子家庭、ひとり親家庭へのエールである。そして周りの皆さんに偏見なき理解を深めてもらうためである。
    この父娘が戻ってくることはない。でもこの記事を書いたことも、今リアルタイムで子育てをしているお父さんお母さん、そしてその子供たちにとってプラスになって欲しいからである。子育ても何もしていないアラフィフのおじさんの言葉よりもシングルファーザーとして娘を育てている父親の言葉の方が少しは重みがあろうだろう。

    シングルファーザーとしての本音。「娘のためならば自分の命など全く惜しくない」

    だからこそ、2度と繰り返さないため、考え続けなければならないと思っている。

     
     
    父子家庭。シングルファーザー。娘が20歳になるまでをエッセイとして書いています。まあたまに違うことも。 社会的意義があると考えていますので、父娘の話をまとめて出版が目標。100本ほど関連エッセイあるので2026年には出したいな。出版社さんお声がけいただければ嬉しいです。

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