
#1 私のバリアフリーに関わる経歴
はじめまして。田中直人です。
私はこれまで約50年にわたり、バリアフリーやユニバーサルデザインに関わる研究と実践を続けてきました。
現在は島根大学の客員教授を務め、研究活動を行っていますが、私の原点は「行政の現場」にあります。
神戸市職員としてのスタート(1975年〜)
1975年、神戸市役所に入庁しました。
当時の日本では、「バリアフリー」という言葉はまだ一般的ではなく、高齢者や障害のある人が使いやすい環境づくりは、制度としても設計手法としても、ほとんど整っていない時代でした。
そんな中で私は、次のような業務に関わることになります。
・1977年:神戸市民の福祉をまもる条例の策定
・1978年:神戸市都市施設の整備に関する規則の策定
・1978年:高齢者・障害者の利用を考慮した建築設計マニュアルの作成
いずれも、「誰が、どのように困っているのか」「それを空間や制度でどう支えるのか」を、手探りで考え続ける仕事でした。
図面や条文の向こう側にいる“実際の利用者”の存在を、強く意識するようになったのも、この頃です。
神戸ポートピア’81 ― 大規模イベントでの実践
1979年から1981年にかけては、神戸博覧会「ポートピア’81」の会場計画と施設整備に携わりました。
担当したのは、
・国際展示館、テーマ館、パンダ館などのパビリオン
・会場全体のバリアフリー計画・サイン計画
などです。
不特定多数の人が訪れる博覧会は、バリアフリーの考え方を実地で試す、非常に貴重な機会でした。
「図面上では問題なくても、現場では使いにくい」「想定していなかった行動が必ず起きる」
そうした経験の積み重ねが、私のその後の研究姿勢──机上の理論だけでなく、必ず現場を見る──という考え方につながっています。