
ハコモノと思いきや、安藤忠雄建築が予想以上に面白い|坂の上の雲ミュージアム、こども本の森 松山
【#368、約4,300文字、写真約70枚】
こども本の森 松山と、坂の上の雲ミュージアム(愛媛県)に初めて行きました。その感想・レビューを書きます。
▶︎ 結論
愛媛旅行の際は、マストの行き先だと思いました!それは主に、1)安藤忠雄らしい特徴的な建築を体験できる、2)コンパクトな「こども本の森」が楽しい、3)明治維新当時の松山の様子が興味深かった、4)大人以外も興味をもてる展示や工夫があったためです。「小説をテーマにしたハコモノ的な施設やろ…」と思っていたら、想像以上に面白かったです。是非、大人も子どもも訪問をオススメします☺︎
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★☆☆
混み具合:★★★☆☆
展覧会名:第19回企画展『坂の上の雲』にみる明治のインテリジェンス
場所:坂の上の雲ミュージアム
会期:2026年2月24日~2027年1月3日
休館日:月曜日
開館時間:9:00〜18:30
住所:愛媛県松山市一番町三丁目20番地
アクセス:大街道駅から徒歩約2分
入場料(一般):500円
事前予約:ー
所要時間:約2時間(こども本の森も含む全体)
撮影:建物はOK、展示物は原則NG
巡回:ー
URL:こちら
▶︎ 訪問のきっかけ

愛媛で1人アート旅(1泊2日)を企画した際の2日目に寄りました。「坂の上の雲ミュージアム」という名称を見て「どうせ有名な小説から無理やり観光名所的に仕立てたハコモノやろ…」と、優先順位は下げていました。
しかしHPを見ると、建物の設計が安藤忠雄?!「こども本の森」も併設?!これは行くしかない!と思って訪問しました。
▶︎ アクセス

坂の上の雲ミュージアムへは、大街道駅(路面電車)から徒歩約2分。愛媛県随一の市街地から、行きやすい場所にあります。


安藤忠雄の美術館建築の多くは、開けた場所にあるイメージがあった一方で、坂の上の雲ミュージアムは細い通路に入った先にあります。かなりせせこましい場所にあったため、若干の違和感がありました。









▶︎ 坂の上の雲ミュージアムとは?

坂の上の雲ミュージアムは、平成19年(2007年)4月に『坂の上の雲』のまちづくりの中核施設として誕生しました。(…)小説『坂の上の雲』には、近代国家の形成期の世界や日本で起きた出来事、そのなかで生きた人びとの人生など多くの物語が描かれ、現代を生きる私たちに大きな示唆を与えてくれます。



「こども本の森」も同じ敷地内にあると聞いていたものの、実際は、同じ建物内にあって少しびっくりしました。


安藤忠雄が、この建物を手がけた背景は『坂の上の雲』にあります。安藤忠雄は、同じ東大阪出身の小説家・司馬遼太郎とも親交があったことに加え、司馬遼太郎記念館(2001年)の設計を手がけました。そこで、当時の松山市市長・中村時広が安藤忠雄に設計を依頼し、承諾したようです(参考)。

坂の上の雲ミュージアムでは、各階がくるくると一続きになっており、三角形の建物の坂を上る仕様になっています。安藤忠雄曰く、三角形の建物の設計は難しいそうです。そこから、困難に立ち向かった司馬遼太郎や、明治維新の人たちに思いを重ねた、とのことでした(総工費は約30億円)。
▼ 三角形の建築が印象的な安藤忠雄建築
ミュージアムは、2階(無料)、3階(明治日本の特徴)、4階(小説の紹介や企画展の開催)で構成されています。
なお、四国には、香川県・直島をはじめ、安藤忠雄による美術館がたくさんあります。愛媛県にある光明寺(西条市)も安藤忠雄による建築です。

松山市内、ミュージアム内にも、韓国の方が多かったです。韓国の 済州空港から松山への直行便が毎日出ていることも一因。そのため、市内にはハングル表記をもっと増やした方がいいと思いました。
館内のキャプションやパネルでは、日本語だけの記載でした。外国語話者には、音声ガイドで解説を補完していました。

館内では、建物の撮影はOK、展示物の撮影は原則NG。しかし、展示を撮影している人がいても、看視員が注意する様子はありませんでした。


▶︎ 「こども本の森 松山」感想

安藤忠雄が松山市に計画を提案、寄贈した「こども本の森 松山」(2025年)。大阪にある汗牛充棟な「こども本の森 中之島」と比べ、かなり省スペースでした(約130㎡)。
▼ 「こども本の森 中之島」の感想


本棚の作りや運営方法は「こども本の森 中之島」と同じ。読書は、施設内のみ可能、定員30名で90分の入れ替え制、入室は無料です。



念のため、私は事前に予約しました。しかし、予約なしでも入れる余裕がありました。当時は、観光で訪れた大人がたくさん読書をしていました。




すばらしい場所である一方、スペースの小ささ、アクセスのしづらさなどを考えると、地元の子どもたちにとっての憩いの場にはなりづらいとも感じました。






▶︎ 「坂の上の雲ミュージアム」感想
✔️ 醍醐味は安藤忠雄建築!

私にとって、坂の上の雲ミュージアムで最も価値があったのは、安藤忠雄建築を体感できたことでした。建築って偉大!






✔️ 『坂の上の雲』とは?

軍人の秋山好古・真之兄弟、俳句の革新者として知られる正岡子規という、松山出身の3人の主人公らが登場し、彼らの生き方や近代国家として成長していく明治日本の姿が描かれた司馬遼太郎の小説。「産経新聞(夕刊)」に1968年4月22日~1972年8月4日にかけて、4年半にわたり連載された。計1296回。構想期間も含めると10年に及び、司馬遼太郎は40代のほぼすべてを費やした。


私が『坂の上の雲』全巻を読んだのは2015年。当時、私が記した感想では、以下の点が印象に残ったようです。
司馬遼太郎の徹底した調査力
明治人のヨーロッパ文明を吸収しようとする順応力
現場の苦悩と、指導層(乃木希典)の無策
今となってはどういった話だったか記憶の彼方でした(苦笑。そのため、細かい展示はあまり読まず、サクサクと館内を鑑賞しました。

来場者はみな『坂の上の雲』について、楽しそうに語っていました。やはりNHKスペシャルドラマ(2009年〜2011年)の影響が大きいです。

✔️ 子どもも楽しめる展示構成

館内の解説は『坂の上の雲』の小説に使われた本文を引用しながら、当時の文化や歴史、背景などを紹介。美的な何かを鑑賞するより、博物館的な性格が強い構成でした。



小説を題材にするミュージアムのため、どうしても文字数が多くなりがちです。そのため館内には、写真や模型、さわって楽しめる展示などが多く配置されており、あらゆる来館者への配慮が感じられました。


✔️ 日本初の捕虜収容所が松山に

『坂の上の雲』の舞台は、1800年代後半から1900年代前半。明治元年(1868年)の戊辰戦争時、朝廷から敵とみなされた松山藩は、土佐藩の進軍を受け、松山城を無血開城しました。その後、1868年から69年に薩長土肥に倣い、版籍奉還(所有していた土地<=版>と人民<=籍>を朝廷に返還)を願い出ました。
印象に残った展示は、松山にあった捕虜収容所の解説でした。松山では、日本で初めて捕虜収容所が置かれました。ロシア人の捕虜は、ハーグ平和条約に則って、人道的に扱われました。
中でも、ロシア人捕虜が道後温泉に入っている写真には少し笑いました。ランチには、カツレツ、ビーフステーキなどが提供されたそうです。捕虜生活は快適だったため、自ら進んで捕虜になったロシア人もいたとのこと。そのため、ロシアが発行した日本地図には「MATSUYAMA」と地名が大きく載っていました。


✔️ 「第19回企画展『坂の上の雲』にみる明治のインテリジェンス」感想

最上階では、企画展が開催されていました。しかし、企画展そのものに関する説明がなかったため、何を目的にした展示なのか、何を伝えたいのかが全くわからず困惑しました。
HPには以下の説明がありました。
“明治日本”が経験した明治20年代後半から30年代の激動期に焦点をあて、『坂の上の雲』の主人公や登場人物らが発揮した、明治人の知恵や力量を描き出します。
展示室内には、動画やパネル、プロジェクション、造作など、さまざまな工夫が凝らされていたことに加え、展示空間も面白いし、文字も大きくて読みやすい、カラフルでポップで楽しい雰囲気はポジティブでした。
しかし、展示構成にストーリーがなく、情報がとっ散らかっていたため、何が何だかよくわかりませんでした。1つ1つの展示内容は面白かったため、それらをもう少し体系的に企画したら良かったと思いました。





▶︎ まとめ

いかがだったでしょうか?小説を題材にしたハコモノ的な施設かと思いきや、安藤忠雄による設計の楽しいミュージアムでした。気づけば、約2時間滞在していました。安藤忠雄らしいデザインと、明治時代の松山の雰囲気は特に印象に残りました。愛媛観光の際は、大人も子どももマストです!
▶︎ 今日の美術館飯


▶︎ 次回予告

次回は、ポンピドゥ・センター・ハンファ(韓国)で開催中の「The Cubists: Inventing Modern Vision」の感想を投稿する予定です。
▶︎ あなたにオススメ3投稿
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