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Photo bycoro46

[創作大賞エッセイ部門]威圧系女子が出来るまで!

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

    時は30年ほど前。若き私は毎週末せっせと合コンに足を運び、出会いと刺激をもとめていた。
    合コンとはなんぞや?と思う人もいるだろうから説明をすると、初めましての男女で集まることなのだが、居酒屋で飲んでからのカラオケでも飲むのが定番のコースだった。
    時代は乙葉さんや、安めぐみさんなどの「癒し系」と呼ばれるタレントが人気だった。ある時高校の同級生と行った合コンで、初めましての男に思いっきりカウンターを食らった。

    「君は癒し系じゃなくて、威圧系だね」

    少し間をおいて周りは爆笑!
    それはもう呼吸困難になりそうなほどだった。それもそう初めましての彼の発言は、とっても的を得ていたのだ。
    合コンに行ってるのだから、モテたいという下心はある。もちろん私だってわかってる。どんな話にもニコニコ笑っている女子がモテるってことは!わかってるなら努力しろと言われてしまいそうだが、出来ないものは出来ないのだ。そんな女子になってみたかったよ。でもしょうがないじゃない。どうしてもツッコミを入れたくなるんだもん。むしろ私にツッコまれるような隙のある話をしないで欲しい。(逆ギレな自覚はある)

    わたしが威圧系と呼ばれるまでになったのには理由がある。それは、超超超超天然の母親がいたから!これに尽きる。
    私は四人兄妹の末っ子で、父親は幼い時に亡くなった。私ひとりだけ歳が離れていたので、必然的に母親と二人暮らしの期間が長かった。
    母との暮らしは私の脳を刺激した。いや攻撃したと言った方がしっくりくるのかもしれない。とにかく天然の母親のボケにツッコミまくっていたら、見事なまでの威圧系女子が出来上がっていたのだ。
    そんな我が愛しの母親の天然エピソードをいくつか紹介したい。

    母の天然エピソード(リモコン編)
    母は出掛けるのが好きな人だった。温泉にもよく行っていた。そのせいかシャンプーやリンスなどに名前を書いていた。仮の名前を例にすると「山田用」。山田専用という意味なのかなと当時の私は思っていた。疎ましかったけど、私のものには書いてないからほっておいた。
    ある時学校から帰ってきて、ソファーに座りテレビでも見ようとリモコンを手に取ると、書いてある。リモコンに、あの言葉が。

    山田用!

    私「恥ずかしい。なんでリモコンに山田用って書いたの?」

    母「だって他人に勝手に使われるの嫌でしょ?」

    私「えっ?リモコンを?家から持ち出す物じゃないのに?」
    母「お母さんは嫌なんだよねぇ」
    私「家には私(山田)と、お母さん(山田)しかいないじゃん。他に誰が使うっていうのさ?」
    母は私の言葉を気にも留めず、ご機嫌に去っていった。
    いつもそう。私の問いに対して、母はほぼ8割は答えを言わない。

    私の心の声「誰から何を守ってるんだよ。全く意味のない戦いなんだけど」

    母の天然エピソード(五人囃子編)
    母は毎年雛人形を出してくれた。それはそれは立派な七段飾りの雛人形。
    この雛人形がとにかくすごい。毎年毎年壮大なボケをかましてくる。
    特に可哀想なのが五人囃子だ。彼らは絶対に祝いの曲を演奏することができないだろう。
    例えば肩の辺りに手を添えている小鼓担当の人形は、なぜか無理やり撥を持たされ、下に太鼓を置かれている。
    私の心の声「祝いの席で、どんな乱れ打ちをさせる気なんだよ」
    笛担当は口元に両手を添えているのに、こちらもなぜか両手の上に小鼓を持たされていた。いや無理やり乗せられている。
    私の心の声「両手を塞がれて、どうやって小鼓を叩くんだよ」
    とにかく毎年毎年、見事に担当と楽器が合っていない。可哀想なので気づいた時にせっせと直したりしていたが、それにも疲れた。写真を撮ってそれを見ながら飾ればいいのでは?とまっとうな意見を言ってみたりもしたが、天然というものは以外と頑固なのか、それともすぐに忘れてしまうのかわからないが、私の意見は通らない。
    我が家の五人囃子はいつも笑われていて、なんだか悲しそうな顔をしている。
    天然を相手に怒ったり、キレたりしても意味はない。そんなことをしてもこっちが疲れるだけなので、出来るだけ流す。とにかく流す。
    それに尽きるのだが・・・・。
    あまりに続く苦行に耐えられず、ある時母に聞いた。

    私「この体制になんで撥を持たせるの?どう見たって小鼓でしょ!なんでこうなるのか、意味がわかんない」
    母は不思議そうな顔をしている。

    母「えぇぇだってママ、小鼓習ったことないからわかんないよ」

    ・・・・・・・・・・・。

    私「私だってないわー(大声)」

    私の心の声「つーか、私が習ったことないのは知ってるよね?親なんだから。それに大抵の人が習ったことないわ!それでも考えたらわかるだろうがぁぁぁぁぁ、もう嫌!」

    そしていつものゴールに辿り着く。諦めというゴールへ。なんかすごく疲れた。もう考えるのをやめよう。


    母の天然エピソード(ダルメシアン篇)
    母は服のセンスが独特だった。柄に柄に柄合わせや、若者のお店で買ったなと思われる小物が大好きだった。
    これは見ているこっちが段々と慣れてくるのが本当に怖い。今日はまたマシな方かなと、ボーダーラインがどんどん甘くなってくる。これが良くない。それを繰り返していると、時に恐ろしいものがやってくる。
    ある時リビングでくつろいでいると、お出かけ好きな母が、友達と買い物に行ってくると登場した。
    トップスにゼブラ柄(シマウマ)を、バックにダルメシアン柄(犬)を合わせて現れた。

    私「ないないないない。それはない」
    母「なになに?なんか変?」
    私「変なのかどうかはわかんないけど、シマウマなの?それとも犬なの?ってなる」
    母「えっ??シマウマだよ」
    私「うん、上はね。でもバックは犬でしょ」
    母「えっ???バックもシマウマでしょ。合わせて買ったんだよ」

    母&私「???????」

    私の心の声「どっちもシマウマだと思ってるんだ。全然違うけど。百歩譲って牛とダルメシアンならあるのかも。普通はないけど、お母さんならあるかも。でもシマウマは違うよ。どうしよう、どうやって教えたらいいんだろう」
    当時は携帯電話やパソコンもない時代。私は途方に暮れた。
    私の心の声「動物辞典なんか持ってないし、101ぴきのわんちゃんは、お母さんは絶対知らないな。そもそも知らないからこうなってる訳だし。でも一応・・・・」
    私「ダルメシアンって知らない?ディズニー映画の101匹のわんちゃんのやつ。このバックはダルメシアンっていう犬の柄なの」

    母「ダルマ?なに?よくわかんない。シマウマみたいな犬がいるの?お母さんは毎日散歩してるけど、そんな犬見たことないよ」

    私「ダルメシアンを飼ってる家はそんなにいないんじゃないかな(悩)・・・・。ねぇお母さん、この前のピンクのバックの方がいいんじゃない。あれ可愛かったよ」
    母「あぁ、あれね。あれもいいかも。娘が言うならそうしようかな」
    嬉しそうに去っていく母。

    私の心の声「無理だ!私には無理。天然の母親に、ダルメシアンっていう犬が存在していることを理解してもらうのは、無理です」

    私は思う。あの時もし辞書があったとしてダルメシアンを見せたところで、きっと母はすぐに忘れて同じことを繰り返す。そして私は更に疲弊するに違いない。だからこれでいい。母の世界にダルメシアンは存在しない。これからもいない。
    ごめんよ、ダルメシアン。

    母の天然エピソード(足が長いから)
    天然とは無意識に人を困らせたり、貶めたりもする。しかも本人は全く悪気がないのだから、手に負えない。たまに天然を装っている人もいるが、母は本物だった。
    家に友達が遊びにくると、私がいないタイミングで、母は友達を困惑させた。

    母「うちの子すごく優しくて面白くって良い子でしょ!友達にして大正解。仲良くしてね」
    友達「あっ、はい・・・」

    返す言葉に困るよね。ごめんね。そしてお母さん、私はどっちかっていうと優しい人間ではないのよ。
    娘を溺愛していて可愛いお母さんだねと、友達は大笑いしてたけど、思春期の娘に対して、最悪の対応なんじゃないかと思う。そのおかげなのか、私は永遠の反抗期だ。         
    そんな母の天然行動は、他人に対しても容赦はない。外食に行った時、テーブル席とお座敷でどっちがいいかと聞かれることかある。  

    母「娘の足が長いので、テーブル席にします」

    私「!!!!!!!!」

    俯いたまま顔を上げられない私。バカな親子を見つめる店員さん。満足気な母。
    店員「ははっ(笑)ご案内します」
    でしょーね!返答に困るよね。わかるよわかる。
    席に案内され注文が終わってから始まる、娘による母へと尋問タイム。

    私「なんで足が長いとか余計なこと言うのよ!」
    母「だってお座敷だと足のやり場に困るって言ってたでしょ?」
    私「何言ってんの?それに私は足長くないから!」
    母「長いよ。だって2歳ぐらいの時から病院に行くと、看護婦さんが言ってたもの。足が長いくてスタイルがいいですねーって」
    私「お世辞だよ。それに2歳って、三頭身じゃん。スタイルいいかどうかなんて、わからないでしょ!」
    母「看護婦さんはプロだよ。沢山の子供を見てきたんだから、わかるんだよ。ママはすごく嬉しかったんだよ」
    私「はぁ、もういいや。とにかくこれからは絶対に余計なことを言わないで!わかった?」
    母「はいはい」

    その後もうっかりと忘れて、何度も何度も同じ目に遭うことになる。母も決して折れることなく何度も言い続けた。

    母「娘の足が長いから〰︎」

    私「キィィィィィ(怒)」

    母の天然エピソード(火事)
    そんな母が起こした大事件がある。
    ある夏の日中学生だった私は、部活が午後からなのをいいことに、部屋で惰眠を貪っていた。するとドアが勢いよく開いた。

    母「どうしよう、どうしよう」
    まだ寝ていたい気持ちが強く目を閉じていたら、母が私の体を揺さぶりだした。
    私「なに?うるさいんだけど」
    うんざりしながら起き上がると、怯えた様子の母と目が合った。
    私は直感した。なんかヤバいぞと。頭が一瞬で冴え周りを見ると、煙が部屋に充満していた。

    私「なに?なんなの。火事?」
    母は小さく頷いた。
    母「揚げ物をしてたら火が出て、消そうとしたんだけど」
    私は飛び起きて1階のキッチンに向かった。母も後を追ってきた。鍋と天井にある換気扇が火柱で繋がっていた。これはヤバい。
    私「とりあえず、お母さんは窓を開けて!煙を出さないと」
    私は母の寝室から布団を持ってきた。母はパニック状態で、テレビのリモコンを握りしめてテレビを消そうとしている。

    私「それ今じゃない!テレビなんてどうでもいいから」
    私の心の声「だめだ!この人は頼りにならない。私がやらなきゃ」

    急いで窓を開けて、鍋の上に布団を掛け、濡らしたタオルで換気扇の火を叩きながら消していった。正解だったかはわからないが、中学生が思いつくことはやった。おかげで火はなんとか消えてくれた。
    その後2階の窓を開けに行ったり、換気扇の外を確認しに行ってりしていると、緊急車両が勢揃いでやってきた。
    そう、パトカー、救急車、消防車だ。

    私「うそ・・でしょ」
    驚いて家に入り母を見ると、電話を持ったままオロオロしている。

    私の心の声「お前か!」
    私「パトカー、消防車に救急車まで来てるよ」
    母「消防に電話してつもりだったんたけど、警察だったみたい。とりあえず向かいますって言われたの」
    あの時母はパニック状態だった。警察の人は状況がわからず、緊急車両をすべて出動させたのだろうか?
    警察の人が入ってきて事情聴取される母。部活に行く時間になり、部屋に戻ろうとしている私の耳に衝撃的な言葉が。

    母「私は火をつけただけで、消したのは娘なんです」

    私「えっ?自供した!火をつけたって、放火魔かよ!」

    天然による的を得ない言動に、翻弄される警察の人にエールを送りながら、私は静かに階段を登った。

    こんな天然の母親だが、私が羨ましく思うところがある。
    それはとても運がいいこと。
    宝くじ大当たりとかはないが、日常の中で起こる些細なところで、運がいいなと思うことが何度もあった。
    それに比べ娘の私は運が悪い。ひねくれ者だからなのか、よこしまどころか、縦しま?斜めしま?な心のせいなのだろうか。
    大人になってから思うのは、母は男運すらいいのだ。父は50代で亡くなってしまったが、高学歴で性格も温厚。母を女目線で客観的に見ても、いい男を捕まえたものだと思う。
    本当に羨ましい。きっと神様は、天然が好きなんだろうと思うしかない。

    こんな天然母との暮らしの中で、私は見事なツッコミ体質になっていった。相手がボケまくるからしょうがない気もするが、私の持って生まれた気質も相まって、威圧系と言われるまでに成長したのだろう。
    これにはたったひとつだけメリットがある。それはモラハラ気質の男性は近づいて来ないということ。そういうタイプの男性は、言い返してこない女子を選ぶ。私のようなキレキレツッコミ女は、相手からすれば面倒な女扱いとなる。もちろん女性もしかり。面倒な女は、更に面倒な女とは仲良くなりたいとは思わないようだ。
    私を選んだ旦那様は、私のツッコミをワクワクした顔で待っているタイプ。
    人生は面白い。
    癒し系を目指したかった。でも合コンで威圧系と呼ばれた女は、需要(ボケ)と供給(ツッコミ)の関係を築き、ジャックナイフな人生を楽しんでいる。

     
     
    ついついツッコミを入れてしまう威圧系女子のアラフィフです。 私の人生を切り取って見てもらえたら嬉しいです。

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