メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

盞察する時間で、キミを埅぀

     星を芋る。倜空を芋䞊げる。


     それが僕らの合図だった。



     僕らが出䌚ったのは䞉幎前。母芪ずケンカをしお、家出をしおやろうず飛び出した倜だった。

     家出なんおいうずかっこよく聞こえるかもしれないけれど、䞭孊生の家出なんおたかが知れおいる。実際のずころは少し先の公園に行っただけの、ただの倜の散歩だ。いや、自転車に乗っお行ったから散歩ですらないのか。

     ずにかく。

     ケンカの勢いで飛び出したものの、行く圓おなんおなくお、結局公園のブランコで小さくゆらゆら揺れるしかなかった僕。正盎なずころ、ここからどうしたらいいのか、たったくわかっおいなかった。

     かず蚀っお、家に垰るのは癪だった。このたた垰っお母さんず顔を合わせるのは気たずすぎたし、「家出しおごめんなさい」なんお口が裂けおも蚀いたくなかった。だいたい、悪いのは母さんの方だず、本気で思っおいた。

     ケンカの原因は、今考えれば銬鹿げおいる。友達ずの䌚話䞭にスマホを取り䞊げられた。それが発端だった。

    「いい加枛やめない 明日からテストでしょ」から始たった、母さんの口うるさい小蚀。

     そんなこずは蚀われなくおも、僕自身が䞀番わかっおいた。だけど自分だけ匷制的に仲間の茪から抜けさせられたこずに、どうしおも我慢できなかった。

    「うるさいな 攟っおおけよ」

     そんな流れでスマホも持たず飛び出しお、行先は自転車で十五分の公園。なんお子どもじみおいたんだろう。たあ、実際に子どもだったわけだけれど。

     そのずきの僕は、母さんぞの怒りで満ちおいた。同時に、心配させおやろうずいう気持ちも溢れおいた。本圓、子どもだ。

     きっず今頃、スマホを取り䞊げたこずを埌悔しおいるに違いない。取り䞊げたばっかりに、今僕ず連絡が぀かなくお、どこぞ行ったか心配しおいるだろう。しかも勉匷させたかったはずの母さんの思惑は、完党に厩れ去っおいる。スマホを取り䞊げたりしなきゃ、少しくらい勉匷したかもしれないのに。䜕もかも裏目に出おいるじゃないか。ざたあみろ。

     ざっずそんな感じのこずを思っおいた。

     ずはいえ、䞉十分も暗い公園にひずりでいたら、少しず぀心现くなっおきおもいた。䜕床も蚀うけれど、その頃の僕は䞀人じゃどこぞも行けない、ただの子どもだった。

    「あヌあ。これからどうしようかなヌ」

     ひずりごちる。空を仰ぐず、そこには満倩の星空があった。

    「うわ。きれいかも」

     星空をたじたじず芋䞊げるなんお、たぶん初めおのこずだった。倜に出かけるこず自䜓がほずんどなかったし、あったずしおも芪が運転する車の䞭だ。そしお移動䞭はたいおいスマホしか芋おいない。

    「やば。吞い蟌たれそうだ」

    「わかる。ちょっず怖いよね」

    「うん。きれいだけど、怖い          っお、誰⁉」


     キミはにっこり笑った。



     あれから䞉幎が経っお、僕も少しは倧人になった、ず思う。将来の倢ずか蚀われるずよくわからないけど、興味のあるこずはいろいろある。その䞭でも特に研究したいず思っおいるのが、アむンシュタむンの提唱した盞察性理論だ。なんだか難しそうな蚀葉だけど、芁するに時間の進み方は同じじゃないっお話。

     ——もし呚りの時間が僕よりも速く進むのなら、キミに䌚いに行けるはずだから。


    「行っおきたヌす」

     玄関でスニヌカヌを履きながら、気もそぞろに倧声を出した。奥から母さんの「気を぀けおね」ずいう声が飛んでくるけれど、それには返事をせずに飛び出す。

     第二氎曜日の午埌八時。月に䞀床、僕はあの公園ぞ行く。母さんず父さんには倩文郚の掻動だず説明しおいる。高校に入っお、僕が倩文郚に入郚したこずは事実だ。倜に掻動がある日もある。けれど第二氎曜日だけは、嘘を぀いおいる。

     本圓のこずを蚀えないのは、埌ろ暗い気持ちがあるからじゃない。話したずころで信じおもらえないずいう確信があるからだ。䞡芪だけではなく、䞀番の芪友にだっお。

     自転車で十五分。公園のブランコに座る。

     星を芋る。倜空を芋䞊げる。

     よかった、今倜は晎れおいる。先月は雚が降っおいお、第二氎曜日の予定はなしになった。梅雚時期は難しい。ただ冬の方が可胜性がある。

    「い぀か倩気もコントロヌルできる時代が来るのかなぁ」

    「できるよ。そう遠くないうちに」

     隣に珟れたキミの答えに、僕は心の䞭の『やりたいこずリスト』に曞き加える——倩気のコントロヌル、ず。

    「あ、今やりたいこずリストを曎新したね」

     キミが笑っお、図星を突かれた僕は照れお無蚀になる。

    「それで䜕個目」

    「たぶん、十個目。でも  」

     キミず話をするようになっおから、この目で芋おみたいこずが増えた。たずえば、リアルに五感を感じられる仮想空間ずか、超高速な移動手段ずか、完党な自動運転ずか、そういうもの。僕がどうこうしなくおも、そのうち実珟されおいくだろうこずはわかっおいる。だから埅っおいればいい。

     だけどどうしおも、時代の流れを埅ちたくないものがある。僕の手で䞀日でも早く実珟したいものがある。

    「䞀番やりたいこずは決たっおる」

     きっずキミはそれが䜕かを知っおるから「ふヌん」ずしか蚀わないのだろう。だけどその暪顔が嬉しそうなこずが、僕は嬉しい。

    「君がそれを完成させるより早く、私が完成させるかもしれないけどね」

    「それもそうだね。じゃあそれを埅たせおもらおうかな」

     僕が倧袈裟に玍埗したふりをするず、キミは「やだ 頑匵っおよ」ず冗談っぜく怒ったふりをした。キミの手が僕の肩を叩く。けれど僕にその感觊はない。そこで僕らは無蚀になる。

    「  君ずいる時間の流れは速いのに、時代の流れはゆっくりだよね。困っちゃう」

     キミの声が寂しそうに響いた。

    「うん」

     僕はキミにだけ届くように小さく蚀葉を萜ずした。

     本圓は抱きしめられたらいいのだけれど、ホログラムのキミに觊れるこずはできなくお、それがひどくもどかしい。

     だからただ星空を芋䞊げる。

     キミがそれを——過去ぞ遡るタむムマシヌンを完成させるこずが、どんなに難しいこずなのか。僕もキミも理解しおいる。理論䞊、未来ぞ行くこずはできおも、過去ぞ戻るこずはより困難を䌎う。

     だから僕が未来ぞ、キミの元ぞ行くしかない。そのための盞察性理論。そのためのタむムマシヌン。こればっかりは、い぀かできる未来を埅っおはいられない。

     早くキミに觊れたいから。

    「倧䞈倫だよ。キミが星の光を䜿っお、こうしおここに像を結ぶこず自䜓、今の時代じゃ奇跡なんだ。だから次は僕が、奇跡みたいなスピヌドでタむムマシヌンを完成させるよ」

     手を繋ぐ。感觊も䜓枩も感じないけれど、キミがいる心の枩床だけは、たしかにそこに存圚しおいる。

    「埅っおる。だから早く䌚いに来お」

     キミの手を握っおいるはずの手に力を蟌めた。䞀瞬だけそこに質量を感じたような気がしたのは、瞬く星が莈っおくれた奇跡のひず぀なのだろうか。

     
     
     
    創䜜小説のアカりント。 読んだり曞いたりしたす。 日垞を綎ったアカりント「なおの瞁偎」 ⇒ https://note.com/cheeky_canna9534

    あなたぞのおすすめ