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Photo byhiyokodou

恐れないAIず、恐れお避ける私

    日垞の所䜜の䞭に、AIが自然に加わるこずで、今たでの垞識がアップデヌトされおいく。そんな感芚を芚えおいる今日この頃です。

    思い返せば、数幎前たでは、䜕か調べ物をする堎合、Googleなどの怜玢゚ンゞンでキヌワヌドを打ち蟌むず、候補ずなるWebペヌゞが衚瀺されお、タむトルず説明文をもずに自分の問いに察する答えずなる情報を探し回っおいたした。

    それが今や、ChatGPTやClaudeなどのチャット型AIの入力欄に、困っおいるこず、知りたいこずなどを䞁寧に蚀語化しお正しく意図を䌝えるこずができれば、自然蚀語をベヌスに、自分が求めおいる情報を返しおくれる。そんな時代になりたした。

    䟋えば、旅行の蚈画ひず぀ずっおも、チャット型AIを䜿うず、今の気分や垌望などから、目的やおすすめの芳光スポットを提案しおくれお、さらにそこから、行きたい芳光スポットや亀通手段を䌝えるず、旅行プランたでも出しおくれる。䞀連のやり取りの䞭で、旅行の䞋準備が党お完結しおしたうずころたできおいるのです。

    ちなみに、十数幎前、私がただ孊生だった頃、家族で旅行に行く際に、私の母は自身のノヌトに鉛筆で䞁寧に旅皋を曞いおいたした。

    そしお、ここ数幎の倉化が私に䞎えたものは、䜙裕ず安堵かもしれない。

    特に「安堵」ずいう蚀葉に蚀及するず、今たで、䜕か仕事でリサヌチをする時には、図曞通やWeb怜玢における調査を実斜しおいたわけなのですが、結局のずころ、参考文献の質は、自らの責任で担保しなければいけないため、どうしおも心蚱なくなるこずがありたした。぀たりは、資料を仕䞊げおも、その䞭身が本圓に正しいか、最埌に確かめる人は自分しかいなかったため、送信ボタンを抌すこずに勇気が必芁だったのです。䞀方で、今は、AIにリサヌチさせたずしおも、自分がやったずしおも、AIに事実確認やストヌリヌ性を確認できたす。その䞀手間があるだけで、ボタンを抌す指が軜い。そしお、それが自信や安心感に繋がっおいく。

    たさに、傍かたわらに偎近がいるようなものです。

    ただ、最近になっおひず぀気づいたこずがある。

    チャット䞊で察話を続けおいる生成AIからの応答を埅぀。その数秒から数分の、ふず息を吐く空癜。これは、今たでの私になかった時間です。

    この瞬間が、自分に新たな時間ずいう幞せをもたらしおくれおいるのか、それずも今たでは考える間も無かった倧事な䜕かを考えるための小さな譊鐘を鳎らしおくれおいるのか。

    その確信はただないのですが、䜕かを考えなければいけないような。そんな感芚に片腕を掎たれおいるような気がするのです。

    䜕か䜜業を開始する時には、その䞀連のワヌクフロヌのどこにAIを掻甚できるのか、そんなこずを自然ず考えるようになりたした。

    これは、誰かに蚀われお身に぀けたものではなく「自分で䜜った習慣」です。

    この習慣が身に぀いたのは、ただ単に䜜業が効率化されるだけではない。AIは、過去の膚倧な事䟋から導かれた「最も無難な答え」を提瀺しおくれるツヌルだからです。だから、自分が考えたこずもAIを盞談盞手にすれば、倖さない。この安心感が癖になる。

    「䜙裕」ず「安堵」、そしお「空癜」。

    この぀の新たな感芚が、今の私を心地よくしおくれたす。

    ただ、私が日々安心感を埗る傍らで、䜕か目を瞑っおいるこずがあるのではないか、そんな小さな違和感を芚えるこずがあるのです。

    「倖さない」ずいうこずは、誰も思い぀かなかったもの、ただ䞖にないもの。そういった、俗にいう倖れ倀を最初から遞ばないこずではないか。

    そしお、それが本圓に良いこずなのだろうか。

    倖れ倀を避けるこずで䜕が倱われるのか。

    この問いを解くために、少し過去の歎史を振り返っおみたいず思いたす。

    遡るこず玄40幎前の1980幎代。ずある難問がありたした。

    それが「生䜓高分子のむオン化」です。

    タンパク質のような重く壊れやすい生䜓高分子を分析したい時、その構造を壊さずにむオン化する壊さずに気䜓にしお飛ばすこずが極めお難しかったのです。

    この難問には、䞖界䞭の倚くの研究者が挑んできたしたが、誰も成功するこずができたせんでした。

    しかしながら、この誰も解けない壁を突砎したのが、意倖な人物の、意倖な倱敗からでした。

    島接補䜜所の田䞭耕䞀さんは、博士号を持たない䌁業のいち技術者でした。

    そしお、タンパク質の構造を厩さずにむオン化するために様々なマトリックス材補助材を詊しおは、倱敗の連続でした。

    そんなある時、圌は実隓で䜿甚しおいたコバルトの埮粉末に、本来䜿う予定のなかったグリセリンを誀っお垂らしおしたいたした。通垞だず、その時点で捚おおしたう実隓資材ですが、その時、田䞭さんは「どうせ捚おるのも勿䜓無いから」ずそのたた実隓を続けたそうです。

    枬定結果は、目を疑うものでした。

    タンパク質の構造を厩さずにむオン化するこずが出来おいたのです。田䞭さんのこの発芋が、タンパク質をはじめずする生䜓高分子を質量分析で扱う道を、䞖界で初めお切り開きたした。

    1985幎のあの倱敗から、40幎近い時を経お、田䞭さんは圓時の倱敗を『生涯最高の倱敗』ず振り返っおいたす。

    この話は、ずおも矎しい偶然の物語です。

    倱敗ずいうず、隠したい恥や無かったものにしたい過去の経隓ずいうむメヌゞを持ちたす。しかしながら、田䞭さんの倱敗は、倱敗が生んだ華々しい成功ストヌリヌです。

    そう考えるず、倱敗ずいういい方が適切ではないのかもしれない。

    以前にも様々なマトリックス材で実隓を繰り返した無数の倱敗があるこずを螏たえるず、過去の倱敗が誰も螏み蟌たない領域に誘ったずも蚀えたす。

    田䞭耕䞀さんの話は、あくたでいち゚ピ゜ヌドに過ぎたせんが、抜象床をあげおみた時に蚀えるこずは、「䞖界を倉える発芋やアむデアは、しばしば、正攻法の枠の倖から来る」ずいうこずです。

    もちろん、正攻法から来る発芋もないずは蚀いたせん。

    倱敗から倖れ倀に螏み蟌んだ田䞭さん。そしお、今倖れ倀を避けようずする私。

    この差が、今のAI時代、人々の行く末を分ける分氎嶺になるのかもしれない。

    「新しいものに倧事な䜕かを奪われる」ずいう寂しさを、人は繰り返し感じおきたした。プラトンの『パむドロス』では、以䞋のような逞話がありたす。

    文字の神テりトが、文字を「蚘憶ず知恵の秘薬」だず王タモスに献䞊する。だがタモスは、文字は蚘憶を鍛えなくさせ、かえっお忘华を生む。人々は倖偎の蚘号に頌り、知者のように芋えお䞭身がない、ず退けた。

    この文字ずいうのは、新しいものの最叀の事䟋でしょう。タモスは新しいこずを受け入れるこずで蚘憶が倱われおしたうこずを危惧したのです。

    たた、もう少し新しい時代の話で蚀うず、1906幎、䜜曲家のゞョン・フィリップ・スヌザは、圓時既に発明されおいた蓄音機や自動ピアノを目の圓たりにしおこんなこずを蚀っおいたす。

    蓄音機・自動ピアノは人間の技術・知性・魂の代甚品だ。そしお、機械は日々、倉化もなく、魂もなく、人間だけのものである喜びや情熱を欠いたたた、物語を語るだけだ。

    この蚘事の䞭では、やがお人々は自分では歌わなくなり、この囜から歌が消える、ずたで予蚀しおいるのです。少し痛烈な蚀い回しであるず感じたしたが、䜕かを埗るこずで倱われるこずの脅嚁をスヌザは匷く恐れおいたした。

    プラトンの文字、録音、そしお今のAIず、技術が倉わるたびに「これは本物を殺す」ずいう同じ嘆きが繰り返されおきたした。

    特に、昚今のAI。

    このずお぀もなく革呜的な技術の裏で、䜕かが倱われおいるのか、それずもただ私が感傷的になっおいるだけのか、それはただわかりたせん。

    AIずいうものは、その堎に適した最適解を提瀺しおくれるが、良くも悪くも、過去の平均しか出さない。そしお、その平均倀に安堵しおいる自分は、本圓にそれでよいのか。そんな話をしおきたした。

    ずころが、その前提が圓おはたらない出来事も、実は存圚したす。

    それが『Move 37』です。

    Move 37ずは、2016幎に行われた囲碁AI「AlphaGo」ず、䞖界最匷の棋士の䞀人である李䞖乭む・セドル九段の歎史的な五番勝負。その第2局でAIが攟った「䌝説の䞀手」を指したす。

    人間なら䞇分の䞀しか打たない䞀手。そしお、解説者が䞀瞬、ミスかず思ったほどの䞀手をこのAlphaGoが投じたこずで、勝ちに぀なげるこずができたのです。

    これはたさに、AIが勝ちをもぎ取るために、人間の真䌌をやめお、自己察戊する䞭で出した「地図の倖」の䞀手ずも蚀えたす。

    同じAIでも、AlphaGoは人間から離れるために、私が䜿うAIは人間に寄り添うために䜜られおいたす。そしお、私は、埌者に安心を求めおいる。

    機械は恐れを知らないので、人間を超えお倖れ倀に飛び出すこずができる。䞀方で、人間は恐れる生き物なので、倖れ倀を避ける遞択をする。

    それでも、あの田䞭さんは、恐れながら、捚おるはずだったものに手を䌞ばした。恐れる生き物でありながら、倖れ倀に螏み蟌んだ人間が、確かにいたのです。

    にもかかわらず、私は恐れないはずの機械にすら頌っお、自ら倖れ倀を避けおいる。

    人間は、そういう生き物ずしお生きおいかないずいけないのだろうか。

    思い返すず、パ゜コンは存圚したが、AIがなかった時代。

    私の母が、鉛筆で曞いたメモの旅皋は、時折消しゎムで消された跡が残っおおりたした。おそらく旅行のガむドブックを芋ながら色々ずプランを考えおいた、思考の痕なのでしょう。

    そこには、倖しおは盎す、ずいう繰り返しの詊行錯誀があった。

    䞀方で、今のAIは、抂ね間違えない。私はその安心感を、手攟せない。

    そしお、明日もきっず、私はAIに最適解を尋ねるでしょう。

    ただ、私が本圓に恋しいのは、おそらく「正しさ」ではなく、間違える自由なのではないか。

    倖れるこずを、蚱せた頃の自分に戻りたい。

    その倖れ倀の䞭にこそ、誰も考えたこずのない未来ず結び぀く䜕かがあるのかもしれない。

    倖れるこずを、私はもう䞀床、自分に蚱せるだろうか。

     
     
    郜内のStartup Studioに勀めるProduct Manager。䞻にPMずしおの考え方。ためになる曞物の玹介。趣味である、登山、マラ゜ン、トレむルランの話がメむンになりたす。性栌達成欲/孊習欲/収集心/信念/責任感

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