
【第8話-What-ポートフォリオ理論】
12話完結 - 新社会人向け投資歴10年の実用的なWhy-What-How
3ヶ月で納得して自信持って株式投資を始められるロードマップ
【結論】
Q:リスクを取らずにリターンだけ得ることはできないの?
A:できない。でもリスクを下げながらリターンを上げることはできる。
ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツの「現代ポートフォリオ理論」、そしてそれを、36年間かけて証明した世界最大級の大学基金の事例を紹介しよう。
【説明:現代ポートフォリオ理論】
1952年、ハリー・マーコウィッツが「現代ポートフォリオ理論」を発表した。後にノーベル経済学賞を受賞。
リスクとリターンは比例関係にあると思われがちだけど、投資の世界においてそうでもない。
基本概念として:
1.値動きの傾向が異なる(相関係数が低い)複数の資産を組み合わせることで、一方の損失をもう一方でカバーし、全体のリスクを軽減する。
2.リスクとリターンのバランスをグラフ化した際、同じリスクで得られる最大の期待リターンを結んだ曲線を「効率的フロンティア」と呼ぶ。この線上から自身の「リスク許容度(どれくらいの損失に耐えられるか)」に合わせて最適な資産配分(ポートフォリオ)を決定する。
3.つまり、リスクを下げてもリターンは下がらない。数学的に、そういう資産配分の仕方が存在する。すごくない?
グラフで見るとこうなる:

4.そして更に驚きなのが、ポートフォリオ全体のリターンが、中身それぞれ100%保有するリターンを上回る、「1+1=3」のフリーランチ*が存在する。
*「分散投資は、投資における唯一のフリーランチである。」
一例として:
S&P500連動ETFと新興国株式指数連動ETFを、「80%:20%」の割合で、1988年から毎年年初に1200ドルを積み立てる、そして毎年年末にまた「80%:20%」になるようにリバランスする=ポートフォリオA。
これを2025年まで続けた場合、AがS&P500単体100%と新興国株式単体100%を両方とも上回るリターンを出す期間が存在する。2003-2004、2014-2020の合計9年間。
その理由としては、新興国が爆発した年に、低迷していた米国株を着々と仕込んでいる点にある。逆も然り。
*複数資産の相関係数が0.6以下の場合、リバランスによって有意なリターンを生み出すことが証明されている。
*新興国株式を推奨しているわけではない。相関が高いとされる同じ株式の中でもこういったポートフォリオは存在することを伝えたい。

【事例:イェール大学基金】
デービッド・スウェンセンは1985年にイェール大学の最高投資責任者(CIO)に就任した。
当時のイェール基金は13億ドル。運用方針は当時の標準的な60/40ポートフォリオ(株式60%、債券40%)だった。
スウェンセン氏はマーコウィッツの理論を徹底的に応用した。
「相関の低い資産を組み合わせれば、リスクを下げながらリターンを上げられる」という原理を、実際の運用に実装した。
具体的には:
外部マネージャーへの委託:自社チームで直接運用するのではなく、各資産クラスにおいて世界トップクラスに優秀な外部の専門家(ファンド)に徹底的に運用を委託する。
高い比率のエクイティ資産:長期的なリターンが最も高いとされる株式や非上場企業の持分などのエクイティ類資産に、全体の約75%を配分している。
未公開株への注力:ベンチャーキャピタル(VC)やレバレッジド・バイアウト(LBO、PEファンド)など、公開市場よりも価格の歪みがあり超過リターンを狙いやすい未公開株市場に40%〜50%を投資している。
市場予測の排除:常にフルインベストメント状態を維持し、市場の底値や天井を予測するタイミング投資を完全に放棄している。時間を味方につけて複利の効果を最大化させている。
結果、スウェンセン氏が退任する2021年までの36年間、年率リターンが13.7%、基金総額は13億ドルから423億ドル超に成長した。
(改めてまた複利のパワーに刮目せよ。笑)
同時期のS&P500は年率約11-11.5%
同期間の平均的な大学基金は約10%
この「イェール・モデル」は、ビル・ゲイツやジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグなどの超富裕層のファミリーオフィス、さらにはカナダ年金(CPPIB)やシンガポール政府系ファンド(GIC)など、投資の最頂点にいる機関投資家の標準モデルとなっている。
【僕たちはどう応用するのか】
「1+1=3」のフリーランチポートフォリオを組むことは難しい。
バックテストをやりたい場合、昔はPythonを使って地道にバックテストしかできなかったが、今やAIですぐできる(もちろん答えが違う時もまだある)。
これは興味がある人だけ色々試してみればいいと思う。
僕は平気で一日中色んな資産でポートフォリオのバックテストをやってる。笑
でも皆さんにとって、このフリーランチポートフォリオを見つける重要度は、現時点で低い。
今回最も伝えたいなのは、資産運用において「リスクを下げてもリターンが下がらないようなポートフォリオが存在する」こと。
一定資産(人によっては5000万、1億、10億)まで、最もリターンが高い株式の比重を高くキープすることが最適解。
ただ株式投資は時にITバブルやリーマン・ショック時のように、とんでもないドローダウンをする。
その見込みドローダウンが自分の許容範囲を超えるシナリオが見えた時、ポートフォリオ理論を思い出して、他の資産クラスや指数と相関性が低い株式を組み入れるタイミングになったと、思い出してほしい。
「一番リターンを出せるのがS&P500だから、ずっとS&P500を100%買い続ける」と判断するのではなく、
「今この瞬間、総資産500万が40%ドローダウンしても損するのが200万だけだから、そうなった場合逆に貯金から買うチャンスになる、なのでS&P500を100%買う」として判断するように。
逆に「1億が30%ドローダウンするなら3000万円が消える…ちょっとリスク取りすぎているな、ドローダウンに耐えうる株、債券や投資用の不動産を買おう。」と判断できるなら、それも正解。
【まとめ】
【WHAT編】の全5話が完結した。
不動産や債券と比較して、株式投資のリターンも総合力も一番高いことを理解した。
そして米国株が強い理由として、米国覇権や米国企業の圧倒的な現金創出力、株主還元マインドに起因することが分かった。
指数ETFは生存バイアスを味方にする究極のトレンドフォローマシーンであることを確認した。
市場平均に勝つ最も再現性の高い手段は個別株のバリュー投資、でも膨大な時間と努力が必要。
資産額が増え、株式投資のドローダウンが自分の許容範囲を超えそうな時、守りとして相関係数が低い株式や、他の資産クラスを追加しポートフォリオのリスクを下げながらリターンをキープできる。
実にきれいなロジック。笑
【アクション】
AIと相談しながら、米国株、世界株式が過去経験した大きなドローダウンを数値化し、その原因を突き詰めて、その頃の市場環境を1つずつ理解しよう。
そしたらこれから起きうるドローダウンをある程度想定できる。
その額は自分にとって許容範囲内なら、今すぐ証券口座を開設しよう。
次回は7月8日公開【第9話-How-NISAとiDeCo】なぜ使う?何を買う?どう売る?(*ちょっと日本に一時帰国するので、1ヶ月満喫します。)

【僕の話を少し】
…前略
2022年は、リーマンショック以来最悪のパフォーマンスとなった年。
S&P500が-19.4%、NASDAQが-33.1%。
原因は歴史的なインフレ、FRBによる急速な利上げ、ロシアによるウクライナ侵攻。
(こうやって見ると2026年6月現在、マクロ環境は幾分ヘルシー。笑)
しかし日本人にとってそこまでのダメージがなかった。
なぜなら円安ドル高が進み、円ベースだと下落幅が抑えられていたから。
S&P500が-7.09%、NASDAQが-23.16%(円ベース、1ドル115円→131円)
僕の結果は+3.06%(円ベース)、ドルだともちろんマイナス(数値は記録していない)。
履歴を見てみると2021-2022年に新規購入、追加購入していたV、MA、BRK.B、VHTの保有が一部下落を吸収していた。
2020-2021のハイテク株の加熱は今でも覚えている、ZMとかSHOPとか。
持っていた個別株も大体メガテックでPERが見る見る拡大していった。
このままではいずれ食わうという危機感から、V、MA、BRK.B、VHTを購入し、2022年にFRBが利上げする時にはVHTをもっと増やした。
利上げする=ヘルスケア、エネルギー、公益事業、生活必需品に資金が移動する、というのは、2020-2021年のインプット量で理解できていた。
でも当時はエネルギー、公益事業、生活必需品が上がるイメージがつかなかったので、ヘルスケアセクターETFのVHTと、金融の中でもインフレ・利上げに強いV、MA、BRK.Bを購入した。
(その後エネルギーセクターの急騰を経て、次の年からエネルギーセクターにも注視するようになったのは、また別の話)
こうやって2016-2022年まで振り返ってみると運の良さも結構ある。
また次回で。
続く…
※本コンテンツは情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任においてお願いします。