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【第䞀章 了】連茉小説「オボステルラ」 19話「ゎナンの人生」4



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登堎人物


 芏則的に振動を感じる。倧きな背䞭の枩もり。
なんだっけ。そうだ、お屋敷様のずころで、お腹いっぱいご飯を食べたんだった。矎味しかったあのマルルの実。ずおも甘くお、食べたこずのない味だった。そのあずリカルドがいろいろ調べごずを始めたから、退屈で、うずうず眠っおしたっお。リカルドが、あの倧きな背䞭に俺を背負っお、ゆっくり歩いおくれおいるんだ 。歩く床に感じる振動が、ゆりかごのようで、心地いい 。



  ず、はっずゎナンは目を芚たした。
目の前にあったのは黒髪ではなく、くせっ毛の金髪だった。

「 アドルフ 兄ちゃん 」
「 ゎナン、起きたか。もうちょっずで着くから、ただ䌑んでな」

 そう蚀っお、息を切らしながらゎナンを背負っお歩いおいる。リカルドよりは小さく、痩せ现った背䞭。でも、どこか力匷い。今日は月が明るく、2人の進む道を皓々ず照らしおいる。




「兄ちゃん、俺、歩くよ」
「 いいから。俺が背負いたいんだよ。お前、いた、軜いからなあ。倧䞈倫だよ」

 そう蚀っお、ふう、ず息を吐きながら歩き続ける。よく状況がわからないゎナンは、そのたた䜓をアドルフの背䞭に委ねた。重みをアドルフはじっくりず感じる。

 そうしお着いたのは、お屋敷だった。門から䞭には入らず、屋敷の裏手に回る。そこには、あの無愛想な壮幎の門番がたいた぀を手に立っおいた。
「 よし、着いたぞ」
「 」
アドルフはゎナンを降ろすず、門番の男性に頭を䞋げた。
「お埅たせしたした、よろしくお願いしたす。ゎナンには今から状況を説明するので、少しお埅ちいただけたすか」
男性は頷く。アドルフは斜めがけに持っおいたバッグをゎナンの䜓にくくり぀け、かがんでゎナンを目線を合わせ、䞡肩に手を眮いた。

「お屋敷様はね、もうこの地を離れるそうだよ。この囜にはほかに居堎所がないから、隣の゚ルラン垝囜に亡呜するそうだ。今倜こっそり、銬車で人も荷物も䞀気に運ぶ。倜逃げ、っおや぀だな。そんなコッ゜リ逃げなくおも、いいのにな」

 ふふっず笑うアドルフ。屋敷の裏手には、4぀の銬車が付けられおいる。䞀番前の劙に豪華な装食の銬車に、恐らくナヌトリアが乗るのだろう。
「銬車  銬 、これが 」
銬ずいう生き物すら初めお芋るゎナンは、䞀䜓なぜ自分がここに居るのか、ただわからない。
「 でね、この方にお願いしお、荷物を運ぶ荷銬車の隅っこに、ゎナンを乗せおいっおもらうこずにしたんだ。荷銬車3぀ぶんの荷物があるそうだから、现っこい人が1人くらい増えおも問題ないんだっお」
肩に眮かれた手に、少しだけ力がこもった。

「 ゎナン。今倜この村を出お、リカルドさんを远うんだ」

「 え 」
「 この村は、今はずおも厳しい。兄ちゃん達は倧人だからただ我慢できるけど、ゎナンはこのたたじゃ 、死んでしたうかも、しれない 。ミィみたいに」
「 俺、だけ  俺、倧䞈倫だよ 。氎も運ぶし、食べ物も、探すから」
「ゎナン。いいんだ。お前は、村から出るんだ 」
でも、きっず、この村を出お、もっずいろんなこずを知りたいのはアドルフだ。リカルドずあんなに楜しそうに、ただ芋ぬ䞖界のいろんな話をしおいた。
「他の兄ちゃん達が 、家族だからダメだっお、ここから離れたらダメだっお、蚀っおたのに」
「それは俺が䜕ずかごたかすから、気にするな。倧䞈倫、取っ組み合いはかなわないけど、口げんかだけはい぀も兄貎達に負けないだろう、俺は」
「 でも 」
ゎナンは目を芋開いお、アドルフを芋぀めた。
「 じゃあ、兄ちゃんも䞀緒に行こうよ。今ここで、䞀緒に銬車に乗ればいいじゃないか 」
そう蚀われお、アドルフの衚情が䞀瞬だけ動いた。でも、すぐに穏やかな笑顔にもどる。

「 俺はいいんだよ。ゎナン。これからは、お前の人生だから」

アドルフはポンポン、ずなだめるように肩を叩く。

「  じゃあ、兄ちゃんからのお願いだ。リカルドさんず䞀緒に卵を探しお、卵を芋぀けたら、この村に雚が降るよう、以前のような暮らしができるよう、お願いをしおくれ。それができるのは、この村ではお前だけだから。な」

それを聞いお、ゎナンの顔が歪む。
だっお、でも、それを、その卵の蚀い䌝えを、この村で最も信じおいない・・・・・・のがアドルフなのに。
「 兄ちゃん  」
「 頌むよ、な 」
 そう蚀っお、ズボンのポケットから䞀枚の封曞を枡す。
「リカルドさんに䌚えたら、この手玙を枡しお。あず、できれば旅の間はこために、俺宛に手玙を曞いおくれるず嬉しいな。䜕でもいいんだ。どこに行ったずか、誰ず䌚ったずか、䜓調がどうだずか 。どんな些现なこずでもいいから。日蚘を぀けるのもいいかもしれない」
ゎナンは頷くこずも、蚀葉を発するこずもできない。
「手玙の曞き方はわかるな 送り方は 、リカルドさんに教えおもらっお。うち宛じゃ兄貎達に読たれるず面倒だから 、ラむラさん宛がいい。オズワルド兄ぃの元奥さんの。あの人なら、倧䞈倫だ」
そう蚀っお、ゎナンの頭を撫でるアドルフ。

「 リカルドさんは、ここからずヌっず南にある『ストネの街』に、拠点を぀持っおいるず蚀っおいた。鳥が南に飛んで行ったから、おそらくその街を目指すだろうず 。『ストネの街』、だぞ」
 念を抌しお䌝える。
「この銬車はね、荒野をずっず南䞋しお途䞭にある宿堎町から西に向かっお囜を出るそうだ。そこたでは銬車で運んでもらっお、そこからは自分の足で街を目指すんだ。真南に向かえばいい。昌は倪陜で方角を芋ながら、倜は圌方星が出る方向を目印に。䜕日もかかるけど、テントなんかの簡単な道具は、門番さんが甚意しおくれおいるっお」

 ゎナンはただ、苊しい顔で肩をふるわせるばかりで、蚀葉も出せず、頷くこずもできない。アドルフはテキパキず、必芁なこずを次々䌝える。

「 はい、これがお金だ。俺のぞそくりだよ。䜿い方は教えたこずあるよな。盗たれないよう、䜿う時以倖は倧事に隠しお持っおおくんだぞ」

「  」

「野営の仕方はリカルドさんに習ったんだったな。宿の泊たり方は、道䞭で門番さんに教えおもらっお。他所の土地は氎が合わないかも知れないから、お腹を壊さないよう泚意しお。もしかしたら郜䌚の空気が悪くお病気を拟うかもしれない。無理はするなよ。街は銬車が走り回っおいるらしいから蜢かれないよう呚りをよく芋お歩いお。あず、劙においしい話を持っおくる倧人には十分譊戒するんだ。モノを買うずきは蚀い倀で買わずに䞀床倀䞋げ亀枉をしおみお。お酒はただお前には早いから飲むなよ。甘いものの食べ過ぎにも気を぀けお。歯もよく磚いお、それず、あずは、悪い女にひっかからないよう 」


 オホン、ず門番の男性が咳払いをする。出発が迫っおいるようだ。アドルフは名残惜しそうにゎナンの䜓をギュッず抱いた。
「 ゎナン、さあ、荷銬車に乗っお」
「 兄ちゃん、俺、俺は  」
「いいんだ、さあ、乗っお 」
 門番の男性は、荷銬車の最埌尟の車䞡の幕を䞊げた。様々な荷物のすき間に、ゎナンが暪になれるようふかふかの垃団が敷いおある。脇には氎ず食糧も備えおある。この男性が敎えおくれたらしい。
「これは 、ふふ、家で寝るよりも快適そうじゃないか、ゎナン」
アドルフはそう笑う。そしお「本圓に、ありがずうございたす」ず男性に頭を䞋げる。口数少ないその男性は、「さ 」ず優しくゎナンを荷銬車ぞず導く。

 今回、ナヌトリアの倜逃げの兆候を感じたアドルフは、ダメ元でこの匷面の男性に話を持ちかけおみたのだが、䜕故か快く応じおくれ、積極的に準備や協力をしおくれたのが意倖だった。

 誰も知らないこずだが、実はこの男性は故郷に、ゎナンず同じ幎頃の息子を残しおいる。
もう䜕幎も䌚えおおらず、今回の亡呜に付き埓うこずでさらに䌚えなくなるだろう。屋敷を蚪れたゎナンに自らの息子を投圱し、その姿が日々匱っおいくのを密かに心配し芋守っおいた。ゎナンが気に入っおいたマルルの実を密かに発泚しおいたのもこの男性だったのだが、無口な圌のそんな内情を、この堎にいる人間が知る術はなかった。


「ナヌトリアには、ゎナンが乗っおいるこずは内緒だそうだけど、おそらく圌が銬車を降りるこずはほずんどないだろうから、倧䞈倫だろうっお」
「 兄ちゃん  」
荷銬車から顔を出し、アドルフに手を䌞ばす。前方で銬がいななく声が聞こえた。出発のようだ。
「兄ちゃん、ごめん、ごめん 」
「䜕で謝るんだ 」
アドルフがクスッず笑った。




「ゎナン、元気で 」

すぐに、前方の銬車から順番に銬車が進み始めた。ゎナンが乗る銬車も、門番の男性が埡者ずなっお動き始める。


 ただ深い宵闇の䞭。
ゎナンは走り始めた銬車の埌ろの幕を少し䞊げお、アドルフが立぀方向を芋おいた。圌が持っおいるたいた぀の明かりはみるみる小さくなり、そしおすぐに芋えなくなった。
倧地は挆黒の闇。ただ月が、星々が、爛々ずその明かりを無造䜜に萜ずしおいる。
車列の進路は南、圌方星が茝く方向ぞず、進む。

 ごめん、兄ちゃん、ありがずう 、ごめん 

 懐に忍ばせおあったバンダナをギュッず握っお、もう䜕も芋えなくなった暗闇を、ゎナンはずっずずっず眺めおいた。

〈第䞀章「鳥が来た」終わり〉



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