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Photo byk_jack_norio

とある一部屋のお話|ショートショート

    なー

    わたしの内面にある、ある部屋のお話です。
    ***

    ひとの声を受け取った耳から、体内に巡りだす熱。その熱があまりにわたしを火照らせたときに、わたしはその部屋にたどり着きます。

    意図してその部屋に行くのではなく、いつの間にか、そこに立っている自分がいます。

    ドアはありません。壁もありません。
    周囲に広がるのは白い空間。

    ぽぅっと、白い円柱型の物体が現れます。
    木の幹のようにも、柱のようにも塔にも見えます。表面は陶器のように艷やかです。
    触れてはその美しさが失われてしまうのではないかと思い、わたしは一定の距離を保ちます。

    円柱型の物体。ここでは、幹と呼びましょうか。

    周りを円周上に歩くと、1人の幼い男の子が幹の根元を形を確かめるように優しくさすっています。

    その表面は時々、ひび割れて欠片を落とし、砂のようにさらさらと崩れました。
    彼はそれらを拾い上げては、撫でつけて元の形にと蘇らせる。

    わたしは、彼に話しかけることはしません。
    ことばがなくても通じ合っている、とどこかで確信しているのです。


    ***
    わたしがこの部屋で認識している、もう1人がいます。
    10代前半くらいの男の子です。彼は、幹の根元の男の子にはいつも気づかぬ様子。
    いつも警戒するように幹の周りを見渡しています。時折、幹の伸びる先を見上げたり、こちらと目を合わせたりするのです。
    彼が抱いているのは恐れや不安であって、自分を守ろうとしているのではと思っています。そして、その感情はわたしの中で生まれたもの。彼は、感情を掴みとり、手の中に握りしめて、口に詰め込む。
    ゴクンと飲み込んで、また見回りに歩んでいく。

    飲み込んだ感情は苦いでしょう?身体の中で蠢くでしょう?わたしは、彼を優しく抱きしめたい。
    一方で、彼がわたしを受け入れてしまえば、わたしを形作る膜がパラパラと干からびて剥けていくイメージが襲ってくるのです。

    ***
    幹に目線を戻すと、幼い男の子が幹に耳を当てていました。目を閉じて、重心を幹にあずけて。

    その安らぐような表情。何が聞こえているのでしょうか。

    男の子は、微かに笑みをこぼします。
    「血潮が巡っているんだ。」
    わたしではなく、その幹に返事をするように。
    ***
    意識は、ふとした時に部屋から実世界に戻ります。
    空想か心象世界かわかりませんが、そこがわたしにとって大切な場所であることは間違いありません。





     
     
     

    なー

     
     
    透明を可視化する文章が書けますように。 ゆるゆると生きていくための備忘録をマイペースに投稿。 暮らしの中で感じたことを綴ります。 🌿ショートショートをマガジンにまとめました。https://note.com/nanana_000/m/m7b5ce85a321c