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やさしい朝ごはん

    朝、AM5:00 前。

    一瞬トイレに目覚めた祖母の音に、わたしも目覚めて
    また、ベッドに戻っていくのを確認する。
    わたしも続けて同じ導線で動くと
    その音に反応して、部屋から 声が聞こえる。

    『あなた、寒いから暖房付けなさいよ』
    風邪ひいたら元も子もないわ、と、まだ寝ぼけた声。
    「はぁい」と答えて、わたしは一人、そっと起き出した。


    早起きの目的は、朝ごはんの支度。
    用意するのは、誰にでもできるサラダに、オープンサンド。

    サラダは、信頼のおけるマルシェの出店者さんから購入し
    味もやさしさも唯一無二。
    バツグンに上等。
    だから、おいしく食べたい、食べて欲しい。

    祖母がまたベッドに寝静まったのを確認して、
    ヒソヒソと準備をはじめた。


    ////

    2年前、私はマルシェのスタッフを始めた。
    当時、勤めた会社で、メンタルがズタボロになった後だった。

    ズタボロ期間の1年弱、自信も自己肯定感も、
    底無し沼だった。
    辛いを超えて、やる気なんて少しも湧いてこない。
    と言い切っていた、悲劇のヒロイン真っ只中で
    当時付き合っていた彼にも申し訳ないくらい
    救いようがない、という態度だった気がする。

    時間はかかったが、ある日から
    「いつでも自分の生き方を選択できるようにしたい」
    と思った。

    そのためには

    「やってみたい」
    「できそう」
    「たのしそう」

    と思える仕事が必要で、そんな中、
    巡り合ったのが "マルシェ" だった。


    ささやかで、当たり前ではない しあわせ 

    メンタル ズタボロの理由は「他人(ひと)」だった。
    だから「人と関わるのが怖い」と泣いていた。でも裏を返せば…?

    その、心の声は
    「本当は、もっと人と仲良くなりたい」
    「人と心を通わせたい」
    「他人と 心からの対話がしたい」
    だ。

    時間がかかったとしても、沼の外に出て
    これまでと別の人と関わり
    わたしが「楽」に取り組めて、気持ちが「軽」くできることを
    これからやっていこう、と思った。動いた。


    マルシェのスタッフや出店者さんは、とてもやさしかった。
    緊張しても、声をかけて仲良くなったもん勝ちだった。

    .

    好きなこと
    嫌いなこと

    .

    欲しいもの
    いらないもの

    .

    楽しいこと
    億劫なこと

    .

    至福だと感じること
    もう2度と味わいたくないこと

    .

    出店者さんは
    自ら、手を動かし、積極的に 作り/生み出し/関わり
    それらを自らの手で、売ることを手掛ける人たち。
    本当に尊敬の念に堪えない―
    様々なことを伺い、声と言葉を拾い、呼応するように

    私も自らをひらき、話をする瞬間はー
    自分の人生において
    それ以降、とても尊い時間になった。

    加えて、わたしは、どんどん料理がすきになった。

    .

    わたしのすきな料理は、物語の紡げる 素材や調味料で
    つくる料理。それらを口にして味わう時間も含めて、すき。

    出店者さんが話してくれる、つぶさなことを
    わたしは料理をしながら、
    それを写真におさめながら、
    おまじないのように、口に出していた。
    気付いたら、SNSにもアップしていた。

    「このトマトは、〇〇県産。今年有機JASを取得したフルーツトマト」
    「菜の花って、野沢菜も白菜も小松菜もキャベツも色々ある」
    「アブラナ科の花全体のことを、菜の花って言うんだって」
    「〇〇さんの実家の近くが、この産地で」
    「糖度は〇%で普通の種より、甘い」
    「保管は、今の季節だったら野菜室じゃなくてもいいんだ」
    「冷蔵庫にモノを入れると、追熟がとまるから」

    そんな おまじないは、誰に教えたい わけでもないけれど、
    わたし自身の
    「たのしい」感覚を、世界にひらいた。

    わたしがひらくことが、また別の誰かや何かの
    心の深いところを開くことに繋がっている、とさえ、感じられた。

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    マルシェの仕事をはじめて
    さらに新しい仕事を取り組んだ初日の
    Instagram ストーリーズ

    物事に対しての抱く 複雑さより、「シンプルさ」で紐解く世界を。
    指をくわえて待っていた「キニナル」を、叶えてあげる世界を。
    固結びした価値観を、「スルスルと」緩める世界を。

    わたしは、マルシェを通じて、その世界の愛おしさに触れた。

    私の胸の内にある 様々な種のざわめきも
    世界はまるっと、包んでくれた

    わたしは、そんな出店者さんのいる場(マルシェ)を
    ともにつくり、支えることも

    マルシェでの消費行動を通じて
    出店者さんとつくる 経済循環に加担することも

    今は、すごく誇らしい。

    ///


    早起きをして気付かぬうちに
    朝ごはんの準備をした わたしに
    眠い目をこすりながら起きた祖母は

    『 「あなたの思いやり」に感謝しています 』
    と言った。

    いやいや、実はわたしがマルシェの場でいただく
    様々なものを、祖母にもお裾分けした、に、過ぎないんだよ。

    出店者さんから、わたしは色々なことを
    (物理的にも、精神的な つながりをも)受け取りすぎている。
    そんな世界に、恵まれすぎている。

    同じ その世界に、
    やさしさ、思いやり、
    人から人にしか伝わらない温かさを、

    わたしもできるだけ
    身近で大切なひとのいる、この世界に
    返しているだけ、なんだよ。

    そんな話をしていると、また祖母が
    おまもりの言葉をくれた。

    あなたは、やりたいことをやりなさい
    
    やりたいことをやりながら、社会に貢献していくんでしょう..?

    そうするね、これから。
    時間はかかっても、必ず。

    だから、これからも 見守ってくれたら嬉しいよ。

    P.S.
    今日でマルシェの仕事をはじめて2年経った
    だから、名付けるのだ。
    3月10日は #マルシェ記念日 って。

     
     
    フードエッセイ(マガジン)を書き始めました 会社員をしながら、CSAの参加として畑に通いながら、マルシェの運営に携わりながら、生きています。 2026年、対話の場をひらきます。

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