
On Holding AG/ONON の2025年第2四半期決算
On Holding AGの2025年第2四半期決算に基づき、「決算概要」と「この決算を踏まえた投資判断」を解説します。
1.決算概要
On Holding AGは、2025年6月30日を期末とする第2四半期および6ヶ月間の財務結果を発表しました。同社は、ブランドの世界的な勢いと戦略的優先事項の成功裏な実行に牽引され、純売上高で新たな記録を樹立し、収益性を大幅に向上させました。
2025年第2四半期(3ヶ月間)の主要財務指標:
純売上高: 前年同期比32.0%増、為替変動調整後では38.2%増となり、7億4,920万スイスフランに達し、過去最高の四半期となりました。
DTC(Direct-to-Consumer)チャネル: 純売上高は報告ベースで47.2%増、為替変動調整後で54.3%増の3億830万スイスフランを記録し、すべての地域で力強い需要を示しました。その結果、DTCチャネルの売上高比率は第2四半期として過去最高の**41.1%**に達しています。
卸売チャネル: 純売上高は23.1%増、為替変動調整後で28.8%増の4億4,100万スイスフランでした。
地域別売上高(為替変動調整後):
アジア太平洋地域が前年同期比110.9%増の1億1,920万スイスフランと特に目覚ましい成長を見せました。
EMEA(欧州、中東、アフリカ)地域は46.1%増の1億9,780万スイスフラン。
米州地域は23.6%増の4億3,230万スイスフランでした。
製品カテゴリ別売上高(為替変動調整後):
アパレルが75.5%増の3,670万スイスフラン。
アクセサリーが143.2%増の770万スイスフラン。
主力のシューズは36.0%増の7億490万スイスフランでした。
売上総利益率: 前年同期の59.9%から61.5%へ大幅に向上しました。これはDTCチャネルの売上構成比率の増加、継続的な業務効率化、および好調な為替動向が寄与しています。
調整後EBITDAマージン: 前年同期比220ベーシスポイント増の18.2%を達成し、調整後EBITDAは50.0%増の1億3,610万スイスフランとなりました。
純利益: 前年同期の3,080万スイスフランの利益に対し、4,090万スイスフランの純損失を計上し、232.7%の減少となりました。この損失は、主に1億3,990万スイスフランに上る多額の為替差損が要因です。
2025年上半期(6ヶ月間)の業績概要:
純売上高: 前年同期比37.2%増、為替変動調整後で39.1%増の14億7,580万スイスフランを記録しました。
DTCチャネル: 46.3%増、為替変動調整後で48.6%増の5億8,520万スイスフランでした。
売上総利益率: 60.7%(前年同期59.8%)。
調整後EBITDAマージン: 17.4%(前年同期15.6%)、絶対額は52.2%増の2億5,610万スイスフランとなりました。
純利益: 前年同期の1億2,220万スイスフランから1,580万スイスフランへと87.1%減少しました。上半期合計でも1億5,440万スイスフランの為替差損が大きく影響しています。
財政状態とキャッシュフロー:
2025年6月30日時点の現金および現金同等物は、2024年12月31日から8%減少して8億4,660万スイスフランでした。
運転資本は6.9%増加し、5億3,340万スイスフランでした。
営業活動によるキャッシュインフローは、上半期で8,910万スイスフランを計上しています。
2025年通期ガイダンスの引き上げ:
Onは、直近の強力な業績と継続的な勢いを受け、2025年通期ガイダンスをすべての項目で引き上げました。
純売上高: 為替変動調整後で少なくとも31%増(従来は少なくとも28%増)を見込み、現在のスポットレートでは29億1,000万スイスフラン(従来は28億6,000万スイスフラン)に相当します。
売上総利益率: **60.5-61.0%**の範囲(従来は60.0-60.5%)。
調整後EBITDAマージン: **17.0-17.5%**の範囲(従来は16.5-17.5%)を予想しています。 これらのガイダンスには、2025年7月31日に発令された米国大統領行政命令による追加的な相互関税が含まれています。
この決算概要は、Onが堅調な売上成長と収益性の改善を継続している一方で、特に為替変動が報告上の純利益に大きな影響を与えていることを示しています。
2.決算を踏まえた投資判断
Onの最新の決算は、同社が力強い成長軌道に乗っており、戦略的な実行が成功していることを明確に示しています。投資判断を下すにあたり、以下の点を考慮することが重要です。
ポジティブな要素:
堅調な売上成長とDTCチャネルの強化:
為替変動調整後の純売上高は第2四半期で38.2%増、上半期で39.1%増と非常に力強く成長しており、これは市場での強い需要とブランドの浸透を示唆しています。
特にDTCチャネルの売上高が第2四半期で54.3%増(為替変動調整後)、上半期で48.6%増(為替変動調整後)と際立った伸びを見せ、売上高全体に占めるDTCの比率も41.1%と過去最高を記録しました。DTCの強化は、顧客との直接的な関係構築、ブランドコントロールの強化、そして高収益性に貢献すると考えられます。
収益性の向上と業務効率化:
売上総利益率は第2四半期で61.5%、上半期で60.7%と、いずれも前年同期から改善しています。これはDTC比率の増加と「オペレーショナル・エクセレンス」への継続的な注力が寄与しています。
調整後EBITDAマージンも第2四半期で18.2%、上半期で17.4%と大幅に改善しており、絶対額も50%以上の成長を遂げています。これは、同社が売上成長と同時に収益性向上にもコミットしている証拠です。
戦略的成長柱の実行とブランド力:
Onは、「アパレルカテゴリの急速な成長」「プレミアムなグローバル小売拠点の拡大」「アジア太平洋地域での並外れた勢いの構築」という戦略的成長柱を明確かつ精密に実行しています。特にアジア太平洋地域の売上高が第2四半期で110.9%増(為替変動調整後)と爆発的な成長を見せており、この地域での潜在力の大きさを浮き彫りにしています。
アパレルおよびアクセサリーのカテゴリも非常に高い成長率を示しており、製品ポートフォリオの多様化が進行していることが分かります。
「パフォーマンスとライフスタイルの交差点でのプレミアムで差別化されたポジショニング」を強化し、ランニング、テニス、トレイルといった分野での新製品投入により、製品提供を向上させています。Onはすでに「カテゴリで最も影響力があり、最も求められるブランドの1つ」として世界的な認知を得ています。共同創設者のDavid Allemannが述べるように、同社は「長期戦」を戦い、「レジリエントなブランドを数十年にわたって構築している」というビジョンは、持続的な成長を示唆しています。
2025年通期ガイダンスの上方修正:
記録的な第2四半期と継続的な強い勢いを踏まえ、Onが2025年通期の売上高と収益性のガイダンスを上方修正したことは、経営陣の今後の見通しに対する強い自信を反映しています。これは、投資家にとって非常にポジティブなシグナルです。
考慮すべき点/潜在的なリスク:
純利益の減少と為替リスク:
売上高と調整後EBITDAが大幅に増加した一方で、第2四半期には純損失を計上し、上半期も純利益が大幅に減少しました。これは、**多額の為替差損(第2四半期で1億3,990万スイスフラン、上半期で1億5,440万スイスフラン)**が主な原因です。同社の国際的な事業展開を考慮すると、為替変動リスクは今後も純利益に大きな影響を与える可能性があります。調整後EBITDAなどの非IFRS指標は、このような為替変動の影響を除外しているため、IFRS基準に基づく純利益との乖離に注意が必要です。
非IFRS指標への依存:
Onは、調整後EBITDAや為替変動調整後純売上高など、多くの非IFRS指標を使用して業績を評価し、ガイダンスを提供しています。これらの指標は経営陣にとって有用ですが、投資家はIFRS基準の指標と合わせて評価し、それぞれの調整内容(例:株式報酬費用の除外)を理解することが重要です。
マクロ経済の不確実性:
同社は、通期ガイダンスに「依然として不確実なマクロ経済の見通し」を織り込んでいると明記しており、世界経済の変動、サプライチェーンの混乱、インフレ、地政学的リスク(進行中のロシア・ウクライナ紛争やイスラエル・ハマス紛争、紅海の海上輸送問題など)は、今後の業績に影響を与える可能性があります。
競争環境と革新の必要性:
スポーツウェア市場は競争が激しく、消費者の嗜好の変化も速いです。Onは継続的な製品革新とブランドイメージの維持が求められます。
総合的な投資判断: Onは、強力なブランド力、多様な製品ポートフォリオ、グローバルな販売チャネル拡大を背景に、目覚ましい売上成長と収益性改善を実現しています。特にDTCチャネルの強化とアジア太平洋地域の急速な成長は、今後の持続的な成長ドライバーとなるでしょう。短期的な純利益の減少は為替変動によるものであり、調整後EBITDAの堅調な伸びと通期ガイダンスの上方修正は、事業の中核的な健全性と将来への自信を示しています。
為替リスクや一般的なマクロ経済の不確実性は残るものの、経営陣の「長期的な視点」と「戦略の着実な実行」は、同社が持続可能な成長を目指していることを裏付けています。Onは、プレミアムなポジショニングと革新的な製品で市場での存在感を高めており、長期的な視点を持つ投資家にとって魅力的な投資機会を提供する可能性が高いと考えられます。ただし、為替動向と非IFRS指標の詳細な分析は引き続き重要です。