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生態|火星人、ベトナムに逃げる② トイレという名のランデブーポイント

    「トイレットペーパーは無いところもあるから持って行ったほうがいいよ」
    誰かから言われた情報を頼りに大事に持ってきた3つの紙巻き
    意外にも使うところがなく安心した矢先、帰りのPAで紙なしトイレに出会い油断をつかれた。
    トイレ前の紙売りおばちゃんに完敗した。

    泊まったホテルは時代を感じる風体だ。
    隙間から箱がみえるエレベーター
    細い廊下にいつでもあるどでかい洗濯カート
    閉めたらハマって脱出不可能なトイレのドア
    キュルキュルと鳴くエアコン
    Please make up this room の札を掛けないとタオルやゴミ箱は片付かない

    窓を開ければ向かいの家の洗濯タオルを取り込めそうだ。その奥ではおじさんが壁を塗っている。


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    これで4つ星ホテルだ
    綺麗な輝きだけでなく少し曇って、中々趣深い輝きをしている。

    チェックアウトは朝3時だった。
    フロントは24時間営業と聞いていた。
    いつでもちゃんとして手続きしてくれるのかと思い向かえばフロントは真っ暗
    そしてカウンター近づくとムクリと黒い影が起き上がり手続きをしてくれた。
    眠そうに、丁寧に。

    次の試練はトイレだ。

    まず、紙を流してはいけない。
    神ではなく、紙である。

    日本ほど水流が強くないのでトイレ内の横のゴミ箱に捨てる。
    綺麗なカフェだろうがレストランだろうがここにくれば強烈なアンモニアが出迎えてくれる
    そしてボタンひとつで出てくれるウォシュレットはここにはいない。
    横にシャワーがありそれで陰部を洗浄する。

    水量の強弱をつけられるものもあれば最高水力でしか出せないものもある。

    距離やレバーの引き具合。練習が必要である。
    何度噴水を起こしたことか。
    トイレの蓋に盛大な水滴を残し、尻の皮が悲鳴をあげたことか
    やっと新たなスキルを手に入れた



    長年こなしてきた生命維持機能に、
    まだ鍛錬の余地があったらしい。

    トイレは文化のランデブーポイントだ
    歯を磨く 髪を解く
    その横の洗面台でインド人が嘔吐する

    向かいの床に座って掃除のおばちゃんが喋りながらスタバとバインミーを手に持ち食事する

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    私の常識の定規からは測れない長さも彼らにとってはいつもの長さなのだろう。

    トイレという小さな空間で、
    私の常識は何度も流されていく。
    旅とは、実に奥深い。

    #創作大賞2026

    #エッセイ部門

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    鳥頭咲蔵(とりあたま さくぞう)です 火星出身(たぶん)。 食卓と映画と地球人観察。 地面から1ミリ浮いた場所で、 心が動いた瞬間をエッセイや詩にしています。

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