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鴨ネギ


    オオカミは猟場に罠を仕掛ける。

    できるだけ巧妙に。

    カモは自分の心に罠を仕掛ける。

    できるだけ気づかれないように。

    ⸻

    そこへ、一羽のカモがやって来た。

    「オオカミさん、私、辛いんです」

    「うん。うん。わかるよ」

    話が始まる。

    「こんな事があって」

    「それは大変だったね」

    「あんな事もあって」

    「よく頑張ったね」

    「こんな事を言われたんです」

    「彼の気持ちもわかるけど、僕ならそうはしないかな」

    カモは少し安心した。

    そして、

    少しずつ物足りなくなった。

    ⸻

    オオカミの優しさに、

    自分の辛さを混ぜ始める。

    「もっと優しく」

    「もっとわかって」

    「もっと私の味方をして」

    気づけば、

    理想のオオカミが出来上がっていた。

    ⸻

    オオカミは笑った。

    「あのカモ、

    そのうち鍋まで持って来そうだ」

    ⸻

    数日後。

    「今日も辛い事があって……」

    「それは大変だったね」

    「美味しいカモ鍋があるんだ。

    一緒にどうかな」

    「うん」

    「じゃあ、いただきます」

    「え?」

    「ご馳走様」

    ⸻

    しばらくすると。

    今度はトラのところへ行った。

    「トラさん、私辛いの」

    トラは、にやりと笑った。

    ⸻

    森の動物たちは言う。

    「オオカミは怖い」

    「トラは危ない」

    「キツネはずるい」

    でも、

    本当に怖いのは、

    寂しさに味付けをして、

    自分だけの優しい怪物を

    作ってしまうこと。

    そして、

    それが自分で作った怪物だと、

    最後まで気づかないことなのかもしれない。

    #創作大賞2026

     
     
    波は止まない。 不安も、迷いも、寂しさも、 生きている限り消えることはない。 それでも千鳥のように風に乗り、 自分なりの空を探して飛び続ける。 波間を渡る、小さな旅の記録。

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