
鴨ネギ
オオカミは猟場に罠を仕掛ける。
できるだけ巧妙に。
カモは自分の心に罠を仕掛ける。
できるだけ気づかれないように。
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そこへ、一羽のカモがやって来た。
「オオカミさん、私、辛いんです」
「うん。うん。わかるよ」
話が始まる。
「こんな事があって」
「それは大変だったね」
「あんな事もあって」
「よく頑張ったね」
「こんな事を言われたんです」
「彼の気持ちもわかるけど、僕ならそうはしないかな」
カモは少し安心した。
そして、
少しずつ物足りなくなった。
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オオカミの優しさに、
自分の辛さを混ぜ始める。
「もっと優しく」
「もっとわかって」
「もっと私の味方をして」
気づけば、
理想のオオカミが出来上がっていた。
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オオカミは笑った。
「あのカモ、
そのうち鍋まで持って来そうだ」
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数日後。
「今日も辛い事があって……」
「それは大変だったね」
「美味しいカモ鍋があるんだ。
一緒にどうかな」
「うん」
「じゃあ、いただきます」
「え?」
「ご馳走様」
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しばらくすると。
今度はトラのところへ行った。
「トラさん、私辛いの」
トラは、にやりと笑った。
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森の動物たちは言う。
「オオカミは怖い」
「トラは危ない」
「キツネはずるい」
でも、
本当に怖いのは、
寂しさに味付けをして、
自分だけの優しい怪物を
作ってしまうこと。
そして、
それが自分で作った怪物だと、
最後まで気づかないことなのかもしれない。