
なみ町新聞6「図書館選書」
なみ町の中央広場には、図書館がある時とない時がある。
移動図書館という意味ではない。
気がついたら図書館の中だったという人もいれば、扉の前に立っているということもある。
私の上司は、その建物が現れる瞬間と消える瞬間を記事にしたいと考えた。いつも私はグルメ系しか書かない。なのに上司は私を指名した。仕事だから仕方がない。上司の命に従うのみだ。
それで今、私は寒空の中ずっとベンチの後ろに隠れている。
建物内には、一度入ったことがある。見た目は、普通の図書館のようだった。
ただ、この図書館はインクや紙の匂いがしない。靴音も響かない。窓から差し込む柔らかな光もない。
まるで、ロボットが整理したかのように、真っ白な本が本棚に並べられている。真っ白な本というのは、本当に真っ白なのだ。全ての本の背表紙には、タイトルが書かれていないのだから。
司書はいないので、何もわからないまま一番近くの本を開く。しかし、中にも何も書かれていない。
諦めて、本を閉じる。
すると、表紙にタイトルが浮き出てくるのだ。そして、ちゃんと中身も表れる。