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私はゲイだが、マジョリティだ

    この間、車椅子の男性と駅のホームですれ違った。
    この間、低身長症の女性を歌舞伎町で見かけた。
    この間、ビザの有効期限を気にするアメリカ人のゲイの友達とランチをした。
    この間、シングルマザーの友達の子供と映画館へ行った。

    私はゲイだ。
    ゲイだからマイノリティ側の人間だと、決められた。


    「ゲイだから」「マイノリティだから」を盾にして
    悲劇のヒロインのように
    生きづらさを社会や運命のせいにすれば楽だ。
    上手くいかない事をそうやって納得させてきた部分は少なからずある。

    でも、性的にはマイノリティではあるが、
    その他の部分ではマジョリティである。

    日本で暮らす日本人である。
    成人の男性である。
    身体は健康で五体満足である。

    日本人だ。
    日本語を母語として育った。
    パスポートがある。
    戸籍がある。

    日本でゲイへの偏見や差別はまだある。
    でも、死刑にはならない。
    世界には今も、同性愛者を死刑にする国がある。

    男性だ。
    夜道を歩いて怖いと思ったことが、ほぼない。
    仕事上で、女性より待遇が良いと感じたことがある。

    仕事がある。
    家賃を払えている。
    食べるものに困っていない。
    経済的にマジョリティだ。

    ゲイであることを除けば、
    私は社会の「普通」の側にいる。

    ゲイだから、と生きづらさを感じてきたことがある。
    ゲイだから、と諦めてきたことがある。

    セクシャリティへの詮索とか
    昔、彼氏と同棲する際の不動産屋での対応とか。
    結婚とか。

    そういう不便が確かにある。
    でも、その不便以外の場所で、
    私は特に困っていない。


    当事者じゃないと、その苦悩は分からない。
    車椅子だと、何が不便なのか?
    低身長症と書いたが、最初は小人症と書いた。
    ネットで調べた時に差別用語に当たる可能性があると知った。
    外国人には私たちの知らない行政の手続きがある。
    シングルマザーは母側と、子供側とでそれぞれの苦悩がある。

    私はゲイだ。
    ゲイの苦悩については分かるが、その他のマイノリティについては知らないことが多い。


    マイノリティである部分だけを見て「かわいそう」と言うのも、
    マジョリティである部分だけを見て「恵まれている」と言うのも、
    どちらも正確じゃない。

    それは誰もが、マジョリティの部分もマイノリティの部分も抱き合わせて生きているように思えるからだ。
    マイノリティの部分は誰も口には出さない。
    隠している。

    それでも、自分だけはいつもマジョリティ側でいたいと思う。


    今、私の隣でおしゃべりをしているカップルも
    目の前で本を読んでいる男性も
    コーヒーを作っている店員も
    誰にも見せていない、一人苦悩しているマイノリティの部分があるかもしれない。


    あなたが誰にも見せていないマイノリティの部分は、ありますか?


     
     
    ゲイが綴るエッセイ。 生きてきた日常と恋愛をただ正直に赤裸々に書いています。 また「名もなき」とは匿名のことだけではないです。 痛みにも、誰かを愛して失った悲しみにも、制度に認められなかった関係にも、名前はないです。

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