
『鳴石』 その12
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余震が続き、落ち着かないまま朝になる。
揺れる前に先に地鳴りがあるものと、いきなり揺れるものがあることに気がついて、遥子は居てもたっても居られなくなり、縁側から外を眺める。
地鳴りはこの鳴石の坂を上がってくるのだろうか、それとも石動山から降ってくるものだろうか。見ていてもわからないかもしれないが、それでも、なにかを感じたい。
私も坂をのぼったのか。
私は、のぼってきたのか。
それとも、ここに居るものだろうか。
父の車に乗り合わせて、両親と知也と裕子が鳴石に到着する。
断水しているだろうと考えた知也が、とりあえずと空のポリタンクを大量に持ってっきていたが、井戸の水が戻っていて、問題はなかった。
「私もなにかお手伝いします」という裕子を座らせ、「あるものでいいよね」と皆に告げて支度をはじめる。
母が持ってきた他にも、菊江と佳子が届けてくれたおせちと、押し寿司に、味噌汁もあるし、雑煮のためのすまし汁も、仕上げるだけになっていた。
十分正月らしい食事のためには、かかる時間も手間も、ほぼ必要としなかった。
皆と食卓を囲んで、ひょっとすると、互いに機能すら提供しあっていない自分たちが、一体どんな理由でこの場所に集っているのかと、改めて皆の顔を見回してしまった。
破壊も再生もない。
年月によってすり減って消えていくだけのものの集まりだ。
「そんなバカな」と込み上げたものを噛み殺し、味噌汁に口をつけながら、また別のことが心によぎり、味噌汁の味。
きくさんの味噌を混ぜたという、菊江の言葉を思い出す。
年月を前に、変化を前に、自分は一体どうなっていくものだろうか。
呼吸を整えて、もう一度、味噌の風味の違いを確認する。
おわり