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アクリル絵画のススメ~再び油絵

    アクリル絵画の可能性は、無尽蔵ではないだろうか。 絵を描きたいという思いを阻む壁は多い。私が今、これからも画業を続けていこうと思えるのは、アクリル絵具との出合いによるところが大きい。 これまで、画材に上下などないはずなのに、後発のアクリルよりも油彩の方が「格上」であるかのように、いつの間にか自分に刷り込んでしまっていた。 振り返れば、そもそもは「大都会の美術館に自分の絵を展示してみたい」と願ったのが発端だった。いつかは100号の絵を描けるだろうか。公募展に入選できるだろうか。 当時の自分より一段高い目標を掲げて闇雲に突き進み、初めて入選した時の喜びは今も忘れられない。 一度道が開けると、あんな表現もこんな表現もしてみたいと夢は膨らむ。公募展に足を運ぶことは、プロや全国の作家の作品を一堂に会して見ることができる、絶好の機会となった。 次の目標を定めた私は、勉強会に参加する一方で、道行く人に声をかけてモデルを頼み、日常の一瞬を切り取ったデッサンを繰り返した。そうしてキャンバスに油絵具を塗り重ねる日々に励んでいた。

    F100号のキャンバスを、乾かしていた廊下からそっと滑らせ、台所兼居間兼アトリエへと運び込む。台の上に新聞紙を敷き、自分の身長ほどもある大画面(縦163センチ、横130センチ)を両手で抱えて置き直す。「さあ始めるぞ」というその準備のひとときさえ、私は気に入っている。このために腕立て伏せだって頑張れる。この広さ、いや、この狭さこそが今の私には丁度いい。 ただ、いかんせん換気をしないと臭いが籠もる。真夏や真冬に窓を開ければ、室温は一気に変動し、落ち着いて描ける環境ではなくなってしまう。これが、私の身体的・環境的な制作条件の限界だった。 打開策を模索するなかで、ある作家のワークショップに参加したことがきっかけとなり、徐々にアクリル絵具の面白さに気づいていった。 一昨年、恐る恐る塗り重ねていくうちに、その発色の美しさに感動した。描くスピードが速い私にとって、絵具が混ざりすぎて濁ってしまうのは悩みだったが、アクリルならその心配も少ない。そして何より、あの独特の臭いがない。 唯一の懸念は、乾きの速さだ。じっくり取り組みたいタイプの私には、少し急かされるような感覚があり、これに慣れることができるかどうかが課題である。
    昨年は、作家が目の前で描いてくれる手の動きや筆遣いの丁寧さを目の当たりにすることができた。アクリル絵の具は油絵とは明らかに制作過程は違ってくることに気づく。ディビット・ホックニーの遠近法についての著書も参考になり、早速図書館で調べてみた。そんななかで、人と自分との描き方の違いや特性、選ぶモチーフや構図の捉え方に考えが及ぶ。安易に人それぞれとは言いたくはないが、否が応でも作品には、作家の人生が反映されると振り返る。
    そもそも画材は時代の求めに応えて進化する。印象派の時代、チューブ入りの絵の具は新しい発明品で、それを手にしたMonetやセザンヌは嬉々として郊外に赴いた。私も今、喜びをもってアクリル絵の具を享受する。片付けが手間要らずな分だけ、図録や書籍、SNSからの専門的知識の習得が可能となる。
    結論からいうと、実験的にさまざまな技法を試したい私の性分とアクリル絵の具は相性がいい。すなわち
    ○初発の思うがままの線を残したい。
    ○けれども作品としての丁寧な仕上げは 求めていきたい。
    ○支持体の違いによる水分、点、にじみ。
    ○アクリルガッシュとアクリルの使い分け、あるいは共用など。
    ○布や ダンボールに描いた時の発色など。

    試してみたいことがたくさんあって忙しい。 油絵の良さも再発見できたことだし。
    さあ、楽しもう。





    #創作大賞2026 #エッセイ部門 #オールカテゴリー

     
     
    図画工作が大好きで、今は油絵やアクリル画を描いています。絵画を描いたり、美術鑑賞が好きな方に、制作時に考えたことや美術について気づいたことなどを届けられたら嬉しいです。制作途上で消えてしまう下絵の写真などの記録としても使えたらと思っています。

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