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保証会社に任せていれば大丈夫、は本当か。外国人入居者の夜逃げで見えたこと。

    外国人入居者の家賃が止まることがあります。

    最初の1ヶ月は「少し遅れているだけかもしれない」と思う。

    2ヶ月目に入ると、保証会社が動き始めます。催告状を送り、電話をかけ、勤務先に確認を入れる。

    それでも連絡がつかない場合、安否確認として室内の確認に入ります。

    荷物が残ったまま、人がいない。

    その状態が確認できた時点で、保証会社は「帰国」と判断します。

    パスポートの控えが残っているか、ライフラインが解約されているか、在留カードの有効期限はどうか。

    公的な入管データに直接アクセスする手段は保証会社にはないため、こうした状況証拠を積み上げて判断するしかありません。



    外国人専門の保証会社は、こういった案件に慣れています。

    通訳スタッフも抱えていて、母国語でのコンタクトも試みてくれる。SNSを使って本人や家族に連絡を入れることもあります。

    それでも捕まらなければ、次のステップに移ります。

    保証会社が管理会社に対して提示してくるのが、「残置物放棄書面」です。

    借主から書面を取得済みであること、残置物の撤去は保証会社が行うこと、借主から何か言われても保証会社が全責任を持つこと。

    そういった内容の書面を管理会社と取り交わして、撤去処理を進めます。

    実務上、今まで問題になったことはない、とのことでした。



    ただ、保証会社の担当者から聞いたもう一つの話が、引っかかっています。

    「裁判はやってられない」というものでした。

    本来であれば、明け渡し訴訟を起こすべき案件です。

    ただ、訴訟には時間も費用もかかります。そして保証会社側には「今まで一度も訴えられたことがない」という実績がある。

    その実績を根拠に、今回も同じ対応で進めると言われる。

    海外に出てしまった相手を日本の裁判所で訴えるコストと実効性を考えると現実的ではない、件数も少なくないので容赦してほしい、という話でした。

    仮に裁判で勝っても、海外にある財産を日本の法律で差し押さえることはできません。

    未払い家賃については代位弁済で対応し、連帯保証人が国内にいればそちらに請求する。

    それでも回収できない分は、貸倒損失として処理する。そういう判断です。

    管理会社としては、容認するしかない側面があります。

    容認しなければ、今後の賃貸保証の取引そのものに影響する。

    外国人入居者を受け入れるための保証会社との関係を維持することは、管理会社の業務として切り離せない。

    会社対会社の取引関係が、個別案件の法的判断より重くなる瞬間が、現場にはあります。

    オーナーから見れば、「なぜ訴えないのか」という疑問は当然です。

    ただ管理会社がその判断をしない理由は、オーナーへの説明の中には出てきません。



    もう一点、気になったことがあります。

    残置物の放棄書面の話に戻りますが、法律的に言えば、残置物の処分責任は最終的に貸主が負います。

    保証会社と管理会社の間で書面を交わしていても、それは当事者間の約束に過ぎません。

    借主や第三者との関係では、貸主が矢面に立つ構造のままです。

    今まで何もなかった。それは事実です。

    では、何かあったときはどうなるか。

    借主が帰国後に「荷物を勝手に捨てられた」と主張して連絡してきたとします。

    実際には放棄書面があります。ただしその書面は、保証会社と管理会社の間で取り交わしたものです。

    借主はその書面に署名していない、あるいは署名していても内容を十分に理解していなかった、という主張が出てきた場合、法的な責任の所在は一気に曖昧になります。

    保証会社は「責任を持つ」と言っています。

    ただ、それは保証会社が矢面に立つという意味ではなく、問題が起きたときに保証会社が対応するという約束です。

    その約束が履行されるかどうかは、そのときになってみないとわかりません。

    貸主が訴えられる可能性はゼロではない。そのコストと手間を誰が負うかは、書面には書かれていません。

    「今まで何もなかった」という実績は、保証会社が裁判をしない根拠にもなっていますが、同時にこの慣行が法的に問題ないという証明にもなっています。

    ただしそれは、誰も争わなかっただけの話でもあります。

    ざっくり言うと、「今まで何もなかった」と「法的に問題がない」は、別の話です。

    実務上の慣行として定着しているものが、法的に保護されているわけではない。

    その差を、オーナーはあまり意識していません。管理会社もあえて説明しないことが多い。しゃあない、と片付けるには少し重い話です。



    外国人入居者への門戸を開くこと自体を否定するつもりはありません。

    専門の保証会社が存在し、通訳機能まで持った仕組みがある。空室対策として有効な手段でもある。

    そこは管理会社としても否定できない現実があります。

    ただ、オーナーが「保証会社が入っているから大丈夫」で止まっているとすれば、その大丈夫の中身を一度確認する必要があります。

    保証会社が裁判をしない判断をすることがある。残置物の法的責任は、書面があっても貸主に残る。

    帰国の確認は状況証拠の積み上げで行われていて、公的な裏付けではない。

    管理会社がそれを容認している理由は、オーナーには説明されない。

    そういう構造の上に、あなたの物件は立っています。

     
     
    賃貸管理17年の現場から、投資家が「買う前に知りたかった」情報を書いています。サブリース・退去精算・設備故障…営業トークの裏にある数字と構造を、管理の一次情報で。|宅建士×現場の記録係

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