
おきざりの夢をひろう
その昔のこと
私の家は母子家庭で、裕福とは程遠い所にいた。
というか、みごとに代々母子家庭の連鎖が続いている。
当時、意志表示を滅多にしない私が強く望んだから、母はムリをしたと思う。
小学4年位から、クラシックバレエを習いはじめた。
私はバレエに夢中になった。
コミュ障気味の私にとって、身体で表現することは、格好の発露だった。
時系列が定かではないが、3歳位年上の憧れのミドリちゃんが東京のバレエ団に入った時、私もバレリーナになりたいと思った。
母にバレリーナになると告げた覚えがある。
「そんな夢みたいなこと・・・」と母は困惑した。
なんと、バレエもやめさせられた。
見ちゃいけない夢をみた罰のようだった。
そのころから、不確かな夢をみることは、愚かなことと心に刻まれた。
それでも、長い長い呪縛のなかで、踊ることへの羨望は、拉げながらも私の心にずっとあった。
人より、身体に関してストイックなのも、無意識にその基準が踊れる身体だからだ。
やっと今その呪縛から解き放たれた。
60代の私が今からはじめるダンスとして魅力的に思えたのが、タンゴで
昨年暮れから、数ヶ月タンゴに触れて、思う事がある。
タンゴは教える人で、捉える角度で、全く違うものになると言うこと。
4月から、個人レッスンに踏み切って、やっと私が描くタンゴに出会えた気がしている。
情熱のタンゴをこの先生なら、指導してくれると直感した。
「ペアーで踊るダンスだからね、めんどくさいこといっぱいあるのよ・・・」といいながら、アブラッソの姿勢と力点、顔の向き、何度も何度も注意される。
申し訳ないが、身体の癖は一朝一夕で治らない。
「何百回でもいうよ!身体で覚えるしかない。自転車一回乗れたら忘れないでしょ あれといっしょだから・・」と基礎を叩きこまれる。
前回、レッスン後「50いくつでしょ 時間ないよね」って言うから「そうなんですよ 時間ないんです」と返して、年齢はスルーした。
だって、年齢明かしたら、その上に胡坐かいてしまいそうだから・・・。
「ぼくにあずけて そうだな1年・・・」
「そんなにセレブじゃないからなあ・・・」
とは言ったものの、心の中ではシュミレーションができた。
この先生は百戦錬磨のトーク術で、本音をぶつけてくる。
その発言の後、一人でぶつぶつ、投資詐欺だのやるやる詐欺だの言っていた。
不快ではなく、むしろ吹き出しそうになる。
この日のレッスンで、足じゃなくて体幹から動くってことが腑に落ちた。
そうすることで、足の力は自然にぬける。
今まで、注意され続けていた、足に力が入りすぎる問題は、思わぬ角度で解消された。
翌日、脇腹からウエストを伝っておしりと言う今まで感じたことのないところに、激しい筋肉痛がきた。
こうして少しずつ身体が覚えていくって、思い出した。
ずっとおきざりだったもの・・・。
お金にならない夢が、長い年月を経て目を覚ます。
古びた箱から、そっと出して
外気に晒してみようと思う。
光を当てて見ようと思う。
エム