
オダンゴヤ
早いもので
娘(7)がこの春
小学2年生になった
ついこの間ランドセルを選び
卒園式に出た気がするのに
そういうと
僕もついこの間
小学校を卒業した気がするのに35歳
は?
中学23年生の今日この頃
(7)が2年生になるタイミングで
嫁がPTAの役員になると言い始めた
え?吾輩はただでさえ仕事が忙しいというのに今よりさらに家事が増える
何を申すかこの不届者め
そのような言葉が喉元を超え
歯茎の手前まで出かかったがなんとか飲み込むことができた
しかし
不届者によればその理由は
一度役員を経験すれば(2年任期)
毎年クラス毎にランダムに選出される「クラス委員」が
その後兄弟全員の卒業まで免除になるから
というものやった
なるほど
まあそう考えれば我が家は
息子(5)、娘(2)がまだ控えているため
その長期間クラス委員を受けなくても良いと考えれば
2年の役員に立候補する価値も大きいと思われた
そうこうして嫁は役員に立候補
思惑通り役員に就任した
そんな中
先日小学校にて「春まつり」が開催された
小学校のグラウンドが会場となり
たくさんの屋台が出たり、様々催しが行われたりするもの
そこで嫁は
PTAが出店する「みたらしだんご屋」の担当になったとのことやった
春まつりが近づくにつれ準備を進めるPTA
嫁も何度か打ち合わせに出かけたりしていた
そんなある日、嫁は僕に言った
「仕事が急に立て込んで中々終わらんねん。当日代わりに行ってくれへん?」
は?
貴様
この僕に急にだんご屋をやれと?
僕は役員の面々とも顔を合わせたことがない
打ち合わせにも参加していないので当然段取りも知らない
なのにラブ・ストーリーより突然にだんご屋?
僕は若干戸惑いつつも
まあ仕事なら仕方ないと思いだんご屋を請け負うことにした
それに薄々
こんなことになる様な気もしていた刑事の勘で
僕は嫁から簡単に引き継ぎを受けた
だんご屋は2名のペアで行動し
会計役
だんごを取り出し容器に詰めお客に渡す役
このシンプルな役割分担で運営され
午前午後で別のペアに交代
さらに僕のバディは役員2年目のよくわかっている人なので心配はなく
当日は僕が行くということも連絡し了承を得たとのことやった
まあもう一人分かってる人がいるなら適当になんとかなるやろ
そう思った
そうして当日朝
僕は学校へ向かい
グラウンド内の指定された場所へと移動した
そこには既に
どなたかにより設営されたテントがあり
その前には「みたらしだんご」
と書かれた簡単な看板も立て掛けてあった
誰かしら子供の手描きと思われ
非常に可愛らしいおだんごの絵も描いてあった
テント下の机にはだんご屋の運営に必要な物品も既に準備して下さっており
僕は動物園のカバよりぼーっとしながらバディの到着を待った
するとまもなく
だんご屋のテントに向かって小走りで駆け寄ってくる
僕のバディと思しき男性の姿が見えた
スキンヘッドではないが非常に短く刈り揃えられた髪で
「あばれる君」にそっくりな人やった
少し歳上、42-43歳くらいに見える
黒縁のメガネをかけており、とてもおしゃれな服装
暴れはしない様子
僕「おはようございます!Nです。よろしくお願いしますー」
あばれない君「ああ、すみません遅くなって!5年2組のオノです。」
は?
ここは小学生は立ち入り禁止やぞ
おっさんのくせに5年生やと?
寝ぼけた事を
ああ違う
貴様のお子様が5年2組ということか
失礼した
僕「いえいえ、僕も今来たとこなんで」
あ「実は今日、嫁が体調崩して急遽代わりに来たんで…何も分からんのですよ僕」
は?
二人とも何も分からんのかい
話が違うやんけ全然
僕「え!ほんまですか!僕も代わりなんで分からんくて」
あ「ええ、嫁から聞いてます。まあ、何とかなるでしょ」
謎に前向きでにこやかに話すあばれない君
対して僕は大型泥舟、タイタニックドロ号に乗船した気分やった
ふと見ると
あばれない君は両眼とも充血しており
数秒に一回強く瞬きをするなど
コンディションが良くないようにも見受けられた
僕は気遣いの姿勢を見せた
僕「目、大丈夫ですか?」
あ「めっちゃ充血してるでしょ?昨日寝不足で」
一晩でそんな目になるとは
生まれて初めての夜ふかしやったんか貴様
そう思いつつ
二人でだんご屋の準備に取り掛かった
やることと言えばパックからだんごを取り出し
網の上で少し焼いたあと
銀色の四角い容器の中で温められたみたらしのタレにつけ、白いトレーに入れてお客に手渡すという作業のみ
非常にシンプル
僕はそちらの作業を担当し
あばれない君は血眼で会計役を担うことになった
開会の時間になり
まつり冒頭に校長先生の有難き御話があった後
子供達をはじめ大勢の地域の人たちが
それぞれのお店へと集まりはじめた
だんごは1本50円
その値段もあってか
予想外にもだんご屋の前にできる大行列
焼いても焼いても寝ても覚めても途切れない客
クッソなんやこの激務
全然聞いてないこんなん
本職のだんご屋でもこんな忙しくないやろ
嫁への怒りが込み上げる中
あばれない君と連携しだんご屋を回した
あ「200円もらいましたー!」
僕「はいー!」
200円ということは4本ね
あ「次100円でーす!」
僕「はいー!」
2本ね
あ「この子50円ー!」
クッソ
本数で言えや貴様さっきから
いたずらに割り算させおって
僕「オノさんオノさん(小声)、本数だけ言うてもうたら大丈夫ですよ」
あ「あっ、すんません!了解です!」
あ「あっ、そうや!」
あばれない君は
重力を発見した瞬間のニュートンかの様な表情と血眼で何かを閃き
ペンやガムテープ等々の物品が入ったダンボールをあさり始めた
お客待ってるやん何しとんねん
そう思ったのも束の間
あばれない君は何かを手に
小走りで会計スペースへと戻った
そして何らかメモに文字を書き
そのメモを持って僕の方へ近付いてきた
あ「こうやって書いて並べますわ!わかりやすいし」
だんごを焼く網の隣
空いたスペースに汚い殴り書きの数字がそれぞれ書かれた紙が三枚並べられた
「2」「5」「1」
なるほど
本数を書いたんやな
んー
わかりにく…
まあいい
僕「2本の方どうぞー」
2本入りのトレーを知らないマダムに渡す
次は汚い5?
非常に読みにくいため確認することにした
僕「オノさん、これって5でいいですよね?」
あ「あっすんません!3ですそれ」
クッッツッソ
貴様
変な行程増やすなや
さっきの方がマシや腹立つ
センス×やぞパワプロやったら
そうこうしつつ
僕はひたすらにだんごを焼きタレにつけ
次々お客に渡した
しばらくして行列は一旦なくなり
手元にも少し余裕ができた
必死すぎてそれまで気づかなかったが
焼けたおだんごと温められたタレの
非常に美味しそうな香りが辺りを漂っていた
「あー、いい匂いやなあ」
思わず僕は独り言を呟いた
少し暇になった間に僕も
一本買って食べようかなと思った
するとあばれない君は
血眼で僕の方を一度ちらっと見た後
自分のおしゃれなTシャツの襟元を鼻に近付け
満面の笑顔で言った
あ「あ、ほんまですか?柔軟剤かな〜」
「嫁がこないだ変えたんですよ。最近CMやってる綾瀬はるかの匂いのやつに」
は?
僕が言うたのは貴様の匂いちゃうねん
だんごに決まってるやろそんなん
ほんであれ別に
綾瀬はるかの匂いちゃうねん
いくら超美人とはいえ
綾瀬はるかの匂いしたら嫌やろ
さすがに寝起きとか臭いかもしれんもしかしたら
だって人間だもの
僕「へえ」
しばらく時間が経ち
だんご屋の交代時間が見えてきた頃
ふいにあばれない君の息子(5年2組)が
だんご屋の前に現れた
2組「なあパパ、お小遣い無くなったしちょうだい」
あ「え!もう無くなったん?」
そう言いつつ
財布を取り出すあばれない君
そして千円札を一枚取り出し
向かいのお店を指差しながら息子へと渡し言った
あ「パパ、たこ焼き食べたいし後で買っといて」
は?
貴様PTAの職務を忘れたんか
PTAのおだんご屋の仕事中やぞ
ほんでPTAのおだんご屋なんやからおだんご買えや
売り上げに貢献せえよPTAやのに
は?
パパ:P
たこ焼き食べたいし:T
あとで買っといて:A
PTAやんけそれ貴様
なかなかやるな
あばれる君みたいな顔して
いいセンスしてる
最終盤
少し打ち解けたところで
偽あばれる君に聞いてみた
僕「お仕事何してはるんですか?めっちゃオシャレやし」
すると彼は
あばれる君の様な清々しい笑顔で答えた
あ「ありがとうございます!それこそ洋服の関係なんですよ」
アパレルやんけ