
500円の向こうに、「またね」があった
「またね」と言ってもらえることが、こんなにうれしいとは思わなかった。
15年前、私は専業主婦で、一人息子を育てていた。息子は1歳になる前には走り回るような子で、家の中だけでは一日もたない。公園では道路や危ない遊具へ向かう息子から目が離せず、買い物では財布を出す一瞬さえ怖かった。
毎日、「今日はどこへ行こう」と考えていた。
そんなとき、ママ友に教えてもらったのが、公民館の和室で開かれていた500円の親子あそびだった。
先生がタンバリンや太鼓をたたくと、子どもたちはリズムに合わせて歩いたり、走ったりする。絵本やパネルシアターの時間もあった。でも、息子がじっと座って見ていなくても、「動いていて大丈夫」。その空気がありがたかった。
広い和室なら、息子を追いかけ続けなくてもいい。遊びも道具も先生が準備してくれている。私はただ、息子を連れて行けばよかった。
たくさん遊んだ日は、息子が昼寝をした。家事を終え、残った10分ほどでコーヒーを飲む。それが私の時間だった。
本当は、息子の手形を毎月残したかった。でも、道具を出して、手形をとり、片づける。その小さな準備さえ、あの頃の私には続けられなかった。
今、私は親子あそび広場を開いている。材料も道具もこちらで用意し、手形や足形を一緒に残す。絵本も、遊びも、安心して過ごせる場所も用意する。
あの頃の私が500円で受け取っていたのは、遊びの時間だけではなかった。
「おはよう」と迎えてもらい、「またね」と送り出してもらうこと。
誰かと一緒に、わが子の成長を喜べること。
今度は私が、その時間を次の親子へ渡していきたい。