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遅い車は悪いのか

    私は30年以上、車の運転をしています。みなさんもそうだと思いますが、他人の運転は気になるものです。

    路上には様々な感覚や考えを持った人が大勢います。事故なく快適に目的地まで行ければいいのですが、稀にこれを阻害する人が登場します。「しょうがないな」「ちぇっ」くらいで済めばいいのですが、「おいおい、それはないだろ」と怒りが湧くこともあります。

    最近、この話題がSNS上で語られることも増えてきました。内容は毎回ほぼ同じです。それだけ迷惑な運転をする人が多く存在するということなのでしょう。その中でも以下の2つの考えが衝突することが多く見られます。

    A:「あまりにも遅い車が
      道を譲らなくて邪魔!」
    B:「自分は制限速度を守っている。
      なんであおられるのか!」

    Aは遅い車への批判をしています。Bはルールを守っていることの正当性を主張します。便宜上Aを「批判側」、Bを「ルール厳守側」とします。

    これ、毎回読む度に「またか」思うことがあります。それは「結論が出ないまま話がうやむやになる」ということです。私が知る限り、SNS上で解決したことは一度もありません。お互いに言いたいことだけ言い合ってなんとなく終わるのです。非常に大事な話なのに解決しない、というのはよくないですよね。実はこれ、一つずつひも解いていくと結論は出るんです。感情ではなく、事実だけを整理することで答えが見えてきます。

    この話は実は2パターンありますのでわかりやすくまとめます。

    【1】高速道路にて

    速度指定のない※片側2車線。追い越し車線を90キロのスピードで走り続ける車(B)がいる。走行車線を走る車と並走する時間も長く、追い越すこともできない。先を急ぐ車(A)が(B)のすぐ後ろで走っている。(A)としては急ぎたいが、あおり運転はしたくないのでパッシングもクラクションも使っていない。イライラだけが募る。(B)はすぐ後ろにいる(A)が自分をあおっているように思える。 ※80㎞/時といった制限のこと


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    批判側(A)の思い
    「一般道より早く移動できるから高速道路に乗ったのに、これじゃ意味がない。」「追い越し車線をトロトロ走って塞ぐなよ。」

    ルール厳守側(B)の思い
    「制限速度を守っているのになんであおられなきゃいけないんだ。」「頭おかしいのか。絶対譲らないぞ。こっちはルールどおりに走っているんだ。」

    【2】一般道にて

    制限速度50キロの片側1車線。40キロのスピードで走り続ける車(B)がいる。後ろは大渋滞。でもその車は道を譲るでもなく、ただ同じスピードで走り続けている。対向車が絶えないため、後ろを走っている車(A)は追い越すこともでず、イライラだけが募る。


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    批判側(A)の思い
    「早く目的地まで行きたいだけなのに。いつもならだいぶ先まで移動できているはずだ。」「そんなにゆっくり走りたいならせめて譲れよ。そもそも後ろを全然見てないだろ。お前が渋滞の原因だぞ。」

    ルール厳守側(B)の思い
    「制限速度を守っているのになんであおられなきゃいけないんだ。」「頭おかしいのか。絶対譲らないぞ。こっちはルールどおりに走っているんだ。」

    では法的な話を中心に書いていきます。

    【1】高速道路にて
    結論から言います。
    ルール厳守側(B)の完敗です。
    「通行帯違反」という明確な
    「違反」なのです。
    (道路交通法 第20条 通行帯違反)

    高速道路では、追い越し車線を走り続ける行為は原則として認められていません。道路交通法では、車両通行帯のある道路では、「最も左側の通行帯を通行する」のが基本です。右側の追い越し車線は、「追い越しのため」に使うものであり、追い越し車線を走る車がいない状態が理想とも言えます。よく問題になるのは、追い越した後も右側の追い越し車線を走り続けてしまうことです。集中力が欠けていたりすると私もたまにやってしまいます。これは「通行帯違反」として取り締まり対象になることがあります。

    1. 追い越す車がいないのに
      右車線を走り続ける
    2. 左車線が空いているのに戻らない
    3. 制限速度より遅い速度で
     「蓋をする」ように右車線を占有する

    これらは青切符を切られる可能性が高いということです。1.については2㎞以上の距離を走っていると覆面パトカーに捕まる、というような話もあります。

    ところが今話題にしているのはこの「うっかり右側を走り続けてしまう」という例ではありません。走行車線も追越し車線も関係なく、一般道路のような感覚で追い越し車線を走っている車が問題なのです。車線の区別がついていないのです。

    友人や知人でもこの「通行帯違反」を知らない人がたまにいます。彼らの言うことはいつも同じです。「制限速度守ってるんだよ?自分は悪くない。ルール守ってるじゃん。」いやいや、悪いのはアナタです。そもそもルール守ってません。守っているのは制限速度だけ。もうこのパターンは話としては簡単なのです。「通行帯違反」を知らないだけだから。多くの人に知ってもらわないと。みなさんも是非、周りの人に話してほしい!

    まれにSNSでもこの「通行帯違反」について書いてくれている方がいますが、コメントの山に埋もれてしまい、読んでいる一部の方にしか伝わっていないように見えます。ちなみに知らなかった人は「え?そうなの?」というような反応が多いですね。

    もちろん、こういう車を放置すれば以下のような影響が出ます。

    ・遅い車の後ろで渋滞が発生する
    ・あおり運転を誘発 してしまう
    ・車線変更する車が増え、
     事故のリスクが高まる
     (この遅い車を避けるため。
      最悪、左車線から抜くことになる。)

    私は「あおり運転」という言葉がなかった時代に仕事で高速道路を使うことが多かったため、こういう「遅い車」には遠慮なくパッシングしていました。今の時代はそれもできず、ストレスしかありません。

    まとめると、高速道路で追い越し車線を塞いでいる車両はルール違反の上、あおり運転や事故、渋滞を誘発する非常に迷惑な存在であり、ただちに反省するとともに二度としないと約束していただきたい!となります。あ、わかりにくいですか?どけってことです。

    参考までにニュースにもなった逮捕事例を載せます。

    ◆追い越し車線を約7km走り続け、現行犯逮捕(沖縄・2026年)
    2026年2月、沖縄自動車道で軽乗用車が約7kmにわたって追い越し車線を走り続けていたとして、道路交通法違反(通行帯違反)の疑いで現行犯逮捕されました。報道では、覆面パトカーが追尾して停止させた後、運転者が青切符の受け取りを長時間拒否したことなどが、通常の反則処理ではなく逮捕に至った背景として説明されています。本人は「わざとではない」と話していたとされています。

    ◆追い越し車線を約2km走り続け、現行犯逮捕(広島・2026年)
    2026年2月、広島の山陽自動車道にて追い越し車線を2キロ走り続け、停止の指示に従わず、20キロ先まで逃走した運転者が現行犯逮捕されました。男は取り調べに対し、「言いたくない」と話しているということです。.速度違反や飲酒運転といった他の違反行為はありません。

    この2つの事件、ルール厳守側(B)の典型のようですね。詳細はわかりませんが、「わざとではない」「言いたくない」という発言からもルール知らなかったのかなと思えます。

    揥き
    【2】一般道にて
    これは少し解説が必要です。

    道路交通法では高速道路のような明確な「最低速度規定」を定めていません。40キロよりさらに遅いスピードで走ったとしても直ちに違反となることはありません。「低速走行」に関して罰せられることはないということです。

    ただし、以下によって指導や警告を受けることがあります。

    「他の車両の正常な交通を妨害するおそれ」がある運転、「安全かつ円滑な交通」を阻害する運転、正当な理由のない著しい低速走行

    特に問題なのは「意図的に後続車を妨害するため低速走行する」です。「故意」に行っている場合、「妨害行為」(あおり運転)とされることがあります。前を走っていてもあおり運転です!

    なお、道路交通法 第27条 では「他の車両に追いつかれた車両の義務」を定義しており、簡単に言えば「追いつかれたら追い越させる」という内容です。故意の低速走行はこれで取り締まることはできます。

    つまり、一般道での低速走行は即青切符ということはないものの交通の流れを妨げるような運転であれば指導や警告がある、ということになります。

    実はここが最大のポイントになります。ーーー「安全かつ円滑な交通」を阻害する運転ーーーこれが問題だということです。

    「安全と円滑」という言葉は道路交通法に35回も登場するほど大事な言葉です。道路交通法の最初の一文はこうなっています。

    (目的)
    第一条 この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。

    安全=事故を起こさない・危険を避ける
    円滑=交通の流れを不必要に妨げない

    警察は交通の安全と円滑を図りたい、と言っているわけです。「安全」も「円滑」も両方です。

    そして教習所ではこれをもとに教えています。覚えていようがいまいが、免許を取る際に全員に教えていることです。ちなみに私は30年以上前に山梨県のとある教習所で免許を取得しましたが、学科(講義)で覚えているのはただ一つ、この「安全と円滑」です。「運転するようになればわかる。とにかくこの2つの単語を忘れるな」ということを強く言われました。甲州弁丸出しの名物講師がいまして、「な、わかったけ?安全と円滑、両方大事っつーこんずら!」(わかったか?安全と円滑、両方大事ということだぞ。)みたいに言われたのを何となく記憶しています。教え方が上手だったからこそこうして覚えていますし、そういう運転を心がけてここまで来れました。

    教習所では「事故を起こさなければいい」ではなく、『安全を確保しながら、他の交通を妨げない運転』をするように、という説明をしているようです。「安全」と「円滑」はどちらも重要ということです。どちらが優先ということではありません。

    もうおわかりだと思いますが、「低速でも制限速度内だし、安全運転だ。何が悪い?」というルール厳守側の主張は全く的外れとしか言いようがないのです。ルール厳守側の主張は常に「安全」のみに偏っており、「円滑」はそっちのけです。バランスが悪いのです。道路は一人のものではないわけで、こんな詭弁が通用するわけがありません。自分勝手なドライバーがいると渋滞が発生したり、周りをイライラさせたり、無理な運転を強いたり、ということが起こり、スムーズな流れは阻害されます。どうもこういう方たちは「周りを見て気を使って運転する」という考えがない、もしくは少ないように見えます。

    運転が上手いのは「速い」とか「テクニック」とかではないのです。周りをよく見て流れに乗れる人。「安全」に「円滑」に走れる人。

    安全運転して何が悪い!という人ほど周りを見ておらず、こちらが慌ててよけたから事故になっていない、なんてことも何度もあります。アナタの運転する遅い車を追い越そうと車線変更「させてしまっていること」にまず気づいてほしい。アナタが事故を誘発させているのですよ。本来車線変更は少ないほど「安全」なのですよ。アナタの「低速安全運転」は全体でみれば全く安全ではありません。

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    参考までにニュースにもなった事例を載せます。

    ◆神奈川清川村の「10キロおじさん」

    2019年前後に大きく報道されています。時速5〜10km程度という、歩行速度に近い低速で走る。片側1車線や追越ししにくい道路で後続車が長い列になる。問題視された行動としては以下。
    ・後続車が来ると減速する
    ・追い抜こうとすると
     クラクションを鳴らす
    ・追い越されそうになると速度を上げる
    ・ハイビームを使う
    「逆あおり運転」と表現されることもありました。どうやらその後警察から注意を受けておとなしくなったようです。

    【まとめ】
    遅い車がどんな言い訳をしようとも、円滑な交通を妨げている時点で「注意を受ける側」なのです。SNS上で度々発生する批判側(A)とルール厳守側(B)の対決の中で実はいい線いっている方もいます。こういうやり取りです。

    ~~~~~~~~~
    批判側(A)
    「ルール守っているのはいいけど、
    周りに迷惑かかってるよね?」
    ルール厳守側(B)
    「いや、ルールは守っているんだから
    問題なし!」
    ~~~~~~~~~

    残念ながら「まずはルールでしょ?」に押し切られているのです。でもルール厳守側(B)の言っている「ルール」の解釈が実は勘違い。ここを誰も訂正できないので批判側(A)が黙ってしまうのです。

    そもそも、ルール厳守側(B)の言い分は本質からかけ離れてしまっています。ルール(道路交通法)を守ることが目的ですか?違いますよね。そこでもう一度書きます。

    (目的)
    第一条 この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。

    ルールの目的は「安全と円滑を図って危険を防止する」なのです。それを守ると言うなら安全と円滑を図ってよ!ルール厳守側(B)が大義名分としている道路交通法の目的すら理解していません。

    先ほどのやりとりは以下のように完結します。

    ~~~~~~~~~
    批判側(A)
    「ルール守っているのはいいけど、
    周りに迷惑かかってるよね?」
    ルール厳守側(B)
    「いや、ルールは守っているんだから
    問題なし!」
    ć­Łč§Ł
    「いや、円滑な運転をしていない時点で
    ルール守れていません!!」
    ~~~~~~~~~

    一般道で遅く走るのは自由です。ただし、交通を円滑にするための努力が必要です。あ、わかりにくいですか?どけってことです。

    もしルール厳守側(B)の言い分が正しければ、いまだに「10キロおじさん」は走り続けているはずですよね。



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