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仕事で折れた自信は、仕事で取り戻すしかない

    この仕事をしていると、どれだけ注意していても、事故や違反は起きる時には起きてしまう。

    もちろん、起こさないのが一番だ。

    でも人間がやる仕事だから、ゼロにはできない。

    私は幸い、大きな事故は経験していない。

    それでも、縁石に車を擦ってしまったり、小さな事故を起こしたことはある。

    ある日、中央分離帯のポールに車体を擦ってしまった。

    疲れが溜まっていた時だった。

    幸い、人を巻き込む事故ではなかった。

    それだけが救いだった。

    それでも事故は事故だ。

    警察へ連絡し、必要な手続きを終え、営業を中断して営業所へ戻ることになった。

    正直、かなり落ち込んでいた。

    自分のうっかりだ。

    情けなかった。

    疲れていたこともあって、

    「私はこの仕事に向いていないんじゃないか」

    そんなことまで考えてしまっていた。

    営業所へ戻ると、たまたま年配の先輩と顔を合わせた。

    普段はすれ違えば挨拶をする程度の人だ。

    でもその日、私は思わず愚痴をこぼしてしまった。

    「車を擦ってしまって……。」

    「私、この仕事向いてないのかもしれません。」

    すると先輩は笑いながら言った。

    「そんなこと言うなよ。」

    「誰だって経験する失敗だよ。」

    「それで向いてる向いてないなんて言ってたら、この仕事、辛いだけだぞ。」

    そして続けた。

    「とにかく気持ちを切り替えるんだよ。」

    「自分なりのやり方でな。」

    「俺はそのやり方で、三十年以上この仕事をやってきたよ。」

    さらに、

    「今日はもう早退でもいい。」

    「たっぷり休憩したっていい。」

    「体も心も休めて、切り替えて、また乗ればいいじゃないか。」

    そう言ってくれた。

    私は泣きそうになった。

    事故を起こしたことは変わらない。

    反省もしなければいけない。

    でも、その一言で救われた。

    そうか。

    私はまだ終わったわけじゃない。

    またハンドルを握ればいいんだ。

    そう思えた。

    今でも落ち込むことはある。

    仕事で自信をなくすこともある。

    でも、あの時の先輩の言葉を思い出す。

    仕事で折れた自信は、仕事で取り戻すしかない。

    だから私は今日も、またハンドルを握る。

     
     

    凪

     
     
    大都会東京。 女性タクシードライバー。 今日も誰かの帰り道を走っています。 後部座席で出会った人たちとの忘れられない出来事や、街の中で見つけた小さな人間模様を綴っています。

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