
家族をもてなす「ケ」のごはん|1.優しく沁みる、豆腐の卵あんかけ
とある日の21時。
窓の外からしとしとと雨の音が聞こえる中、夫からメッセージが届いた。
『今日、帰ったら何か食べれる?』
おや。
てっきり外で済ませてくるものだと思っていたので、正直、ごはんの用意はしていない。
けれど、事前の連絡もなくこんな連絡をするということは、きっと「家のご飯が食べたい日」なのだろう。
文字の向こうに、疲労の色を感じる。
『お疲れさま!ご飯あるよ!』
そう返信して、台所へ向かった。
「今から作るよ」と言うと、気を遣って「じゃあ外で食べていくよ」となりがちだ。
そのため、現時点で何もなくても、まずは「ある」と答えてみる。
思いやり半分、外食費削減の狙いが半分。
いや、後者の方が少し勝る。
勢いよく返事をしたものの、冷蔵庫の中は週末の買い出し前でガラガラだった。
残っていたのは、豆腐、卵、そして少しの野菜だけ。
しかし、夜遅い時間の胃袋を満たすには、むしろ最強の布陣だ。
最近夜遅くまでの仕事が多く、外食続きで疲れている夫の胃。
そして、雨で少し肌寒い夜。
ダイニング隣の和室で、すやすやと眠る娘。
本日はするっと食べられて、体の芯から温まる一皿を、娘を起こさぬように、さっと作っていくことにする。
豆腐の卵あんかけ

【材料(1~2人分)】
・豆腐…1/2丁
・卵…1個
・すりおろし生姜…1かけ分
・炒りごま・小ねぎ…各適量
・水…300ml
・鶏がらスープの素…大さじ1
・水溶き片栗粉(片栗粉 大さじ1 + 水 大さじ2)
【作り方】
1.豆腐を食べやすい大きさに切る。細かくても、大きめでも、スプーンですくって入れてもOK。この日は味が絡みやすいよう、2cm程にしていく。
2.小鍋に水、鶏がらスープの素を入れて熱し、沸騰したら豆腐を崩れないように優しく入れる。
3.中火で3分ほどグツグツと煮たら、すりおろし生姜を加える。(ここで味見をして、足りなければ塩で調整する。)
一度火を弱め、水溶き片栗粉を少しずつ加えながら混ぜて、好みのとろみをつける。
4.再び火を強めてスープを波立たせ、溶き卵を2〜3回に分けて「の」の字を描くように流し入れる。スプーンなどでさっくりと混ぜる。
5.仕上げに炒りごまを加えてひと混ぜし、器に盛り付けて小ねぎを散らす。
▼ 美味しく食べるポイント
豆腐は「温める」ではなく「煮る」: 豆腐の中の水分を外に出すイメージでしっかり煮ると、食感がぷりっと仕上がる。
お好みでアレンジを: お好みで黒胡椒やごま油、ラー油、酢をプラスするのもおすすめ。茹でたうどんや春雨にかけたり、ご飯に乗せて天津飯風にしても美味しい。
生姜の良い香りが立ち込める中、台所の窓から、車庫に入る車のライトが見えた。
今から盛り付ければ、食べる頃にちょうどいい温かさになる。
よしよし、計算通りだ。
出来上がった豆腐あんかけは、ぬくもりのある陶器の器に盛り付け、木のスプーンを添える。
木の質感は、不思議と料理まで優しく見せてくれるからありがたい。
素朴な料理だからこそ、器の力を最大限に拝借する。
「ただいまー」
「おかえり。ちょうど今出来たよ。」
「食べる!」
手を洗って急ぎ足でテーブルについた夫は、ひと口食べるなり目を丸くした。
「え!なにこれ、めちゃくちゃ美味しい!」
そしてひと息ついて、
「こういうのが食べたかった~。」
と呟く。
その言葉に、心の中でガッツポーズをする。
材料費は100円以下、調理時間はわずか5分。
夜遅くても重くならないように豆腐と卵でふんわり仕上げ、冷えた体を温めるために生姜を効かせる。
なんてことはないシンプルな料理ではあるが、
凄まじい勢いで食べる様子を見れば、どうやら今日食べるには一番のご馳走だったのだろう。
夫曰く、あったかい味がするのだそうで、
その瞬間の、食べる人のことを想って作った気持ちは、不思議と料理に現れるようだ。
慌ただしい毎日の中ではつい見落としてしまいがちだが、
そんな日常の小さな工夫こそが、「おもてなし」なのだと思う。
特別な材料も、手間もかけなくていい。
「今日も一日、お疲れさま。」
そんな気持ちが自然と伝わる食卓を、大切にしていきたい。