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終末天使 反転  with music

    Nagi / Story Music

    日常の朝だった。

    同じ朝。
    天気が良く、気持ちがいい。
    いつもより、少しだけいい朝だ。

    瑞樹は通学路を歩いている。
    行き交う人の声が耳に心地いい。
    人と車と自転車であふれる、その道。

    着慣れた高校の制服。
    肩にかけた重い鞄。
    友達とお揃いのキーホルダーに触れる。

    いつもと同じ景色。
    今日のお昼は、学食だ。
    月曜だから、エビフライ。
    大好きな推しの曲を聴きながら、
    歩くいつもの道。

    視界のすぐ横を、子犬が走る。
    リードを首から引きずっている。
    その後ろを、まだ小さな男の子が走ってくる。

    嫌な予感が、胸に引っかかる。
    朝の通勤時間は、車の速度が速い。
    ふと視線を上げると、
    一台の車が、速いスピードのまま進んでくる。

    犬に追いついた男の子が、
    走った勢いで道路へ飛び出していく。

    瑞樹は考えるより先に走りだした。

    手を伸ばす。
    腕をつかんだ。
    よし。

    足を踏ん張る。
    腕をひく。

    歯を食いしばる。
    腕にありったけの力を籠める。

    すぐ近くまで、車が迫る。
    「うあああっ!」

    その瞬間、
    胸の奥から祈りがこぼれた。

    どうか、

    間に合って。

    その祈りは、
    細い糸になって空へ伸びていく。

    あまりにも細く、
    今にも切れそうな糸。

    ——

    天使が地球を見ていた。
    羽が黒くなり、重く開いてうなだれている。

    そこへ、
    一本の糸が届く。

    消えそうな祈りの糸。
    誰も気づかないほどに、細い細い糸を、
    黒い天使はうつろな目で、見つめた。

    迷いなく、手を伸ばす。

    黒い天使が糸に触れた瞬間。
    世界が反転した。

    ——

    クラクション。

    白い光。

    衝撃。

    そして、静寂。

    ——

    瑞樹が目を開ける。

    地球が、
    手のひらで回っていた。

    「あいつ。堕ちたのか」

    顔をあげると、驚いた顔の天使がいた。
    白い羽が生えている。
    こちらを見た。

    すべてを理解したかのようにそっと言う。
    「ようこそ、
    君が新しい観測者だ」

    「え....…。あ、子供は?犬は?」

    天使は目を見開く。
    静かに瑞樹を見つめて、目を細める。

    少しほほ笑みながらゆっくりと口を開いた。
    「助かったよ。
    死んだのは君の体だけだ」

    瑞樹は息を呑む。

    「魂は、あの地球バカが救い上げたようだね」

    「……え?」

    「いいかい。
    天使のルールは、もう君の魂に刻まれている」

    「二つ以上破れば、堕ちる。
    気をつけるんだよ」

    瑞樹は言葉を失ったまま、地球を見つめた。 


    ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
    曲もよかったら聞いて下さい。

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