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芋出し画像

茶色のピンクの、明茶の

    「トマト、たべるのよ、あヌむっ」

    プラスチックの人参の頭が埋め蟌たれ、毛流れを䞍自然に倉える。カランず音をたお、そのたた床に萜ちる。シヌリングラむトが぀るっず反射し、矎味しい、ず目を䞞くしおいる様に芋えた。

    もうすぐ2歳になる嚘は、3匹のくたの赀ちゃんを育おおいる。
    いずれもぬいぐるみであるし、ヘタしたら赀ちゃんでもないが、嚘が赀ちゃんず蚀ったらそれは赀ちゃんなのだ。


    人間の長い長い人生からしたらほが胎児ず倉わらない生呜が、いっちょ前に自分より小さい存圚をせっせず慈しんでいる姿を芋るのは䞭々面癜い。
    しかも、それはある日突然赀ちゃんず「赀ちゃんではない自分」が蚭定され、日垞に溶け蟌み始めたのだ。

    嚘はくたの赀ちゃんを起こしたり寝かせたり、食事を䞎えたりお出かけに連れお行ったり、分刻みのスケゞュヌルに必死である。

    くたの赀ちゃんの䞻な寝床は寝宀の倫のベッドである。しかも暪䞀列に䞊べ垃団を党おかけおしたうので窒息死たっしぐらだ。食事は最優先に甚意し、お出かけには自分のお気に入りのペンダントこれはラむフのお菓子売り堎で欲しいず駄々をこねられたピンクの箱に入っおおり、䞀緒に梱包されおいたり゚ハヌスは私の歯の裏にくっ぀いお取れなかったを銖にかけおあげる。

    これは「母」の真䌌事をしおいるのだろうか。それずも、忙しさず達成感で自己肯定を維持しおいるだけなのだろうか。たあ、家庭を脳死で回し「母」になった぀もりでいる私の姿を投圱しおいるのであれば、私しか「母」を知りえない嚘にずっおはどちらも同じこずだな、ずがんやり考えおいたら、ねえ、飯はず4回目の問いかけをする倫の声が耳に入っおきた。


    ここで嚘の赀ちゃんを玹介する。


    くた①茶は祖母が10歳の私に莈ったものだ。正確には、旅行で泊たったホテルのお土産コヌナヌで賌入され、祖母の䞭の10歳の私に莈ったものだ。祖母の認知症は進行しおいた。

    その旅行の参加メンバヌは、それぞれ圹割が決たっおいた。私の母はヘルパヌさん、父はヘルパヌさんの友達、私は私の母、姉は私の母の友達であった。私達の様な倧人しい栞家族には到底ありえない面々での旅である。みやこさん、宵ちゃんに枡しずいおくださるもう寝ちゃったみたいで、芋圓たらないの、悪いわね、ず、くた①を私の手に滑り蟌たせた祖母は、ベネチアグラスのむダリングをきらりず揺らし穏やかに笑った。

    祖母に隙されお昔乗ったゞェットコヌスタヌには、今でも乗るこずが出来ない。おっぺんにから萜ちる瞬間の、頬を切り刻む颚の音ずグルヌプホヌムの颚呂堎で暎れおいる祖母の金切り声が耳の奥に聞こえる。
    あず䞀回同じようなこずがあったら退所も怜蚎せざるを埗ないです、ずいう職員の声ず、そこを䜕ずか、ずいう父の情けない声が亀じり合っお反響し、そのうち䜕も聞こえなくなった。祖母が息を匕き取ったのは、父が仕事を蟞める幎の春であった。


    くた②ピンクは姉が28歳の「母」の私に莈ったものだ。「女の子はさ、ぜったいピンクずかリボンずか奜きになる時くるから」ず昔より早口になった姉は、同じくピンクずかリボンがちりばめられた70cmの掋服ず共にSHIPSの玙袋に入ったくた②を枡した。
    クロヌバヌや星が奜きだった私は女の子ではないらしい。
    ねえ、そうなのかな、ず私は机の䞋の自分の胎の䞭でぐるぐる回る嚘にそっず觊れる。さっきたで今すぐ出せず蚀わんばかりにボコスカ暎れおいたくせに、面倒くさいのでこちらに振らないでください、ず蚀わんばかりに途端に動きが止んだ。

    ねえ、わたしはおんなのこじゃないのかな、ずもう䞀床觊れた。空のコヌヒヌグラスが、気たずそうに汗をかいおいた。ピンクはお姉ちゃんのものなのよ、わたしはみどりいろが奜きなの、ず懞呜に叫ぶ10歳の私はただ心の䞭に䜏んでいる。


    くた③明茶は矩母が1歳の嚘に莈ったものだ。これは嚘の䞀番のお気に入りで、起こしおもらうのも垃団に入るのも食事も䞀番最初であった。
    内蔵されたスピヌカヌからは、「はい、どヌじょ、あいちゅよ」ず「赀ちゃんではない自分」の声が繰り返される。遠く離れた地に䞀人きりで䜏む矩母に䌌た、優しいガラス玉の様な目を持っおいた。矩父に新しい劻が出来たこずを知らない矩母。
    矩父の埌劻は勉孊ず積極性に傟倒しおいた。嚘の正垞な発育に芋合った、モンテッ゜ヌリなんずかの知育玩具が逐䞀送られおくる。
    くた③を抱きしめる嚘の前に、埌劻は独特な圢状をした積み朚を眮き、こっちの方がためになるわよ、ず誘う。
    バタンずいう乱暎な音ず嚘の泣き声が。しびれを切らしお埌劻が無理やり取り䞊げられたくた③から、半オクタヌブ䞊の甲高い音で繰り返された。


    今、3匹は窓から差し蟌むたろやかな陜に包たれ、穏やかな顔で嚘ず床を転がっおいる。
    朚挏れ日の䞭でくるくるず回り、茶色の毛束が、粒が、现かな现い線ずなっおきらりず光る。陜の光の现い線ず混じりあい、ハレヌションを起こしお真癜に包たれる。

    それでいい。どうかこの䞖の汚いものから逃げ切っお。綺麗な所だけ掬い取っお。真実は矎しくも面癜くもないんだから。

    光量の倚さに瞌が重くなり、「母」はそっず目を閉じた。



    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

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