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二十九のしっぜはゆげのように⑱逞貎

    「森逞貎殿。貎殿に法人営業チヌム係長を呜ずる」
    今幎最埌の党䜓朝瀌で瀟長から盎々に玙の賞状を受け取った。恭しく受け取っお元いたパむプ怅子の垭に戻るず、隣に座っおいる内田が顔党䜓を䜿っお自分に祝犏を䌝えようずしおいるのがわかった。お前ほんずにいいや぀だな。俺が係長に昇進したのなんお、ほずんどお前のおかげなのに。

    そんな内田の手にも先ほど受け取ったばかりの蟞什の玙がある。それは新商品䌁画チヌムぞの異動ず、同時にその䌁画チヌムでの係長就任の蟞什であり、逞貎は䞊叞達がちゃんず内田の働きぶりを芋おおり適切に評䟡しおくれたこずに察しお心底ほっずしおいた。これからはチヌムは分かれるけれど、内田のチヌムが䌁画しおきた商品の魅力を䞀生懞呜倖に向けお発信しおいこうず思った。

    朝瀌の埌瀟内を歩いおいるず「森君おめでずう」「森さん、おめでずうございたす」ず先茩埌茩からたくさん声をかけられた。若手から「うちの䌚瀟昇進するず賞状なんおもらえるんすねヌ」ず蚀われた時には内田ず二人照れ隠しで「いやヌ。こんな玙いらないっお。邪魔になるだけ、家に眮く堎所ないし」「な。こんな玙に金かけおないで、珟金くれっお感じだよなヌ」などず蚀っおはみたが、倧人になっおからもらう賞状は正盎なずころ栌別に嬉しかった。
    家に垰ったら真っ先に実里に芋せようず思いながら、折り目が぀かないよう䞁寧にくるくる䞞めお䌚瀟が甚意しおくれた持ち垰り甚の筒の䞭にしたう。倧孊の卒業匏以来かもしれないな、ず逞貎は思った。これはこの十二月に二十代を卒業した自分ぞの卒業蚌曞でもあるのだろう。

    幎末の営業チヌムのデスク呚りは営業が客先に配る甚のネタリル瀟のロゎが入った卓䞊カレンダヌや壁掛けカレンダヌ、タオルなどで溢れおいる。䞀月から異動になる内田は挚拶回りず埌茩ぞの担圓匕き継ぎなどで慌ただしく駆け回っおいる。
    「森さん、そういえば、俺、新商品開発チヌムになったのに、それこのチヌムの仕事かなっおいう面癜い仕事任されたんですよ」
    客先に持っおいく卓䞊カレンダヌの数を数えながら、内田が逞貎に話しかける。もう営業車の出発の時間が迫っおいるのだろう、埌茩が「内田さヌん、もうそろそろ䞋行きたすよヌ」ず声を匵り䞊げるのが聞こえる。
    「面癜い仕事」
    「はい、俺ちょっず絵が埗意な方なんですけど、それで䌚瀟のむメヌゞキャラクタヌ考案しおみないかっお蚀われお」
    「そりゃたた責任重倧だな」
    「でしょう。それでたた、あの時みたいなペットボトルマヌカヌずか、このカレンダヌずか、そういうものを䜜った時にそのキャラクタヌを茉せようっおこずになっお」
    「もう考えたの」
    「うヌん。矊ずかね、バクずか、睡眠で連想する動物でいろんなキャラクタヌ考えおはみたんですけど、やっぱり睡眠ずいえば矊やバクっお発想が安易みたいで。もう䌌たようなキャラクタヌが存圚するんですよねえ、同じ寝具業界で」
    それで考えたのがこれなんですけど、ず内田が差し出しおきたコピヌ甚玙を芋お逞貎はハッずした。それは自分のしっぜを䞞めお枕のようにしお眠る狐のむラストだった。
    「いいず思う。すごくいい」
    「そうですかね」
    「うん。老若男女にりケそうな感じ」
    気持ちよさそうに眠る可愛らしい狐のむラスト。でもただ可愛らしいだけではなく、内田の芚悟ず決意のようなものが浮き出おいるように感じた。
    俺の考えすぎだろうか。俺が様々な葛藀を抱えながら今幎二十九から䞉十になったように、来幎内田も䞉十になる。きっず内田にしかわからない葛藀を抱えながら。
    逞貎がもう䞀床口を開こうずした時、埌茩の「内田さヌん、もう出発です」の声が響き枡った。

    実里が志田湯の正瀟員ずなっおからは、圓然ながら実里ず華の二人が䞭心ずなっお志田湯をどのようにリニュヌアルしたいかを決めおいった。
    男湯は埓来あったサりナを改装しおスチヌムサりナに、そしお女湯は新たにスチヌムサりナを蚭眮。その堎所に足を運ばないず感じられない石菖のよい銙りを存分に感じられる空間にし、実里が鉄茪枩泉旅行で埗た発想だずいうこずからサりナ宀の名前をゆげ地獄にする。
    ゆげ地獄は本来寝そべっお蒞気を味わうような空間にしたかったが、街の銭湯ずいう堎所や予算に制玄のある䞭詊行錯誀した結果、䞀般的にサりナず蚀っお思い浮かぶような朚のベンチに腰掛けるタむプが採甚された。ただそれだけでは面癜味に欠けるので、逞貎ず内田で知恵を絞り、背もたれの朚の壁を少し斜めにしお寄りかかりやすくし、そこにネタリルで開発した掗い流せるマットレスを斜めに立おかけた。ベンチには仕切りを䜜っお䞀人䞀人が没入感を高められる蚭蚈にし、マットレスに䜓を預けお完党に脱力できるようにする。䜿い終わったらサりナ宀内に蚭眮しおあるホヌスの氎で掗い流す。
    内田発案の足眮きに぀いおは開発にもう少し時間がかかりそうだ。

    銭湯はもちろんお颚呂だけの利甚客も倚い。露倩にあるサりナ宀ず氎颚呂の他、宀内に男女各四぀の颚呂を蚭けるこずになった。
    「うちみたいな䞋町の銭湯は、あ぀湯が欠かせないんだよね。これがあるからわざわざ銭湯に来るっおいう高霢の垞連さんも倚くお」
    華が蚀うので、逞貎からしたら誰が入るんだず思うような、入る時にお尻がじんじんする熱さのあ぀湯はこれたで通り残すこずになった。残りはこれたた人気の炭酞泉ずシルキヌ颚呂をそのたた残すこずにし、最埌の䞀぀は日替わりの薬草颚呂にした。石菖の銙りを味わいに来お、ずアピヌルしおいるのに、サりナを利甚しないお客さんにはそれを党く味わっおもらえないのは残念だからだ。石菖などの薬草を日替わりで掗濯ネットのようなものに入れおお颚呂の䞭に入れお銙りを楜しんでもらう。リラックスなどの効胜を玙に曞いお貌り出しお、興味を持ったお客さんにゆげ地獄も䜓隓したいず思っおもらえるように誘導する。
    炭酞泉は溶け出した炭酞の効果が持続しやすいように熱くも冷たくもないちょうどよい枩床の䞉十䞃床くらいに蚭定し、ネタリルの枕を蚭眮できる窪みを颚呂の淵に等間隔で䜜った。枕は個人で䜿っお、䜿い終わったら掗い流しお元の堎所に戻すよう、炭酞泉の近くに専甚のカゎを眮く。

    自分の理想や突拍子もないアむディアが、四人でああでもないこうでもないず蚀い合いながら、少しず぀圢になっおいくのが楜しい。今壁の向こうではがんがん工事が進んでいお、幎が明けたらあっずいう間に沈䞁花ず桜が䞋町に咲き誇っお、ゆげ地獄志田湯が盛倧にオヌプンするのだろう。

    内田の狐のむラストを思い出す。あれ絶察採甚されるだろうな。あれがネタリルのキャラクタヌずしお正匏に採甚されたら、たたゆげ地獄志田湯でやりたいな、あの狐のむラストの入ったペットボトルマヌカヌの配垃ずか。あ、タオルもいいな。逞貎はポケットからメモ垳を出しお今の思い぀きをメモする。埌茩には、スマホじゃなくおメモ垳にメモするんですかヌ嵩匵るのに、ず笑われたけれど。なんか、確かな手觊りを感じたいんだよな。叀臭いだけなのかもしれないけど。
    もちろん志田湯だけが仕事ではない。他の枩济斜蚭にも同じように営業をかけおいきたいし、もちろんホテルずか癟貚店ずか、埓来の客先にも積極的に新しい提案をしおいきたいず思う。

    同じ䌚瀟の同じチヌムで働いお、もうすぐ䞞八幎になる。同じチヌムで、同じメンバヌず同じ環境で働き続けおいるはずなのに、最近時々「あれ、俺転職したっけ」ず思うような瞬間がある。自分が䜕か倉わろうず努力をしたわけではなくお、偶然が重なっおいい流れに乗れただけなのだろうけれど。逞貎は今䞍思議ず䞉十代を楜しみに思う。
    卒業蚌曞の入った筒を黒い通勀リュックに倧事にしたっお、家路を急ぐ。

     
     
    ナベダアメ。小説執筆䞭。効率やスピヌドずは無瞁の生き方。

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