メインコンテンツへスキップ
見出し画像

メーカーにとっての名刺アイテム 『Maker Chip』を作ろう ~3Dプリンタ×QRコードで配れる作品作り~

    導入

    最近nomad sculptでフィギュア作成に手を出しはじめたなべくらです。今回のタイトルを見て「今さら Maker Chip!?」と思う方もいるかもしれません。私もその一人だったのですが先日3Dプリンタ系のイベントに行ったら、意外とMaker Chipを知っている人が少なくてびっくりしました😭
    せっかくこんな素敵な“交換文化”があるのに、知られていないのはもったいない…!ということで、私なりのMaker Chipの作り方をざっくりまとめて共有します。

    画像
    私のMaker Chip

    この記事の想定読者

    • 多色印刷できる3Dプリンタを持っている(または使える環境がある)

    • CAD初心者

    • イベント用にMaker Chipを作ってみたい/イベント用に用意したい

    • 3Dプリンタを買ったが、何を作ったら良いかわからない

    今回使うソフトは以下です(基本無料):

    • CAD:Autodesk Fusion

    • スライサー:Bambu Studio(Bambu Lab)

    • デザイン:Affinity Designer

    1章:Maker Chipとは?

    Maker Chip(メーカーチップ)とは、3Dプリンタ愛好家が“名刺代わり”に作って交換する、コイン状(トークン状)のアイテムです。
    表面にはロゴ・キャラクター・作品モチーフなどを入れて、裏面には QRコードでSNS/ショップ/ポートフォリオへリンクさせるのが定番スタイルです。

    作る人によっては、動くギミックを入れたり、NFCタグを内蔵して「スマホをかざすだけ」でリンクを開けるようにしたりと、かなり自由に遊べます✨

    Maker Chipが生まれた背景と「ゆるい規格」

    Maker Chipは、K2 Kevinさんが2024年ごろにテンプレートと一緒に「こういう規格で揃えると交換しやすいよね」という形で広めたのが、大きなきっかけのようです。
    厳密な標準規格というより、みんなで揃えると気持ちいい共通フォーマットという温度感が近いです✨

    よく参照される基本仕様はこんな感じです:

    • 直径:40mm

    • 厚さ:3.0mm推奨(最大3.5mm)

    • 裏面にQRコードを入れてリンク誘導

    個人的に気に入っているところ

    Maker Chipの良さは、ただの連絡先じゃなくて、「作品として渡せる」ところだと思っています。さらに、

    • 紙の名刺より話題になりやすい

    • 作り手の趣味・技術・美意識が伝わってくる

    • 机に置かれたり、コレクションされたりして“残りやすい”

    • そして何より、「なにこれ!かわいい!!集めたい!!!」という物としての愛着が発生する

    という点が気に入っています✨

    私がこの記事を書いた理由(と想い)

    正直、特殊なイベントに行かないと交換する機会がなくて、最近「もしかして流行り終わりかけてる…?」と感じることもあります😭
    でも私はこの文化が大好きです。

    普通の名刺より個性が出るし、物として可愛い。なにより、交換できると嬉しい。
    だからこの記事を書きます。作る人が増えたら、交換できる相手も増えるので、みんなにもぜひMaker Chipを作ってほしいです。

    2章:まずはイラストのSVGを作る

    この章では、Maker Chipの表面に入れるイラスト(ロゴ/キャラ)を、Fusionで使えるSVGにします。
    ここはMaker Chipの“顔”になる部分で、人との違いがいちばん出ます。気に入った図柄ができると、後のFusion工程が一気にワクワクして楽しくなります。
    その反面、「何にしよう…」と一番悩みやすいパートでもあります。

    なぜSVGにするの?

    SVGは「線や面のデータ」なので、Fusionに取り込むとそのまま押し出して立体化できます。
    逆に言えば、立体化するためには画像(PNG/JPG)みたいに“ただの絵”ではなく、加工できる形として扱える形になっている必要があります。

    私はSVG作成にAffinity Designerを使っていますが、SVGを書き出せるツールなら何でもOKです。
    (Affinityは最近無料になり、かなり便利なので、もし「SVGを編集できるツールを持っていない」という方には選択肢としておすすめです。)

    2-1. まずは案を決める

    こだわりを詰め込みたくなりますが、まずは「ちゃんと印刷できる」を意識すると良いと思います。特に気にすると良いのはこのあたりです。

    • 細かすぎない(特に細い線画は潰れやすい)

    • 手持ちのフィラメントで再現できることがイメージができる

    何も案が出ない…!というときのアイデア

    「図柄が思いつかない」場合は、AIを使って“たたき台”を作るのもおすすめです。

    • SNSのアイコンを元にする
      → 細かすぎるときは、AIにシンプル化してもらう

    • 名前やニックネームからAIを使ってオリジナルのロゴを作る

    • AIで完全オリジナルのイラストを作る

    2-2. AffinityでSVGを書き出す(私のやり方)

    ここはツール依存なので、流れだけざっくり書きます。

    1. 新規ドキュメントを作る(正方形でOK)

    2. 下絵(元画像)を配置する

    3. ベジェ曲線などでトレースしてSVGにする

    4. SVGを整える(※次の節)

    5. 書き出して完成

    画像
    今回適当に作った謎キャラのSVG。 梅干し…かな

    2-3. SVGを「整える」は必要?

    作り方にもよりますが私の作り方のパターンだと基本は必要です。
    試しにSVGをFusionに入れてみて、以下のようなことが起きたら整えた方がトラブルが少なくなります

    • 押し出し用の面(フェイス)が選べない

    • 押し出し用の線がうまく選べない

    • パーツが意図せず細かく分かれていて、選択がしんどい

    例えば…下の画像のように見えないエリアにパスが残っていると、後のFusionの押し出し作業の際に漏れが発生したり、複数選択がめんどくさくなります。

    画像
    画像の見た目的には問題ないが、このように物体の線が残っているとFusion作業がやりづらい

    整えるときの方針(やることはだいたいこれ)

    • 同じ色にしたい部分は統合する(パスをまとめて面を作りやすく)

    • 他の要素と重なって邪魔になるところは、分割(除算)して整理する

    • 線がある場合は、アウトライン化(境界線の展開)して“面”として扱えるようにする

    画像
    結合やアウトライン化を行った結果

    ここをやっておくと、Fusionでの押し出しが楽になります(Fusion上で結合等を駆使することでも対応は可能です)。
    …が、整える作業が地味にめんどくさいです。もしもっといい方法を知ってたら教えてください🙏 私が泣いて喜びなす🍆

    表面のSVGができたら、次は裏面の主役、QRコードのSVGを作ります。ここがMaker Chipの“名刺”部分です。

    3章:QRコードのSVGを作る

    この章では、Maker Chipの裏面に入れるQRコードをSVG化して、Fusionに持ち込める状態にします。
    ここはMaker Chipの“名刺”部分なので、見た目よりもまず 読み取れることが大事です。

    画像
    潰れるとQRコードが読めなくなり、機能が果たせなくなってしまう

    この章の流れ(ざっくり)

    1. リンク先を決める

    2. QRコードを生成してSVGにする

    3. (必要なら)Fusionで扱いやすい形に整える


    3-1. まずリンク先を決める

    QRに入れるリンク先は、「相手に一番見てほしい場所」を入れるのが基本です。

    イベントで見かけたMaker Chipだと、リンク先はほとんど X(Twitter)のアカウントでした。私も含めですが、なんだかんだみんなまだXにいるんですね…👀

    リンク先の候補はこんな感じです:

    • X(Twitter)/InstagramなどSNS

    • 作品まとめ(ポートフォリオサイト)

    • ショップ(BOOTH、SUZURI、個人ECなど)

    3-2. QRコードを生成する

    QRコードはWebのジェネレーターで作れます。ここは何でもOKですが、SVGで出力できるサイトを選ぶと後工程が楽です。
    私は以下のサイトを使いました(※念の為入力するのは公開してOKなURLだけにした方が良いかもです)。

    URLが長いとQRが細かくなる

    URLが長すぎるとQRが細かくなって、3Dプリントでは潰れやすくなります。気になる場合は、以下の対策が安全です。

    • 短縮URLを使う

    • エラー訂正(復元)率を調整する

    エラー訂正(復元)率について

    QRコードにはエラー訂正能力(エラー訂正レベル)があります。
    あまりに細かくなる場合は、エラー訂正レベル(%やL/M/Q/Hなど)を変更して調整するのもおすすめです。試しに、先ほどのサイトで一番低い%にしてみましたが普通に読み込めました。

    3-3. SVGとして調整する(必要な場合)

    そもそもSVGとして作成していない場合は先ほどの作業と同じようにAffinity DesignerなどのソフトでSVGにする必要があります。
    また生成したSVGをAffinity Designerで開いてみると、QRが「小さなブロック(パーツ)の集合」になっていることがあります。
    この状態のままだと、Fusionで押し出すときに選択が大変なので、結合(統合)して扱いやすくします。

    画像
    中途半端にバラバラになっていることがあるので、全て選んで結合します。

    失敗を減らすための注意点

    QRは読み込めないと意味がないので、最低限ここだけは守るのがおすすめです。

    • 大きく印刷する前提で作る
      3Dプリントは“細かいドット表現”が苦手です。小さいほど潰れます。

    • コントラストは強めにする前提で作る
      背景とQRの色が近いと、読み取りが不安定になります。

    • 作成時にスマホで読み取りテストする
      そもそもURLを間違えていないかの確認も含めて、先にチェックしておくと安心です。

    「どこまで細かいQRにできるか」は、プリンタ・ノズル径・レイヤー高さ・素材等でも変わるので、できる限り確実に読み込める状態を作った方が良いです。

    QRのSVGができたら、次はFusionで 表(イラスト)と裏(QR)を合体して、3Dデータに仕上げます。

    4章:CAD(Fusion)で図面を作る

    この章では、2章で作った表面のイラストSVGと、3章で用意したQRのSVGをFusionで合体して、印刷できる3Dデータに仕上げます。
    いよいよここまで作った平面の図が立体になっていきます。

    この章の流れ

    1. ベース形状(コイン)を作る

    2. 表(イラスト)を配置して押し出す

    3. 裏(QR)を配置して押し出す

    4. スライサーに渡せる形式で書き出す(3MF/STL)



    4-1. ベース形状(コイン)を作る

    まずはMaker Chipの土台を作ります。

    1. 新規デザインを作成

    2. 作成→円柱を選択

    3. 円柱を描く(直径40mm*3mm)

    これで“ただのコイン”ができます。ここが土台です。

    画像
    サイズ通りに円柱を作成

    4-2. 表面のイラストSVGを取り込む

    次に、表面用のSVGを取り込みます。

    1. 挿入→SVGを挿入を選択

    2. 先ほど作成したSVGのイラストを選択

    3. 位置・サイズ合わせ:大きさを調整しつつ、だいたい中央に配置

    画像
    スケッチを置いた状態(画像がこれしか無かったので添付しましたが、修正前の古いSVGです)

    4-3. 土台からイラスト部分を切り抜く

    SVGを配置したら、まず土台部分を切り抜きます

    1. スケッチからイラスト部分全体が選ばれるように範囲を選択

    2. 押し出しでマイナスの値(例1mm)を選択(切り抜き)

    画像
    イラストの外枠を円柱からくり抜く

    4-4. イラスト部分を押し出し

    1. 挿入→SVGを挿入を選択

    2. 先ほど作成したSVGの各パートを選んでさっき切り抜いた値と同じ値で押し出し(1mm)

    注意:押し出しする際に「結合」が選ばれていると隣り合う別のオブジェクトとくっついてしまうので注意。「新規オブジェクト」を選びましょう。

    画像
    押し出し後。左のボディを見てもらうとわかりますが、それぞれのパーツでボディが分かれています。(修正前なので左右逆ですね)

    4-5. 裏面にQRのSVGを取り込んで、押し出し

    裏面も同じ要領で、QRのSVGを取り込みます。

    1. 挿入→SVGを挿入を選択でQRのSVGを挿入

    2. 位置合わせ:中央に配置

    3. サイズ、位置調整

    4. 裏面で押し出し(1m)

    画像
    同じく新規ボディになっていることを確認します。

    注意:天地(向き)と裏表

    ここでやりがちなのがQRコードの「向きのミス」です。
    QRの上下や左右が逆になっていないか、ちゃんと確認しましょう。(多分逆でも読み込めますが、気持ち的に揃えたいですよね)

    4-6. 書き出し

    スライサー(Bambu Studio)に持っていくために書き出します。

    • 3MF:色分けや管理がしやすい(らしい?あまり使っておらず旨み分からずです🙏)

    • STL:どの環境でも使える定番

    私はSTLで出しています。

    (オプション)縁に飾りをつける

    「周りに飾りをつける」は、やると一気にコインがしまります。
    ただ、最初の1枚はシンプルでも十分かわいいので、無理に入れなくてもOKです。詳しくは書きませんが、基本は同じでエリアを選択→押し出しでできます。

    例:

    • 外周をぐるっと囲う

    • お花のように模様をつけて囲う

    画像
    今回はシンプルに外枠をつけました

    Fusionで3Dデータができたら、次はいよいよ最終段階。Bambu Studioで色を割り当てて印刷します。

    5章:印刷する

    この章では、Fusionで作ったMaker Chipの3Dデータを Bambu Studioでスライスして印刷します。
    とうとう作品として手に取れる形になります✨

    この章の流れ

    • Bambu Studioでモデルを読み込む

    • 色を割り当てる

    • まずは試作1枚として1枚印刷 → 問題なければ量産


    5-1. まずBambu Studioに読み込む

    1. Fusionから書き出したSTL(または3MF)をBambu Studioで開きます

    2. モデルの向き(表/裏)を確認します

    3. プレート上に配置します

    プレートの底面に綺麗に印刷したい面を持ってくるのがおすすめです。今回はイラストを下にします。1度印刷してQRコードが潰れてしまった場合はQRの方を底に持ってきて試してみるのも手です。

    画像
    ファイル>インポートで、先ほど作ったファイルを読み込めます
    画像
    底面選択を使ってイラスト部分(綺麗にしたい面)を下にします

    5-2. 多色印刷の色を割り当てる

    多色印刷(AMSなど)がある場合、ここで色を決めます。
    様々な色塗り方法がありますが、今回は塗りつぶし機能を使っていきます

    画像
    塗りつぶし機能を使います
    画像
    チップの縁に色を塗るのも忘れずに

    5-3. 印刷設定と確認 

    表面にこだわりたい場合は速度やアイロン等の設定を変えます。
    …が、今回は一旦印刷までいきたいので飛ばします。(今後ちょっと追記するかもしれません🙏)

    プレビューモードでどのような印刷になるか、確認します。
    ここで、線が潰れてしまわないか等確認します。
    今回も線が細かすぎて、手の線がつぶれてしまったので調整しました😭

    画像
    プレビューモードではちゃんと色が印刷されるかが確認できます。
    これは、手の線の黒が印刷されないことがわかったのでイラストSVGの書き出しからやり直し😢
    画像
    線を太くして、戻って来ました。どうにか印刷されそうです(指の線は消えたままなので本当はこちらも修正が必要です)

    5-4. まずは“試作1枚”がおすすめ

    いきなりたくさん刷ると、失敗したときのダメージが大きいです。
    なのでまず 1枚だけ印刷して、できをチェックします。

    • QRがスマホで読めるか(角度を変えて複数回)

    • 表の図柄は潰れていないか(線や細部が残ってるか)

    • 色のコントラストは十分か

    • 欠けやすそうな出っ張りがないか

    ここでOKであれば、量産に移ります。うまくいかないところがあれば、気にいるまで微調整しましょう🫠

    画像
    問題なければコピペで並べて量産しよう!
    画像
    今回作成したMaker Chip。 キャラクターの目や歯、手が潰れているので、もう少し大きくするなど改善の余地あり

    6章:終わりに

    ここまで読んでくださってありがとうございます!
    今回私のやり方を書きましたが、もっと色々な作り方があると思います。もっと簡単な作り方や楽しい作り方があれば、みなさんもどんどん共有してください!もっとこの文化を盛り上げましょう💪✨

     
     
     
    視覚表現(コーディング・イラスト・デザイン・モーション)極めていきたい人。学生時代は旅にハマって40ヵ国ほど訪れました。今は絵を描きながらフロントエンドエンジニアとして働いています。日常呟きの他、イラスト・デザイン・フロント・海外等に関連することを発信していきます。

    あなたへのおすすめ