
東京タワー
私の家内のあだ名は、さっちゃん(注1)である。
私は家内のことをさっちゃんと呼ぶし。子供たちもさっちゃんと呼ぶ。
我が家は、名前で。あるいはあだ名で呼び合う。
そのさっちゃんだが、大好きなものが3つある。
富士山と新幹線と、東京タワーである。
今、ある仕事のプロジェクトで、都心のホテルに缶詰になっているのだが、毎日欠かさず送ってくる写真がある。
それが、東京タワーである。

どうも、事務所から所要で動き回るときに、東京タワー周辺を何度も往復したりするようである。
それも、家族だけかと思いきや、H(注2)のチームメイトの仲間にも送っていたりする。
「コジさんの奥さんの、さっちゃん、本当に東京タワーが好きなんですね」
「ええ、まあ」
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
さっちゃんの三大好みが、ひとつ、バレてるね。笑
うむ。
このあいだ、久しぶりに都心でランチを一緒にとり、ランチミーティングとなったとき、さっちゃんが徐に言った。
「コジくんは、東京タワーとスカイツリー、どっちが好き?」
「そりゃやっぱり、東京タワーでしょ。昭和の人間にとっては」
「そうなの?私は、どっちかと言われれば、断然、スカイツリーだな」
「えーーーっ!ウソーーーっ!」
「いや、だって、スカイツリーの方が、高いもの」
「…」
こりゃ、さっちゃんの三大好み、書き換えなければならんな。
なんのはなしですか。

そんなこんなを家内に語ろうとして後ろを振り向くと、空のソファーが、静かに笑っていた。
先日から家内は、あるプロジェクトで、都心のホテルに泊まり込んでいる。
シーンとした部屋の空気に、なんだか、心が追いつかない。
今宵も、マッサー(注3)は、無い。
昼間のやりとりからすると、家内は、元気なようである。
家内が元気だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)さっちゃんとは、家内のことである。我が家の実質の最高権力者なので、別名、女王陛下という呼び名もある。
(注2)Hとは、次女のことである。マイナースポーツのアスリートを、地方の実業団チームで続けている。私にはかなりキツいが。根は、優しい子である。
(注3)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
