
【完】頭の片隅に、君が住みついている。#17.エピローグ:頭の片隅に、君が住みついている。
「ハァー、今日も仕事か……」
ため息をついて更衣室を出る。
壁掛け時計は午前9時を指している。あと1時間で店がオープンする。
憂鬱な気分を押し殺して店内を巡回する。
鳴瀬が鼻歌を歌いながら、書店員イチオシ!というコーナーを清掃している。
「あ、店長おはようございます」
「おはよう。店長ってのは辞めてくれないか。まだ慣れてないんだ」
「もう店長になって半年ですよ。そろそろ慣れましょうよ、佐々木さん」
「鳴瀬さんはいつも元気だな。鼻歌で歌ってたのは最近売れ出しているやつらだよな?えっと……?」
「お、佐々木さん知ってるんですか?Black Sheepです」
「ああ、それだ。娘がハマっててな、よく聞かされてんだ」
「いいですよね!あ、私POP作ったんですけど、ちょっと見てもらってもいいですか?」
俺は鳴瀬からPOPを受け取る。
人生に迷ったらこの本を読んで欲しい。
誰か大切な人のことを思い出したら、その選択はきっと悪くはなかったと思えるはずだ。
「おお、いいんじゃないか。思わず本を手に取ってしまいそうになるな」
「へへっ、それなら良かったです」
「そういや、結婚式は来週だったか?休み希望出しておいてくれよ」
「あ、忘れてました。今日出しますね!」
「おう、頼むぞ」
俺はPOPを元の位置に戻し、本を手に取る。
鳴瀬がイチオシしている本のタイトルが目につく。
『頭の片隅に、君が住みついている。』
(……作者は……?)
――雪崎ハル
―end.